■概要
人数:6人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
麗子(れいこ)
その他
■台本
麗子(N)「世の中は美しさこそが評価されるわ。つまり、生まれ落ちた瞬間、その人間の評価が決まり、勝ち組と負け組に分けられてしまう。醜く生まれついた私は、もう負け組に決定してしまったというわけなの」
場面転換。
男1「麗子さん、今日もお美しい」
麗子「ありがとう」
男2「麗子さんの美しさの前では、どんな宝石もかすんでしまいます」
麗子「ふふ。大げさですよ」
男3「麗子さん、僕と結婚してください」
麗子「あら、お付き合いする前からプロポーズですか?」
麗子(N)「ある占い師から顔自体を変える化粧品を譲ってもらった。それからは、本当に人生が180度変わった。あれほど、私を馬鹿にしていた男も女も掌を返して、私にすり寄ってきている。最初はこの状況が嬉しくて、色々と遊んだ。私をいじめていた女を仲間外れにしたり、私を見下していた男は、一番最初に盛大にフッてやった。今まで縁がなかったというか、諦めていた色々な人からちやほやされる毎日。でも、そんな日々も半年もしたら飽きた。今はもう、言い寄って来る相手を適当にいなしている。私は醜さと美しさのどちらも手にした女。このことで、私は本当の美しさとはなにか、分かった気がする」
男4「麗子さんは、恋愛には興味がないのですか?」
麗子「うーん。そうですね。今のところは……」
男4「それは勿体ない。あなたほどの美しさを持ちながら、恋をしないなんて」
麗子(N)「正直、恋愛には興味がある。だけど、この男のようなやつには興味はない」
男4「それなら、僕とお付き合いしてみるのはどうですか? 少し、うぬぼれている発言かもしれませんが、その辺の男よりは僕は美しいですし、生まれも貴族の血を引いている。家だって金持ちに分類される程度の財力を持ってますよ」
麗子(N)「そりゃ、他の男と比べると顔はいいかもしれない。金持ちっていうのもわかる。でも、それだけだ。こんなやつは美しくもなんともない。いや、逆に醜さがにじみ出ている」
男4「どうですか?」
麗子「ふふふ。私、あなたのような醜い人間には興味がないの。今後、近寄らないでくれます?」
男4「なっ! この僕が醜い? そんなわけない!」
麗子「あなた……もし、私の顔が醜かったら、こうして言い寄ってきたりはしないですよね?」
男4「え? それはどういう……?」
麗子(N)「そう。この男は以前、見たことがある。顔を変える前は話しかけても気のない返事しか返してこなかった男だ」
麗子「私から見たら、そうやって自分の美しさやお金をチラつかせて、女に近寄って来る男は醜い存在そのものです。吐き気がしますね。消えろ」
男4「う、うわあああああ!」
麗子(N)「こういう男は、今のうちに心を折ってやるのがいい。そうすれば、こんな男に引っかかる犠牲者も少しは減るだろう。世の中の美を分かっていない女の為に、私はこうして勘違い男どもの心を、こうして折っているのだ。それにしても、なんだか、虚しくなる。私の求める人はいないんだろうか。そう、諦めが頭をよぎった頃だった。私は運命の出会いにようやくめぐりあった」
場面転換。
真「ええ。僕、目が見えなくて……。そのせいですかね。相手の心の純粋さが見えるようになったんです」
麗子(N)「そう。まさしく、私が追い求めてた男の人。顔の美しさに惑わされず……いや、顔の美しさなんか文字通り目にもかけない、心を見てくれる男の人。この人こそ、私に相応しい男の人だわ」
麗子「私、あなたとなら付き合ってあげてもいいですよ」
真「お断りします」
麗子「え? どうして? 私は顔の美しさなんかに惑わされない女よ! 顔の醜さも経験してる。あなたのいう、まさしく心が綺麗な女だわ!」
真「あの……。あなたの心は、醜いですよ?」
麗子「……え?」
終わり。