■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
翼(つばさ)
遼(りょう)
マスター
■台本
翼(N)「音楽を演奏するときにわずかな不協和音も許されない。でも、完全な調和はかなり難しい。もし、完璧に合わせられる2人が出会うことになれば、それはもう奇跡と言っていいかもしれない」
ライブ会場。
バンド演奏をしていて観客が歓声を上げている。
ギターとベースの調和されたレベルの高い演奏。
さらに観客が盛り上がる。
場面転換。
楽屋。
遼「いやー、今日も盛り上がった盛り上がった。完全燃焼だぜ」
翼「お疲れ様、遼。はい。飲み物」
遼「サンキュー」
ペットボトルを開けてグビグビと飲む遼。
遼「ぷはっ! うめぇ」
そのときドアが開き、ライブハウスのマスターが入って来る。
マスター「よお、お疲れ」
遼「あ、マスター。お疲れ様っす」
翼「お疲れ様です」
マスター「今日も盛り上がったなぁ」
遼「サイコーでした」
マスター「で、お前ら2人に、メジャーレーベルからお声がかかったぞ」
遼「ホントっすか! よっしゃー! やったな、翼!」
翼「うん」
マスター「いやー、それにしても見に来たスカウトの人も舌を巻いてたぞ。お前らの完璧に調和された演奏に」
遼「へへへ……」
マスター「演奏の技術は練習で上げることができるが、合わせるっていうのはなかなか難しいからな。お前らの息は本当にぴったりだ」
遼「まあ、なんつーか。翼は最高のパートナーっすよ」
翼「……僕もだよ」
マスター「お前らは路上で会ったんだよな?」
遼「ええ。俺が路上で演奏してたら、翼が声をかけてきてくれたんすよ。俺の音楽に理想形を見たって言って。つまり、俺たちは音楽によって、引きつけられたんすよ」
翼「……遼、恥ずかしいから止めてよ」
マスター「それで、二人で組もうってことになったのか。じゃあ、最初から、二人はフィーリングが合ったってことか」
遼「まあ、ある程度は合ったんすけど、ここまで完璧に合わせられるには秘訣があるんすよ」
マスター「秘訣?」
遼「ええ。まず、お互いのことを知る。趣味や食べ物の好き嫌い、とか学校で何があったとか、どういうものを見たり聞いたりしたか、とかっすかね」
マスター「ほう。そりゃ、すごいな。親友でもそこまで互いに教えられないぞ」
遼「へへっ! 翼はもう親友以上、半身って感じっすね。今じゃ、翼の一日を完全に予想できるっすよ」
翼「そ、それはさすがに恥ずかしいから止めてほしいな」
遼「あとは信頼関係が重要っすね。お互いに絶対に嘘は付かない。好きな人が出来ればちゃんと言うようにするし、付き合うなんてことあれば、尚更っすね」
マスター「それは大事だな。音楽系の人間は結構、恋愛事情でもめ事が起こることが多いからな。メジャーデビューしたら、気を付けろよ。特に遼」
遼「ええー。なんで、俺だけなんすか?」
マスター「お前は女に溺れそうだからな。その点、翼は逆に女関連がしっかりしてそうだ」
遼「まあ、しばらくは音楽一筋でいきますよ! 恋愛は興味なしっすから。な? 翼!」
翼「うん!」
マスター「そうか。それなら安心だ。それじゃ、2人とも、これからもしっかりと信頼関係を築きながら、頑張ってくれ」
遼「うっす!」
翼「はい」
翼(N)「実は遼には黙っている嘘が2つある。一つは、僕が女性だということ。そして、もう一つは、僕は遼の音楽が好きというわけじゃない。単に、遼が好きで一緒にいたいから、遼の音楽に合わせているだけなんだ……」
終わり。