■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、シリアス
■キャスト
桃太郎
ヤマト タケル
おじいさん
鬼
その他
■台本
ナレーション「昔々、あるところに桃から生まれた桃太郎という少年がおりました。桃太郎はおじいさんとおばあさんに大切に育てられ、すくすくと育ちました。ですが、桃太郎の住む村は鬼に襲われていたのです」
宴会で騒いでいる。
桃太郎「カカカ! 鬼に襲われる前に食っちまうぞー」
女1「やだー、桃さんったら!」
女2「あははは。桃さんにだったら、食べられちゃってもいいわよ」
ガラッとドアが開き、おじいさんが入ってくる。
おじいさん「こら、桃太郎! また、村の女たちを連れ込みよって! ちょっと来い!」
場面転換。
おじいさん「ったく、毎日毎日、働きもせずに騒ぎおって。いい年なんじゃから、働かんか! ごく潰しが!」
桃太郎「いい年って言ってもな―。俺、まだ15だぜ?」
おじいさん「十分じゃ! 村の男はもう働いておる年齢じゃぞ!」
桃太郎「けどなぁ。俺がまともに働けると思うか? 無理無理」
おじいさん「じゃあ、その腕っぷしを活かして、鬼どもを何とかせんか!」
桃太郎「あん? 鬼を? それこそ、無理無理。いくら俺が強くても、多勢に無勢。勝てやしねえ」
おじいさん「なら……大和へ行って、兵を出してもらうとか……」
桃太郎「いやいや。ジジイ。そりゃ、勝手な話ってもんだ。大体、俺が話付けて、この村を大和からの支配から外してもらってるんだぜ? 困ったときだけ、助けてください、は、あり得ねーだろ」
おじいさん「……だが、このまま鬼どもに搾取されれば、村はもたん。食い尽くされてしまう……」
桃太郎「はあー。……ったく。しょうがねーな。ジジイ。ババアに言って、団子を作ってもらえ。それ持って、ちょっと出かけてくるわ」
場面転換。
ザッザッザと道を歩く桃太郎。
兵士「おい、止まれ! ここより先に通すことは出来ん」
桃太郎「タケル、いるか?」
兵士「は? き、貴様! 王を呼び捨てにするとは無礼千万!」
桃太郎「まあ、待て待て。とにかく、桃太郎が会いに来たと伝えろ」
兵士「しかし……」
桃太郎「まあまあ。いいからいいから。言うだけ言ってみてくれって」
場面転換。
タケル「久しぶりだな、桃。5年ぶりか」
桃太郎「タケル。すっかり、王様って感じだな」
タケル「で? 俺に何の用だ?」
桃太郎「ちょっと、頼みがあってな。とりあえず、これ、土産だ」
ドンと袋を置く。
タケル「おお! 桃のばあさんの団子か! 懐かしいな!」
袋を手に取り、一つ食べるタケル。
タケル「ん! 美味い! 相変わらず、この団子は美味いな!」
桃太郎「土産、気に入ってもらえたようだな。じゃあ、次は俺の頼みを聞いてくれっか?」
タケル「ああ。いいぞ。なんだ?」
桃太郎「鬼のことは聞いてるか?」
タケル「鬼? ああ。外海から来た、異人の集団だろ? それがどうした?」
桃太郎「いやあ。村の近くに住みついちまってな。ちょいちょい略奪されてんだよ」
タケル「軽く言ってるが、結構、深刻だろ」
桃太郎「で、ジジイどもが、そろそろ何とかして欲しいって泣きついてきてな」
タケル「なるほど。俺に手を貸してほしいと。いいだろう。久々の喧嘩か。昔のように二人で大暴れするか」
桃太郎「いやいや。お前はもう王なんだぞ。昔と違って、フラフラするのはマズいだろ」
タケル「ふむ……。まあ、そうだな。では、兵を貸して欲しいということか? どのくらいいる? 千か? 二千か?」
桃太郎「いやいや。団子やったくらいで、千の兵を借りるわけにはいかねえ。お前も、他国に示しがつかんだろ。……支配している村でもないしな」
タケル「……では、どうするつもりだ? さすがにお前一人では、厳しいだろ?」
桃太郎「なにも、解決方法は力だけじゃねーだろ。俺は物騒なことは嫌いだからな」
タケル「はは。どの口で言うか」
桃太郎「で、だ。あれをくれないか?」
タケル「……あれ? ああ、あれか。いいぞ。というより、元々、お前が見つけたものだろう。土産なんてなくても渡すのに」
桃太郎「いやいや。あれは一度、お前にやったもんだからな。戻してもらうにはそれなりに対価が必要だろ」
タケル「ふむ。そう考えると、これだけの団子では釣り合わんな」
桃太郎「うっ、やぶ蛇だったか」
タケル「って、ことで、しばらく俺に団子を届けろ。お前がな」
桃太郎「はいはい。わかりましたよ」
場面転換。
鬼「なんだ、貴様」
桃太郎「あんたらが襲っている、村のもんだ」
鬼「ほお……。報復しに来た、というわけか」
桃太郎「いやいや。俺は一人だぜ? 無理無理」
鬼「じゃあ、何しに来た」
桃太郎「交渉だ」
鬼「交渉?」
桃太郎「金狼の毛皮に、不死鳥の羽、銀猿の牙。どれも伝説級の物だ。これをやるから、他の場所に行ってくれねーか?」
鬼「……今、ここでお前から無理やり奪ってもいいんだぞ?」
桃太郎「やりたきゃ、お好きにどーぞ。けど、大和と戦争になるだろうけどな」
鬼「どういうことだ? お前らの村は、大和の支配下じゃないはずだ」
桃太郎「ああ。そうだな。だから、お前らも安心して襲ってきてたんだろ?」
鬼「……つまり、大和の後ろ盾はない」
桃太郎「実は、その三品は、大和の王から売ってもらったもの。……っていうより、まだ対価を払っている最中だ」
鬼「なるほど。今、ここでお前に危害を加えれば、残りの対価が大和の王に届かなくなる。つまり、俺たちが途中で略奪したことになる……と」
桃太郎「そのとーり」
鬼「ふふ。貴様、面白い奴だな」
桃太郎「で? どーすんだ?」
鬼「要求を飲もう。すぐに俺たちはここから出て行こう」
桃太郎「そりゃ、どーも」
鬼「だが、いいのか? 俺たちに復讐しなくて」
桃太郎「いやいや。お互い様だろう。顔がイカツイってだけで、最初に襲い掛かったのは俺たちの村の方だからな」
鬼「……」
桃太郎「それにあんたらは、食べ物を奪うだけで、人には危害を加えていない。他のところへ行ってくれりゃ、それでいーさ」
鬼「……お前、俺たちと一緒に来ないか? あんな小さな村に収まるような人間じゃないだろう」
桃太郎「……ありがたい誘いだが、断る。ま、あんなシケた村だが、まだまだ恩返ししなきゃならねージジババがいるんでな」
鬼「そうか。残念だ」
桃太郎「じゃあな。もう二度と会うことはねーと思うが、達者でな」
鬼「貴様もな」
場面転換。
宴会で騒いでいる。
桃太郎「へへへ。いーじゃねーか」
女1「やだー、桃さんったら!」
ガラッとドアが開き、おじいさんが入ってくる。
おじいさん「こら、桃太郎! また、村の女たちを連れ込みよって! 少しは働いたらどうじゃ!」
桃太郎「あん? 鬼を成敗してやっただろ。俺は英雄だぞ、英雄」
おじいさん「それとこれとは話は別じゃ! 働かんかい、ごく潰し!」
桃太郎「はあ……。英雄って儲からないもんだなぁ……。鬼についていけばよかったか?」
ナレーション「桃太郎は、きび団子を持って旅立ち、犬、猿、キジを連れて鬼ヶ島へ行き、鬼を懲らしめました。鬼退治をした桃太郎は、おじいさんとおばあさんと一緒に仲良く暮らしましたとさ。終わり」
終わり。