■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
アンコ
クリーム
■台本
海の波の音。
その中で、鉄板の上で生地が焼かれる音。
アンコ「なあ、クリーム」
クリーム「なんだ、アンコ」
アンコ「この歌知ってるか?」
クリーム「ん?」
アンコ「来る日もー、来る日もー、我らは鉄板のぉー」
クリーム「ああ。泳いだタイ焼きさんだろ。すげーよな。たい焼きさん。海に潜ったんだもんな」
アンコ「俺らのヒーローだよな」
クリーム「おっちゃんと喧嘩ってなー。俺らはできないよなー」
アンコ「普通に廃棄されて終わりだもんな」
クリーム「それにしても買ってくれないな」
アンコ「今、冬だからなー」
クリーム「客、来るわけないよなー」
アンコ「おっちゃん、なんで冬に商売やってるんだ? こういうの、普通、夏に売らないか?」
クリーム「夏だとお店が多過ぎて場所が取れないんだってよ。それで、冬なら場所を取り放題って喜んでたぞ」
アンコ「……そりゃ、まあ、場所は取り放題だろうよ。この店以外、誰一人、歩いてないもからな」
クリーム「……今日で5日目か」
アンコ「さすがに温め直されるのも飽きたよなー」
クリーム「かと言って、この状況じゃ、買ってもらえるとは思えないしな」
アンコ「そろそろ、廃棄されるかな?」
クリーム「おっちゃんのことだから、あと2、3日は大丈夫なんじゃね?」
アンコ「けどさー、奇跡的に買ってくれたとしても、5日前のものだぞ? クレーム来るんじゃねーか?」
クリーム「俺はクリームだから、色々な意味でな」
アンコ「上手いこと言ってるようで、全然上手くないぞ」
クリーム「まあ、古いからな」
アンコ「あ、それは上手い」
クリーム「それにしても暇だな」
アンコ「あ、おっちゃんも作るの止めて寝るみたいだぞ」
クリーム「この寒空の中、よく寝れるな」
アンコ「真冬でもTシャツ一枚だからな。寒くないんだろ」
波の音が響く。
アンコ「なあ、クリーム」
クリーム「なんだ、アンコ」
アンコ「今なら、行けるんじゃないか?」
クリーム「……脱走か?」
アンコ「どうせ、このまま、ここにいても廃棄されて終わりだぞ。それなら、タイ焼きさんみたく、大海原に乗り出さないか?」
クリーム「まあ、海に入るかは別として、逃げるのは有りかもな。俺だって、こんなところで終わるなんて嫌だよ」
アンコ「よし、じゃあ、行くか!」
クリーム「おう!」
アンコ「よっこいしょ! いたたた」
クリーム「すっかり、体が固くなってるな」
アンコ「どうする? 少し温まってからにするか?」
クリーム「いいよ。早く行こうぜ。どうせ、すぐに寒くて固くなるだろうし」
アンコ「そりゃそうだな。よっと!」
アンコが地面にポトっと降りる。
クリーム「俺も!」
クリームもポトっと降りる。
アンコ「よし! 出発!」
クリーム「おう!」
場面転換。
アンコとクリームが浜辺を歩く。
ドンドンと波の音が大きくなり、波打ち際までやってくる。
アンコ「おお! これが海か!」
クリーム「やっぱり広いな、海は」
アンコ「よし! それじゃ、俺は行くぜ!」
バシャバシャと海の中に入るアンコ。
アンコ「あばばばばば!」
アンコが溺れる。
場面転換。
波打ち際。
アンコ「はあ……はあ……はあ」
クリーム「大丈夫か?」
アンコ「なぜだ! なぜ、泳げない!? タイ焼きさんは海で泳いだのに!」
クリーム「……そりゃ、まあ、俺たち大判焼きだし」
アンコ「……」
終わり。