鍵谷シナリオブログ

【声劇台本】夏休み

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
将吾(しょうご)
ハナ
その他

■台本

セミの鳴く声。

廊下を歩く将吾。

将吾「あちぃ……」

女生徒たちが歩く音。

女生徒1「聞いた? あの噂」

女生徒2「ああ、七不思議? トイレで出たのを見たって話でしょ?」

女生徒1「そうそう。それでさ……」

将吾が歩き続ける。

将吾「……七不思議、ね」

場面転換。

将吾が屋上のドアを開けて、歩いて来る。

将吾「よお」

ハナ「ん」

将吾「屋上にいていいのか?」

ハナ「まだ明るいから」

将吾「ふーん」

ハナ「……」

将吾「なあ、ハナ。もうすぐ夏休みだな」

ハナ「知ってる」

将吾「予定、あったりするか?」

ハナ「あると思う?」

将吾「どっか、出かけないか?」

ハナ「……は?」

将吾「いや、夏休み。旅行にでも行かないか?」

ハナ「いや、無理でしょ」

将吾「じゃあ、何とかしたら行ってくれるか?」

ハナ「……まあ、いいけど」

将吾「約束だぞ」

場面転換。

セミの鳴く声。

道路を自転車に乗って走らせる将吾。

ハナ「……意外と何とかなるものね」

将吾「そんなもんだよ」

ハナ「それより、なんで自転車?」

将吾「車持ってねえし。……てか、普通、高校生は車ないだろ」

ハナ「電車とか使えばいいんじゃないの?」

将吾「金もない」

ハナ「……よく、それで私を誘ったわね」

将吾「まあ、こうやって時間かけて移動するのもいいもんだろ」

ハナ「まあ……ね。こういうのはなかなか新鮮」

将吾「せっかく自転車で移動してるんだ。見たいところとかあったら言えよ」

ハナ「じゃ、あそこの道の駅に寄ろうよ」

将吾「道の駅? なんで?」

ハナ「トイレ」

将吾「……恥ずかしげもなく、ストレートに言うなよ。……で? まさか、我慢してた、とか?」

ハナ「ううん。観光」

将吾「おい!」

場面転換。

道の駅内。

ハナ「お待たせ」

将吾「早かったな。もういいのか?」

ハナ「うん。それにしても……最近の道の駅のトイレって、すごいきれいなんだね」

将吾「まあ、こういうところのレジャー系はだいたいそうだよ」

ハナ「へー」

将吾「よし、じゃあ、行くか」

ハナ「待って。あれ……」

将吾「ん? 土産屋か?」

ハナ「記念になんか買いたい」

将吾「そういうのは帰りに……って、まあいいか」

場面転換。

自転車を走らせている将吾。

将吾「……はあ」

ハナ「なに? どうしたの?」

将吾「まさか、お前の方が金持ちとは思わなかったよ」

ハナ「まあ、あんまり買い物しないからね。溜まってくのよ」

将吾「……ふーん」

ハナ「貸さないわよ」

将吾「うっ!」

ハナ「それで? 旅の目的地はどこ?」

将吾「海。お前、前に行きたいって言ってただろ?」

ハナ「よく覚えてたね。かなり前の話でしょ」

将吾「まあ、な」

ハナ「……好きなの? 私のこと」

将吾「ば、バカ! ちげーって」

ハナ「私に惚れたら、大変だよ」

将吾「だから、ちげーって言ってんだろ」

ハナ「……嬉しいよ」

将吾「ん?」

ハナ「言ったの、覚えててくれたこと」

将吾「……」

ハナ「……あ、でも、水着ない。……まあ、現地で買えばいいか」

将吾「え? なに? 泳ぐ気なの?」

ハナ「海って言えば、泳ぐでしょ?」

将吾「泳げんの? お前?」

ハナ「何事も経験。やってみないとわからない」

将吾「溺れるとか勘弁しろよ」

ハナ「大丈夫。……だと思う」

将吾「急に弱気になったな」

場面転換。

ドアがガチャリと開く。

女将「こちらの部屋でございます」

将吾「へー。部屋から海が見えるんですね」

女将「ええ。ここからの眺めも、好評いただいて……あら、ごめんなさい。少し、エアコンが効きすぎみたいですね」

将吾「いや、いいですよ。そのままで」

女将「そうですか。夕飯は18時から21時までで、バイキング形式になっています。それで、朝ご飯は……」

場面転換。

ハナ「んー! 畳だ。久しぶり。いいね」

将吾「あー、そっか。そういやそうか」

ハナ「それよりさ」

将吾「ん?」

ハナ「なんで、部屋一つなの?」

将吾「は? あ、い、いや! そりゃ……その……金なくて……さ」

ハナ「なるほど。体が目的だったんだ」

将吾「アホか!」

ハナ「いいよ」

将吾「は?」

ハナ「連れてきてくれたお礼」

将吾「いや、それは、また、別の話でさ、そういうつもりとかじゃ……」

ハナ「そんな度胸はないか」

将吾「お前なぁ。あんまり、俺を舐めるなよ。やるときはやる男だぞ、俺は」

ハナ「ま、そういうことにしておいてあげる」

将吾「くそ……」

ハナ「でもね。本当に嬉しい。連れてきてくれたこと」

将吾「……」

ハナ「ありがと」

将吾「ああ……」

場面転換。

海。浜辺。波の音が響く。

ハナ「おお。海だ。すごい」

将吾「晴れてよかったな」

ハナ「波が高い」

将吾「まあ、あんなもんだよ」

ハナ「水が流れてる」

将吾「そうだな」

ハナ「トイレみたい」

将吾「おい!」

ハナ「よし、じゃあ、泳ごうかな」

将吾「大丈夫なのか?」

ハナ「たぶん」

将吾「たぶんって……」

ハナ「一緒に泳ご」

将吾「……あ、ああ」

場面転換。

学校のチャイム。

廊下を歩く将吾。

女生徒1「聞いて! 私、見たの!」

女生徒2「なにが?」

女生徒1「トイレの花子さん」

女生徒2「ええ……。昼間から?」

女生徒1「ホントに見たんだって!」

将吾「……」

場面転換。

ガチャリと屋上のドアが開き、将吾がやってくる。

将吾「よお」

ハナ「ん」

将吾「学校、始まったな」

ハナ「知ってる」

将吾「……」

ハナ「…楽しかった」

将吾「ん?」

ハナ「初めて、夏休みが楽しいって思った」

将吾「そっか」

ハナ「うん」

将吾「冬休みも行くか? 旅行」

ハナ「うん。楽しみにしてる」

将吾「じゃあ、計画立てておくよ」

学校のチャイムが鳴り響く。

終わり。

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