鍵谷シナリオブログ

【声劇台本】リフレイン

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■概要
人数:5人以上
時間:20分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリア
フィン
その他

■台本

ピチャン、ピチャンと血が落ちる音。

男「く、くそ、化物め……」

フィン「諦めろ。我が従僕の神、ルシファーに勝てる者などいない」

男「クォークではなく、まさか、同族に滅ぼされるとはな。なぜ、こんなことをする?」

フィン「……時を支配する神、クロノス。この里で継承していることは知っている。継承者を出してもらおうか」

男「ふん。誰が貴様などに」

フィン「……残念だ」

ザシュっと男を切り裂く音。

男「ぐああっ!」

フィン「……」

場面転換。

アリア「お、お父さっ……」

ジェイク「アリア様。ここは耐えてください。あなたなら、この状況を変えることができます。今は……私と一緒に逃げてください」

アリア「……うん」

場面転換。

ジェイク「アリア様。あなたには、代々受け継がれているクロノスを継承していただきます」

アリア「……でも、私、神降ろしの術なんて使えないわ」

ジェイク「大丈夫です。クロノスはアリア様の血族と契約していますから。クロノスとは既に契約済みです。すぐにでも使いこなすことができます」

アリア「うん……。わかった。そのクロノスであいつをやっつけるのね?」

ジェイク「違います。奴は最凶、最悪の神、ルシファーと契約しています。正直に言って、奴に勝てる術士は世界中を探しても存在しないでしょう」

アリア「それじゃ、どうするの?」

ジェイク「あなたにはクロノスの能力で過去に行ってもらいます」

アリア「過去?」

ジェイク「はい。奴が……フィンがルシフェルと契約する前に殺すんです」

アリア「契約する前に……?」

ジェイク「そうです。フィンがいた里の場所は伝わっています。その近くに飛んでいただきます」

アリア「……その里に入り込んで、フィンを殺すのね」

ジェイク「……はい。本当は私も付いていきたいのですが、クロノスと契約している者しか過去へは飛べません。……できますか?」

アリア「……うん。やるわ」

ジェイク「辛い思いをさせてしまい、申し訳ありません」

アリア「ううん。いいの。私が、あいつを殺して、必ずみんなを守ってみせるわ」

場面転換。

時を戻るようなイメージの音。

アリア「……ここが20年前の世界?」

草の上を転がるような音。

フィン「うわあああ!」

アリア「きゃあっ!」

フィン「いてて。くっそー。また失敗か」

アリア「……」

フィン「ん? なんで、こんなとこに人がいるんだ?」

アリア「えっと……。わ、私、その……捨てられたの。それで迷っちゃって」

フィン「う、うう……」

アリア「え? なんで、泣くの?」

フィン「辛かったよな。悔しいよな。でも、大丈夫だ。俺が何とかしてやるよ」

アリア「あ、ありがとう……」

フィン「すぐ近くに俺の里があるんだよ」

アリア「よかった……上手く飛べたのね」

フィン「ん? なんの話だ?」

アリア「ううん。何でもない」

フィン「ふーん。それより、お前、名前は?」

アリア「ア、アリア」

フィン「俺はフィン。よろしくな、アリア」

アリア「え? あなたが……フィン?」

場面転換。

長老「ダメだ。認められん。いくら同族の血を引く者であってもな」

フィン「頼むよ、長老! こいつは捨てられたんだ! 行くとこがないんだよ」

長老「よいか、フィン。この里は外部……クォークに絶対に知られてはならないのだ。よそ者を受け入れれば、リスクが高まる」

フィン「けど、それなら俺だって!」

長老「フィン!」

フィン「あ! ……いや、大丈夫だって。奴らが攻めてきても、俺が何とかしてみせるから」

長老「ふん、お前みたいな子供に何ができる」

フィン「そのうち、神降ろしを成功させてみせるって。そうすれば……」

長老「神降ろしは、神に選ばれた者しかできん。お前には無理だ」

フィン「……もし、アリアを受け入れてくれないなら、俺がこの里の場所をいろんなところにバラす! それでもいいのか?」

長老「……ったく、言い出したら折れん奴だ。わかったわかった。アリアを受け入れよう」

フィン「さっすが、長老! 話がわかるう!」

アリア「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

フィン「えへへ。よかったな、アリア」

アリア「……う、うん……ありがとう」

場面転換。

川の音。

アリア「……この手紙がクォークって国に届けば……」

男の子1「おい、何してるんだ!」

アリア「え? あ、えっと。笹で船を作ってたの。私の国の風習なの」

男の子1「嘘付け! お前。クォークのスパイだろ」

アリア「ち、違う」

男の子2「よそ者は出てけよ!」

ドンとアリアを押す。

アリア「きゃあっ!」

男の子2「よそ者はぶっとばしてやる!」

アリア「や、やめて!」

勢いよくフィンが走って来る。

フィン「うおおお! やめろー!」

男の子1「フィン、どけ! てか、お前のせいだぞ」

男の子2「そうだそうだ! よそ者のせいで、里が滅ぶかもしれないって、母ちゃんが言ってたぞ」

男の子1「こいつがクォークって敵を連れてきたらどうするんだよ!」

アリア「……」

フィン「アリアがそんなことするわけないだろ!」

男の子1「うっせー」

フィン「やるか!」

男の子2「うおおお」

場面転換。

フィン「……いてて」

アリア「あんた、弱いわね」

フィン「うるさいな……」

アリア「あんたみたなのが、あんなのになるなんて信じられないわ」

フィン「ん? なんの話だ?」

アリア「ううん、なんでもない……」

フィン「なあ、里のみんなのこと、悪く思わないでくれな」

アリア「え?」

フィン「この里はさ、ずっと隠れて住んでるんだ。なんでもさ、滅んだはずのアルベール王国の生き残りが作ったらしいだよ。その血を途絶えさせないために、秘密にしてるんだってさ。で、その血を狙っているのが、クォークってわけだ」

アリア「ふーん……」

フィン「俺さ、みんなを守れるくらい強くなるんだ。里のみんなは俺の家族みたいなもんだからな」

アリア「……」

フィン「俺、これから神降ろしの練習するから。じゃあな」

フィンが行ってしまう。

アリア「……失敗するわけにはいかない。あいつと仲良くなって、油断させてから……殺してやるんだから」

場面転換。

フィン「はあああ!」

爆発するような音。

フィン「うわああ! ……くそ、失敗か」

アリア「あんた、才能ないんじゃない?」

フィン「うるさいなぁ。これから凄くなるからいいんだよ」

アリア「……そうね。そうなってしまうわ」

フィン「や、やっぱりそう? アリアは俺を信じてくれるんだな。サンキュー」

アリア「……あんたさ、なんで、そこまで一生懸命なの?」

フィン「実はさ、俺もよそ者なんだよ」

アリア「そうなの?」

フィン「あ、これ、秘密な。俺も違う里の人間だったんだ。クォールに滅ぼされた。それで、母さんが赤ん坊の俺を連れて逃げていたところを長老が見つけてくれたんだ。母さんはそのとき、死んじゃったんだってさ。で、その後は、長老の孫ってことにしてくれたんだ」

アリア「そうだったんだ……」

フィン「俺さ、長老も、里のみんなも大好きなんだ。だから、何があっても守りたい。そのために強くなりたいんだ」

アリア「強さっていうのは、守る力でもあるけど、人を傷つける力でもあるのよ」

フィン「……わ、わかってるよ」

アリア「強くなれば、多くの人間を殺すことだってできるようになる。私、神降ろしなんて……術士なんて大嫌い」

フィン「俺は絶対に、傷つけるために力は使わない。守ることだけに使うんだ。約束する」

アリア「……そんな約束……どうせ破るわ」

フィン「いいや。守る! ……で、アリア。お前も、守ってみせるよ」

アリア「……」

場面転換。

フィン「はあああああ!」

爆発するような音。

アリア「あんたさ、やっぱり才能ないわよ。いい加減、諦めたら?」

フィン「俺の才能はこれから開花するんだよ。これから」

アリア「そんなこと言って、もう8年くらい経つわね」

フィン「うっ! 大丈夫。きっとできるようになるはずだ」

アリア「ねえ、フィン。もう術士になるのを諦めたら? いいじゃない。別になれなくたって」

フィン「嫌だね。絶対諦めない」

アリア「どうして? 強さなんて必要ないじゃない。このままこの里で平和に過ごせばいいじゃないのよ」

フィン「里のみんなはさ。いつも怖がってる。この里がバレないかって」

アリア「……」

フィン「俺の里を潰した、クォールは今でも、術士の一族を狩り続けてるって話だ。いつ、ここがバレるかわらない」

アリア「……」

フィン「もし……もしも、里に攻められたときに何もできないのは嫌なんだ。誰も死なせたくない。俺が全員、守ってやるんだ」

アリア「フィン……」

フィン「もちろん、アリア。お前のことも……守ってやれる男になりたいんだ」

アリア「ねえ、フィン。……私と一緒に里を出ない?」

フィン「え?」

アリア「お互い、もう15歳だよ? 里の外でも生きていけるよ」

フィン「な、なに言ってるんだよ、急に」

アリア「……あんたは、ずっと私を守ってくれた。よそ者だって言って、何かと言いがかりをつけてくる里の人たちから」

フィン「……」

アリア「……あんたが助けてくれなかったら……あんたいなかったら、私、きっと耐えられなかったと思う」

フィン「アリア……」

アリア「私……もう、あんたを殺せない」

フィン「は? な、なんだよ、殺すって」

アリア「お願い! 私と一緒に逃げて。山奥で、二人で静かに過ごそうよ……」

フィン「アリア」

アリア「術士になんかならないで。術士にさえならなければ、私の里も……お父さんだって死なないで済むわ」

フィン「どういう……ことだ……?」

そのとき、大きな破壊音が響く。

フィン「な、なんだ?」

長老が走ってくる。

長老「フィン、逃げるんだ!」

フィン「長老! 何があったんだ?」

長老「里の場所がクォールにバレた。やつらはこの里を一気に潰すつもりだ」

アリア「……バレた? ま、まさか……。でも、あんなの7年前だし……あんなの、誰かに届くはずなんか……」

フィン「アリア、しっかりしろ!」

アリア「え? あ……」

フィン「お前はどこかに隠れていろ」

アリア「フィンは? どうするつもり?」

フィン「俺は戦う。みんなを守るんだ」

アリア「どうやって!? 神降ろしだって使えないのに」

長老「アリアの言う通りだ。お前じゃ、無駄死にするだけだ。アリアと一緒に逃げろ」

フィン「嫌だ! 俺は……この里が好きだ。俺を育ててくれたこの里が……」

長老「フィン。……だからだ。お前たちだけでも生き残って、里を復興させてくれ」

フィン「でも、俺たちは元々、里の人間じゃない。俺たちが生き残っても、復興はできない」

長老「ふふ。お前たちは里の人間だよ。誰が何と言おうとな。だから、お前たちは……」

そのとき、ドス、ドス、ドスと長老に矢が刺さる。

長老「ぐふっ!」

倒れる長老。

フィン「長老!」

兵士1「よし、ジジイにあったぞ!」

兵士2「まだ、他に2人いるぞ! 逃がすなよ!」

兵士1「悪いな。里の人間は一人も逃すなって命令だ。お前らには死んでもらう」

フィン「アリア! 逃げろ!」

アリア「フィン……」

兵士1「言っただろ! 誰も逃がさんって」

兵士2「まずはお前に死んでもらう!」

兵士2が剣を構え、突っ込んでくる。

アリア「ダメ―――!」

兵士2の剣がアリアを貫く。

フィン「アリア!」

アリア「フィン……」

フィン「アリア! しっかりしろ!」

アリア「ふふ……。私が……あんたを殺す……はずだったのに……助けちゃった……」

フィン「嫌だ……。アリア……死なないでくれ」

アリア「フィン……世界で一番大嫌いで……世界で一番……大好きな人。……お願い、生き……て」

フィン「……アリア。アリアーー!」

同時に、光り輝く音が響く。

兵士1「くっ! な、なんだ!」

兵士2「まさか、神降ろし……か」

フィン「……契約により、我が従僕となりし神、ルシファー。我に力を与えよ。そして、全てを壊せ!」

兵士1「ぐ、ぐあああああ!」

兵士2「ぎゃああああああ!」

無数の斬撃音が響く。

フィン「……皆殺しだ」

場面転換。

山道を歩く音。そして、立ち止まるフィン。

フィン「……ようやく見つけた。あの里にクロノスを継承している者がいるはずだ。クロノスを使い、時を戻れば、みんなを助けられる。……アリア。待っていてくれ。必ず君を助けてみせる」

終わり。

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