【声劇台本】永遠の愛

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
久美(くみ)
真(まこと)
弥生(やよい)
神父

■台本

久美(N)「世の中に、永遠に存在するものがあるだろうか? この問いに、ほとんどの人がノーと答えるだろう。だけど、その時の私は存在すると信じていた。それは……」

神父「永遠の愛を誓いますか?」

久美「はい。誓います」

神父「本当に? 神に約束できます?」

久美「え? あ、はい。できますよ」

神父「本当に本当? 永遠ですよ?」

久美「いや、だから、誓うって言ってるじゃないですか。てか、結婚式の最中に念を押すところじゃないでしょ。空気読んでくださいよ」

神父「はあ……。そうですか。残念です」

久美「なぜ、残念がる?」

神父「では、ここに二人が婚姻を結び、夫婦になることを神に約束いたします」

久美(N)「これは5つくらい前の、前世の記憶。つまり、始まりの記憶になる。そのときは、神々に祝福されて、生涯を幸せに過ごすことができた。ああ、何となくわかったと思うけど、私は前世の記憶がずっと残っている。まあ、便利っちゃ便利だよ。強くてニューゲームって感じだけどね。だけど、都合が悪いことも、もちろんある。人生そうそう上手くいかないものだ」

廊下を歩く久美と弥生。

久美「ねえ、弥生。あんた、好きな食べ物ってなに?」

弥生「え? 奢ってくれるの? 久美が人に奢るなんて珍しい! 今日は雪ね」

久美「別に奢るって言ってないし。単なる質問よ」

弥生「……まあ、そうよねー。知ってた」

久美「いいから、答えなさいよ」

弥生「んー。そうだなー。牛丼かな」

久美「おっと。女子高生なら、もう少しオシャレなものを言ったらどうなの? パスターとか、ケーキ―とかさ」

弥生「別に久美の前でぶりっ子する意味ないでしょ」

久美「あー、まあ、そうだね」

弥生「で、答えたけど、何?」

久美「もしさ、毎日、ご飯が牛丼だったらどう?」

弥生「最高じゃん」

久美「毎日だよ? 三食。全部」

弥生「……さすがに、それはきついかな」

久美「だよね! そうだよね! やっぱりさ、毎回はきついって! 絶対に」

弥生「……全然話が見えないんだけど」

久美「いやー。恋愛も同じだと思ってさ。毎回同じ人と結婚するって、きついでしょ。いくら好きだっていってもさ、たまには違う人と結婚したいじゃない?」

弥生「……久美。あんた、戸籍に何個バツを積み重ねる気なの?」

久美「いや、今回は、って話」

弥生「あんた、時々、意味不明なこと言うよね。えっと、それって、彼氏をコロコロ変えてることの言い訳?」

久美「別に言い訳じゃないって。違う人と結婚するからには、色々なリサーチが必要なのよ。ちゃんとした人と結婚したいじゃない?」

弥生「あんたが、ちゃんとしてないけどね。旦那になる人が可哀そうだわ」

久美「うっさいな。私はこれでも尽くすタイプなのよ」

弥生「尽くす? はは。吸い尽くすの間違いでしょ。あんたのせいで、精神を病んだ男子が何人いると思ってるのよ」

久美「いやさ、人の内面を見るには、やっぱり危機的状況の時が一番だと思ってさ」

弥生「あんた、結婚しない方がいいんじゃない?」

久美「うっ……」

場面転換。

町を歩く久美。

久美(N)「私は毎回、生まれ変わるたびに、同じ人に出会って結婚する。それをもう5回繰り返している。別に無理やりそういう運命になってるわけじゃない。悔しいことに、毎回、恋に落ちて……愛して……結婚している。それならいいじゃん、って思うだろうか。まあ、普通ならそう思うよね。だけどさ。やっぱりそろそろ、違う人と結婚したいじゃない。毎回、牛丼だと飽きる。いくら好きでもね。だからたまにはラーメンやかつ丼だって食べたいの。だって、女の子だもん! ……うーん。例えが悪いな。弥生が牛丼なんて言うからだよ」

ドンと真とぶつかる久美。

真「あ、ごめんなさい……」

久美「ううん。こっちもよそ見してたのが悪いんだし、気にしないで」

真「……はい。それじゃ失礼します」

二人がすれ違うようにして歩き出す。

久美「あのオドオドした感じ、あの人に似てるな……」

久美(N)「私がいつも結婚する人は、別に毎回同じ顔というわけではない。私も全然別の顔で生まれ変わるわけだし。それなら、なぜ、毎回同じ人だとわかるのか。それは胸のところに変わった痣があるのだ。これは何回生まれ変わっても、毎回付いてる。それに、何となくわかってしまうのだ。なんていうか、魂が同じだって」

真「あ、あの……すいません」

久美「はい? あ、あなた、さっきの……」

真「定期入れ落としたみたいですよ」

久美「あ、ありがとう。わざわざ、追いかけてくれたの?」

真「ええ。定期がないと困るかなって思って」

久美「この感じ……まさか……」

真「え?」

久美「ちょっと来て!」

真「うわ、な、なんですか!?」

久美「いいから!」

久美が真の手を引っ張って歩き出す。

場面転換。

路地裏。

久美「服を脱いで」

真「ええ! な、なんでですか? ……もしかして、カツアゲですか? でも僕……」

久美「いいから、さっさと脱ぐ!」

真「は、はい!」

久美「あ、ズボンはいいの。てか、普通、ズボンから脱ぐ?」

真「えっと、上だけ脱げばいいんですか?」

おずおずと上半身の服を脱ぐ真。

久美「やっぱり……」

真「あ、あの?」

久美「いい? あんたは、金輪際、私に近づかないで! 近づいたら、半殺しにするからね」

真「は、はい……」

久美「よし」

場面転換。

町を歩く久美。

久美(N)「やっぱり、あの人の生まれ変わりだった。でも、この段階で見つけれたのはラッキーだわ。近づきさえしなければ、恋に落ちることもないし。ふふ。これで、今回の人生は私の勝ちよ。今度こそ、違う相手と結婚してみせるわ!」

ピタリと久美が立ち止まる。

久美「あ、そうだ。今日、新しい雑誌の発売日だった。買っていこっと」

店の中に入っていく久美。

場面転換。

店の中。

久美「あったあった。これこれ」

突然、地震が起こると同時に警報が鳴り響く。

久美「え? なになに? 地震? って、きゃあ!」

地震で天井が落ちてくる。

久美「危っな! 天井が落ち来るとかヤバすぎでしょ。……って、なに? 今度は煙が……もしかして、火事? ごほごほ……」

轟々と炎の音が聞こえてくる。

久美「うそ……。火に囲まれてる……」

そのとき、火を潜り抜けて真がやってくる。

真「こっちだ!」

久美「え? あんた、さっきの……」

真「いいから、僕の手を握って!」

久美「う、うん」

真「煙を吸わないように屈んで。もう少しで建物から出られるから、我慢して」

久美「うん……」

場面転換。

外。周りには消防車や野次馬が大勢いる。

真「ふう。よかった。外に出れたね」

久美「……どうして来てくれたの?」

真「あ、そうそう。まだ定期返してなかったなって」

久美「これを届けるために、死にそうなりながら私を助けてくれたの?」

真「え? あ、うん。君のことが心配になったら……気づいたら体が動いてたんだ」

久美「はあ……。あーあー。ホンッと最悪」

真「え?」

久美「ううん。こっちの話」

久美(N)「どうやら、私は、今回も同じ人と結婚することになりそうだ」

終わり。

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