■概要
人数:1人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
拓斗(たくと)
御影(みかげ)
■台本
ピューと風が吹く。
御影「ふむ……」
拓斗「あの、御影先輩?」
御影「部長と呼びなさい」
拓斗「……部じゃないですけどね。それで、御影部長。公園に何の用ですか?」
御影「拓斗、見て見なさい。この惨状を」
拓斗「惨状って……。特に変わったところはないんじゃないですか? 立派な公園だと思いますけど」
御影「まだまだね、拓斗は。そんなんじゃ検証部部員を名乗れないわよ」
拓斗「部じゃないんで、部員を名乗っちゃダメですけどね」
御影「まだわからないの? 休日の公園だというのに、遊んでる子供がいないわ!」
拓斗「言われてみれば、確かに。ですけど、今って、大体、こんなものじゃないですか?」
御影「公園は遊ぶところよ」
拓斗「そうですね」
御影「ここにいないということは、子供たちはどこで遊んでいるのかしら?」
拓斗「家じゃないですかね? ゲーム機で遊んでると思いますよ」
御影「そこよ!」
拓斗「……どこですか?」
御影「昔の遊びは、本当にゲームよりも楽しくないのか? これが、今回の検証部の目的よ」
拓斗「なるほど。面白い切り口ですね」
御影「でしょ? 昔の遊びは、昔の遊びで、その頃の子供たちは夢中になっていたと思うのよ」
拓斗「そうですね。それで、どうやって検証をするんですか? 子供たちに協力してもらうにしても、誰もいませんが?」
御影「…………。こういうのは他人任せじゃダメよ! ちゃんと身をもって検証しないとね!」
拓斗「身をもってですか?」
御影「まずは遊具よ! ……って、あれ? この公園、全然遊具がないわね」
拓斗「最近は危険という理由で、遊具を撤去しているところが多いみたいですね」
御影「遊具が無い公園なんて、ラーメンの無い、ラーメンライスよ!」
拓斗「それはただの御飯ですね」
御影「それにしても、参ったわね。まさか遊具がないなんて。これじゃ検証できないわ」
拓斗「……高校生が遊具で、全力で遊ぶって、ちょっと引きますよね」
御影「……どうしようかしら」
拓斗「では、遊具を使わない遊びをしましょう」
御影「遊具を使わない遊び?」
拓斗「はい。それは……鬼ごっこです」
場面転換。
御影と拓斗が走っている。
御影「待ちなさい、拓斗! これは部長命令よ!」
拓斗「職権乱用です! 大体、そんなことしたら、面白いわけないですよ」
御影「確かにそうね。ここは本気を出すしかないわ。いくわよ、拓斗」
拓斗「いつでもどうぞ」
御影「急加速!」
拓斗「うわっ! 危ない!」
御影「はあああああ!」
場面転換。
御影「はあ、はあ、はあ、はあ……」
拓斗「はあ、はあ、はあ、はあ……」
御影「横腹が痛いわ。……もう、止めにしない?」
拓斗「……そうですね」
場面転換。
拓斗「では、次は……だるまさんが転んだです!」
場面転換。
拓斗「だーるーまーさーんーが、転んだ!」
バッと振り返る拓斗。
御影「……」
拓斗「あ、今、動いたんじゃないですか?」
御影「動いてないわよ!」
拓斗「……まあ、いいですけ。じゃあ、行きますよ。だーるまーさーんがー、こーろーんだ!」
場面転換。
拓斗「次は缶蹴りです」
場面転換。
御影「はああああ!」
カンといい音を立てて、缶が飛んでいく。
拓斗「ちょっと、本気で蹴りすぎですよ!」
御影「こういうのは本気でやるのがおもしろいのよ!」
場面転換。
拓斗「ハンカチ落とし」
場面転換。
ゆっくろと御影が歩いている。
そして、バンと拓斗の肩を叩く。
御影「残念でした。今、ハンカチ落としてたのよ」
拓斗「全然、わからないですね」
御影「それじゃ、次は拓斗が鬼よ」
拓斗「……はい」
場面転換。
拓斗「かくれんぼ」
場面転換。
拓斗「99……100! もういいかい?」
御影「もういいよー」
拓斗がクルっと振り返る。
拓斗「……御影部長、見つけました」
御影「遊具も何もない公園で隠れろなんて、無理な話よ」
拓斗「……ですよね」
場面転換。
拓斗「花いちもんめ」
場面転換。
拓斗「か~ってうれしい御影先輩がほしい、花いちもんめ」
御影「まけ~てくやしい拓斗が欲しい、花いちもんめ」
拓斗「じゃんけん!」
御影「ぽん!」
拓斗「よし! 勝ちました」
御影「拓斗、あんたちょっと、じゃんけん強過ぎよ!」
場面転換。
拓斗「かごめかごめ」
場面転換。
拓斗「かーごめ、かーごめ」
御影「かーごのなーかの、鳥は」
拓斗「いついつ出やる」
御影「夜明けの晩に」
拓斗「つーるとかーめがすーべった」
御影「後ろの正面、だーれ?」
拓斗「御影部長」
御影「正解!」
拓斗「……」
御影「……」
場面転換。
御影「さてと。それじゃ、検証結果を発表するわ」
拓斗「はい」
御影「検証! 昔の遊びはゲームよりも、面白くない! で決定よ!」
拓斗「……」
御影「子供たちがゲーム機に走るのもわかる気がするわ」
拓斗「……」
御影「ふふふ。これで新たな、検証結果が生まれたわ」
拓斗「あの……御影部長」
御影「なに?」
拓斗「昔の遊びが面白くなかったのは……二人しかいないからじゃないですか?」
御影「……」
終わり。