■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
春樹(はるき)
実奈(みな)
寛人(ひろと)
その他
■台本
晴樹「じゃあ、よろしくー」
足音が遠ざかっていく。
寛人「じゃんけんで負けたやつが、昼飯を買いに行く。勝負とは厳しいものよ」
実奈「まあ、4人分だから、そんなに重くないでしょ」
晴樹「そういやさ、もうすぐ夏休みじゃん。また、みんなでどっかいく?」
実奈「なーに? 夏休みも見慣れた、このメンバーで過ごすの? なんだかなー。まあ、いいけど」
寛人「ふむ。俺も暇だからな。暇つぶしに付き合おう」
晴樹「おっけ。じゃあ、どこ行く?」
寛人「夏……と言えば、海だろう」
実奈「海……ね」
晴樹「なんだよ? 気が乗らないのか?」
実奈「いや、あんたらこそ、よく海なんて提案できるよね」
晴樹「ん? なんの話だ?」
実奈「2年前」
寛人「あっ……」
晴樹「……」
実奈「呆れた。もう忘れたの?」
寛人「……」
晴樹「べ、別に忘れてたわけじゃ」
実奈「あいつ……苦しかったんだろうね」
寛人「……」
晴樹「確か、お前を助けようとしたんだっけ?」
実奈「そう。結構、深いところまで行ってて、足つっちゃってさ。もがいてたんだけど、誰も気づかなくて……」
寛人「我々はちょうど、昼飯を買いに行ってたのだったな」
実奈「周りの人も、全然気づかなくてさ。ドンドン沈んでいっちゃって……。私、あ、もう死ぬんだ、って覚悟したのよ。そんなときだった。あいつが私の腕を掴んで引き上げてくれたんだ」
晴樹「で、そのあと、高波にさらわれたんだよな、あいつ」
実奈「一瞬の出来事だったわ。つい、さっきまで隣にいたのに、一瞬で、本当に一瞬で消えちゃったのよ」
寛人「……」
晴樹「あいつさ、そういうとこ、あるよな。なんていうかさ。自分の身が危ないのに人を助けるっていうか」
寛人「ふむ。立派なことだと思うぞ」
実奈「けどさ、それで結局、みんなに心配かけたら意味ないよ。……まあ、助けられておいて、何言ってんだって話だけど」
晴樹「とりあえず、海は止めておくか。って、なると山か?」
実奈「山って言えばさー。あいつ、テント張るの上手かったよね」
寛人「うむ。あれはプロ級だったな」
晴樹「あいつは。普段は要領悪いくせに、妙なところで器用でさ……」
実奈「そうそう。頼りになるんだか、ならないんだか、わからないのよね」
寛人「ふむ。あやつが取ってきた山菜で作った鍋は絶品だったな」
実奈「毒キノコ入ってて、そのあと、みんなで死にかけたけどね」
晴樹「懐かしいなぁ……」
実奈「うん……」
寛人「……」
実奈「こうやって考えると、4人で遊んだ記憶ばっかりだね……」
寛人「我々は4人1組みたいなものだからな」
晴樹「4人1組。誰がかけてもダメなんだよな」
実奈「誰かが欠けるなんて、考えられないし、考えたくもないなぁ」
寛人「ずっと同じのものなど存在せん。状況によって変わるのは当然のことだ」
実奈「あいつもさ、変わっていくことに、納得してくれるかな……?」
晴樹「なあ……やっぱりさ、夏休みは、海にしないか?」
実奈「あのさあ、さっき、私が言ったこと、もう忘れたの?」
晴樹「いや、違うって。確かにさ……海はトラウマかもしれないよ。けどさ。ずっとそのままでいいのか? トラウマを乗り越えてこそ、前に進めるんじゃないか?」
実奈「そっか。そうだよね。ずっとくよくよしてたら……気にしてたら、きっとあいつも嫌だよね」
晴樹「だな。よし! じゃあ、今年の夏は海ってことで!」
寛人「賛成だ!」
実奈「私も」
隆「おい! 俺がいないところで、勝手に決めるな!」
寛人、実奈・晴樹「うわっ!」
隆「なんだよ。そんなにビックリするところか? お前らが昼飯買いに行かせたのにさ」
晴樹「悪い悪い。……にしても早かったな」
隆「売店が空いてたんだよ」
実奈「ねえ、やっぱり海は嫌? その……溺れかけたし」
隆「懐かしいな。2年前だっけ? あの後、高波に流されてさー。これは死んだなって思ったら、海女さんに助けられたんだよな。今となったらいい思い出だ」
実奈「じゃあ、海でいい? 夏休みに遊びに行くの」
隆「ああ。別にいいぞ」
晴樹「よーし! じゃあ、今年の夏は4人で海だ!」
隆・実奈・寛人「おー!」
終わり。