■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
エリア
ルーシー
サニー
その他
■台本
エリア(N)「帰り道はいつも一人だ。俺だけが生き残る。俺はもう、帰ることに疲れていたのかもしれない」
場面転換。
ルーシー「エリア大尉! 今日から大尉の隊に配属になりました! よろしくお願いいたします!」
エリア「ルーシー! ルーシー・ブラウンか! ……まだ生きていたんだな」
ルーシー「はい! かろうじて、ですが!」
エリア「……ルーシー。ここには2人しかいない。敬語は使わなくていい」
ルーシー「エリア、随分と活躍しているみたいね。同期として鼻が高いわ」
エリア「活躍……か。確かにな。殺しに殺しまくったよ。敵も、味方も……な」
ルーシー「ディアボロ、だっけ?」
エリア「ああ。全てを食い尽くす、戦場の悪魔、ディアボロ。なかなかお似合いのあだ名をつけられたものだ」
ルーシー「それでも、生き残ってくれていて、うれしいわよ。……同期で生きてるのなんて、エリアくらいだからね」
エリア「……第15期。総勢37人か」
ルーシー「みんな、良い人だったよね」
エリア「はは。そりゃ、美化し過ぎだ。コリーはどう考えても、戦闘狂のいかれ野郎だったろうが」
ルーシー「あんなんでも、生きててほしかったなぁ」
エリア「ああ……」
ルーシー「……」
エリア「ルーシー。死なないでくれよ」
ルーシー「任せといて。伊達にここまで生き残ってないわよ。あたしの悪運で、あんたのディアボロの名を返上させてやるわよ」
エリア「ああ、期待してるぞ」
場面転換。
戦場。銃声と怒号が響き渡っている。
エリア「はあ、はあ、はあ……。ルーシー、しっかりしろ。もうすぐ、味方が到着する。そうすれば、治療も……」
多数の銃声が鳴り響き、地面に弾が撃ち込まれる。
エリア「くそ、もう追いついてきやがったか……」
ルーシー「……え、エリア……あたしのことは……」
エリア「黙ってろ! 今、追っ手をせん滅してくる」
エリアが銃を構えながら走る。
エリア「すーはー。気配は……7。これくらいなら……そこだ!」
エリアが銃を撃つ。
兵士1「うがっ!」
エリア「次!」
エリアが銃を撃つ。
兵士2「あがっ!」
エリア「おおおお!」
場面転換。
ルーシー「はあ……はあ……はあ……」
エリア「大丈夫か? 頑張れ」
ルーシー「はは。……あんた、ホントに……化物ね……」
エリア「敵の気配が読めるだけだ。大したことない
ルーシー「十分よ……。現に追っ手の7人を3分で全滅させてるじゃない。……悪魔って呼ばれるのも……わかる気がするわ」
エリア「そのあだ名。返上させてくれるんだろ?」
ルーシー「はは……。そうだったわね。あたし、昔から悪運だけはいいから」
エリア「ああ……。っ……」
ルーシー「どうかした?」
エリア「いや、なんでもない」
ルーシー「……ねえ、エリア。覚えてる? 同期のみんなでした約束」
エリア「……ああ。戦争を生き残った奴らが死んだ奴らの家族に、立派に戦ったって報告するってやつだろ?」
ルーシー「……結局、あんたに全部任せることになっちゃったわね」
エリア「何言ってるんだ。お前も半分受け持つんだぞ」
ルーシー「はは。そうだったね……」
エリア「……ルーシー。俺さ、もう……」
ルーシー「エリア。あんたは生きないとダメ。生きて、この戦争を終わらせて」
エリア「ルーシー?」
兵士3「投降しろ! 貴様らは囲まれている!」
エリア「……」
ルーシー「あんた、敵に囲まれるのを分かってて、黙ってたわね?」
エリア「俺は疲れたんだ……」
ルーシー「我がまま言ってんじゃないわよ。あんたは生きて」
ピンと、手榴弾のピンを抜く。
エリア「お前……」
ルーシー「どうせ、もう長くないもの。せめて、あんたを守って、逝かせて」
エリア「やめろ……やめてくれ」
ルーシー「行って!」
エリア「俺は……」
ルーシー「早く!」
エリア「くっ!」
走り出すエリア。
エリア「くそ! くそ!」
数秒後、爆発が起こる。
エリア「ルーシー!」
場面転換。
サニー「いらっしゃいました! エリア大尉です! 衛生兵! 早く!」
エリア「う、うう……」
サニー「動かないでください! 今、タンカが来ますので」
エリア(N)「また生き残ってしまった。たった一人。俺だけ。そう。いつも帰り道は俺一人だ……」
場面転換。
サニー「サニー・エバンズ曹長です! よろしくお願いいたします」
エリア「お前も災難だな。悪魔の隊に配属されるなんて」
サニー「いえ。エリア大尉の隊に配属されるなんて光栄です!」
エリア「すぐに作戦開始だ。せめて、初出撃くらいは生き残ってくれよ」
サニー「は、はい! 頑張ります!」
エリア「はあ……」
場面転換。
戦場。銃声と怒号、爆発音が響いている。
エリア「はあ、はあ、はあ……。サニー、大丈夫か?」
サニー「はい!」
エリア「この隊も、もうお前と俺しか生き残っていない。どうやら、生き残るのは無理そうだ」
サニー「……はい」
エリア「俺が死んだら、投降しろ。お前だけでも生き延びろ」
サニー「いえ。大尉を守るのが、自分の任務なので」
エリア「バカを言うな。そんな命令は出ていない。とはいえ、俺もこのまま黙って死ぬつもりはない。一か八かで奇襲をしかける」
サニー「そ、そうですね。敵は8人。なんとか……」
エリア「ああ。俺が6人……って、お前、わかるのか? 敵の気配が?」
サニー「え? あ、その……何となくですけど」
エリア「……いいか。意識を集中しろ。気配の10センチ下を狙って撃て。……俺とお前で4人ずつ。できるか?」
サニー「はい!」
エリア「よし! 行くぞ!」
エリアとサニーが走る。
エリアとサニーが銃を撃つ。
兵士4「うっ!」
兵士5「がっ!」
兵士6「ああっ!」
兵士7「がはっ!」
エリア「……驚いたな。想像以上だ」
サニー「はあ、はあ、はあ。こ、ここまで正確に気配が読めたのは初めてです」
エリア「あとは、慣れだ。お前なら……っ」
サニー「……大尉」
エリア「ああ。敵の増援だ」
サニー「自分が囮になります」
エリア「お前は基地に戻れ。俺が時間を稼ぐ」
サニー「し、しかし」
エリア「今日から、お前がディアボロだ」
エリアが走る。
エリア「うおおおおおお!」
エリアが銃を撃つと同時に、兵士たちがうめき声をあげて倒れていく。
エリア(N)「帰り道はいつも一人。……それも今日までだ。もう一人で帰ることはない。……いや、ようやく俺はみんなのところに帰れるんだ」
銃撃が鳴り響く。
終わり。