■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ホラー
■キャスト
静修(せいしゅう)
日葵(ひまり)
宮村(みやむら)
母親
その他
■台本
静修と日葵が6歳の頃。
静修「うーん……。うーん……。お、お腹が痛いよー」
日葵「静修くん! 大丈夫だからね。私がずっと看病してあげるから」
静修「うん……ありがとう、日葵ちゃん」
10年後
静修(N)「今から10年ほど前。確か、裏山から採ってきたキノコを食べて、腹痛と高熱で死にそうになった。生死をさまよう中、幼馴染の日葵はずっと俺の傍にいてくれて、看病をしてくれた。その姿はまさに、天使、そのものだった」
場面転換。
ドタドタと廊下を走る音。
バタンとドアが開き、静修が入って来る。
静修「やべ、やべ、遅れる」
母親「あら、静修。今日は早いのね」
静修「いや、今日日直だった。早めに行かないといけないの、忘れてた。母さん、弁当は? 出来てる?」
母親「うん。ちょうどできたところだけど」
静修「ありがとう……って、なんで、袋がドピンクなんだよ」
母親「ごめんね。お弁当の袋、昨日、洗濯したらボロボロになっちゃったのよ」
静修「マジで? あれ、結構、気に入ってのになぁ」
母親「確か、日葵ちゃんが同じの持ってたはずよ。譲ってもらえば?」
静修「あっ! 母さん。もう少ししたら日葵が来ると思うから、ごめん、先に行くって言っておいて」
母親「はいはい。……って、一人でちゃんと起きれるなら、毎朝、日葵ちゃんに来てもらわなくていいんじゃないの?」
静修「……それはそれ、これはこれ。毎日、この時間に起きるのは無理だって。じゃあ行ってきます」
ドタドタと走って行く静修。
場面転換。
道路を走る静修。
宮村「あれ? 静修くん。おはよう。早いね」
静修「おう、おはよう。……って、おい、宮村。お前も今日、日直だろ。急がないと準備間に合わないぞ」
宮村「大丈夫だよ。昨日のうちにやっておいたから」
静修「え?」
宮村「黒板消して、日直の名前書いて、一時限目の準備しておいたよ。だから、急がなくて大丈夫」
静修「マジか……すげーな」
宮村「私、朝弱いんだよね。早く起きれる自信なくてさ。静修くんもいつも遅刻ギリギリでしょ? だから、昨日のうちにやっておいた方がいいかなーって」
静修「お前は天才か。いや、それより、サンキューな。言ってくれれば昨日、手伝ったのに」
宮村「言おうと思ってたら、静修くん、帰ってたから」
静修「うっ……。面目ない。じゃあ、昼休みに売店で何か奢るよ。どうせ、昼飯買わないとだからさ」
宮村「なに? お弁当忘れたの?」
静修「いや、朝飯抜いたから、弁当は学校ついたら、すぐに食う」
宮村「うわー。静修くん、なかなか尖がった趣味だね」
静修「ん? なんの話だ?」
宮村「弁当の袋。どピンクだね」
静修「違う。これは仕方なくて……」
宮村「ふふ。目立つから、みんなから突っ込まれるかもね」
静修「うう……。速攻で弁当食って、袋はカバンに入れとくよ」
場面転換。
学校のチャイム。
日葵「静修くん!」
静修「おう、日葵。今日は迎えに来てくれたのに、ごめんな。日直で早く行かなくちゃならなくてさ」
日葵「ううん。それはいいんだけど……あんまり急いでなかったよね?」
静修「あー、同じ日直のやつがさ、昨日のうちに全部、用意してくれたみたいなんだ。だから、そのお礼に今日、昼に何か奢らないとならくなってさ」
日葵「ふーん。そうだったんだ」
静修「ってことでごめん。もう行くわ」
日葵「うん、わかった。またあとでね」
場面転換。
スズメの鳴く声。
日葵「静修くん、朝だよ、起きて」
静修「う、うーん……。あと5分」
日葵「ダーメ。もう起きないと遅刻」
静修「うー。わかった。着替えるから、先にリビングに行ってて」
日葵「うん。わかった。二度寝しちゃダメだからね」
静修「わかってるよ」
場面転換。
静修「くあ……(欠伸)」
ガチャリとドアを開けて、リビングに入る静修。
母親「ホント、毎朝、ありがとね」
日葵「いえ。習慣みたいなものですから」
母親「日葵ちゃんがいるから、安心だわ。これからも静修をよろしくね」
日葵「はい」
静修「母さん、朝飯―」
母親「はいはい。そこに用意してあるから」
静修「あれ? 魚? 昨日、肉買ってたじゃん」
母親「あんた、朝から、よくそんな濃いもの食べれるわね。お肉はお弁当に入れといたから」
静修「ふーん」
日葵「私がお弁当、包んでおくね」
静修「サンキュー」
場面転換。
学校のチャイム。
男子生徒「よお、静修。弁当食おうぜ」
静修「おう! そうだな」
ガサガサと袋から弁当を取り出す。
男子生徒「相変わらず、お前の弁当はでかいな」
静修「育ち盛りだからな。しかも、今日の弁当は肉ずくしだ!」
ガパッと弁当の蓋を開ける。
静修「……」
男子生徒「随分と、ヘルシーな弁当だな。薬膳料理かなにかか?」
静修「くそ、母さんの嘘つき。何が肉尽くしだ! てか、逆に肉が一個も入ってねえ」
男子生徒「肉の代わりにデカいキノコ、入ってんじゃん」
静修「う、キノコには嫌な思い出があるんだけどな……。これなら、日葵に作ってもらえばよかった」
男子生徒「あーやだやだ。リア充の発言は非モテの心を抉るよなー」
静修「いや、そういうんじゃなくて……」
男子生徒「あーあ。俺も日葵ちゃんみたいな幼馴染がほしいなー。可愛くて、性格良くて、世話焼きなんだろ? 最高じゃん」
静修「まあな」
男子生徒「爆発しろ」
場面転換。
ドアを開けて静修が入って来る。
静修「……ただいま」
母親「お帰りなさい」
静修「母さん。胃薬ある?」
母親「なに? お腹痛いの?」
静修「うん。ちょっとね……。あー、ダメだ。立ってるのも辛い。母さん。今日はもう寝るから、晩飯いらない」
母親「……病院行く?」
静修「……まだ、耐えられると思う」
母親「無理しちゃダメよ」
場面転換。
静修「うーん……。うーん。ヤバい。熱も出て来たっぽい。……こりゃ病院に行った方がいいか?」
バタンと勢いよくドアが開き日葵が入って来る。
日葵「静修くん! 大丈夫!?」
静修「……なんとか」
日葵「大丈夫だからね。私がずっと看病してあげるから」
静修「ありがとうな」
静修(N)「……ああ、やっぱり、日葵は天使そのものだ」
終わり。