■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
圭子(けいこ)
副会長
その他
■台本
圭子(N)「顔が良い男……。興味ない。真面目な男……。つまらない。優しい男。……虫唾が走る。チャラチャラした男。……殴りたくなる。じゃあ、金持ちの男は? ……私の家よりお金持ちなんて、存在する? スポーツ、勉強、共に私がこの学校でトップ。私はこの先ずっと、恋を知らずに生きていくのかもしれない……」
場面転換。
副会長「会長が考案した更生教室の効果は絶大です。去年と比べて、今年の問題発生率は10分の1以下になります」
圭子「そう。……それで? 次の候補者は決まっているの?」
副会長「はい。この男子生徒です」
紙を圭子に渡す、副会長。
圭子「郷田雅人……」
副会長「はい。この学校創立以来、最悪の不良です。授業の欠席はもちろん、カツアゲ、喧嘩、教師への脅し、などなど、キリがありません」
圭子「……」
副会長「本来であれば、更生教室ができて、一番最初に入れるべき人物でした。ただあそこまでの悪人ですから、更生教室のデータが取れた後に入れようとなりました」
圭子「……」
副会長「つきましては、すぐに人を集め、郷田の確保に尽力したいと思います」
圭子「これよ」
副会長「え?」
圭子「郷田が更生教室に入れるべき人間化は、私が判断します」
副会長「え? ですが、しかし」
圭子「この学校始まって以来の不良……。そのイメージに感化されていないと言える?」
副会長「いえ、それは……」
圭子「それじゃ、一週間の観察期間を得て、必要と判断されれば、更生教室送りでいい?」
副会長「はい。わかりました」
場面転換。
圭子(N)「私は今まで、数々の男たちを見て来た。そして、どの男も付き合うに値しない男ばかり。恋なんてできないと諦めていたという部分もある。だけど、今日でそれも終わり。私は気づいてしまった。まだ会ったことのないタイプの男。……それは」
圭子「ギャップ萌えよ!」
圭子(N)「どんな人間だって、二面性というものを持っている。普段は悪い行動しかしない人間でも、どこかでふとした優しさを見せる。……ああ、いい。考えるだけでぞくぞくする。学校が始まって以来の極悪な不良。その中で見せる優しさは、恋への最高のスパイス。ふふふふ。郷田雅人。たっぷりと堪能させてもらうわよ」
場面転換。
郷田の後を尾行する圭子。
圭子「学校から出て2分でカツアゲ。3度にわたる喧嘩。確かにかなり素行が悪い。うん、いいわ。すごくいい。まさしく不良の見本ともいえる男よ。さてと、あとは何をきっかけに優しさを見せるかね」
郷田の後を尾行する圭子。
郷田がピタリと足を止める。
圭子「止まった? 何かあったの? ……あ、捨て犬。……ベタだけどいいわ。さあ、拾いなさい! 私にそのギャップを見せつけるのよ!」
ガンという音が響く。
圭子「……捨て犬が入った段ボールを蹴ったわ。最低のクズ野郎。人間のやることじゃないわね。でもいいわ。もしかしたら、犬が嫌いだったのかもしれないし」
郷田の後を尾行する圭子。
郷田がピタリと足を止める。
圭子「今度はなに? ……あ、子供! ふふふ。ああいう不良に限って、子供好きだたりするのよね。いつも遊んだりしてるのかな? ……あ」
ガンという音が響く。
圭子「……リーゼントを触ろうとした子供を拳で殴った。殴られた子供はガチ泣き。まあ、仕方ないだろう。触れられたくない領域に無断で入ろうとするのが悪い。とは言え、子供相手に本気を出すなんて、なかなかのクズね」
郷田の後を尾行する圭子。
郷田がピタリと足を止める。
圭子「あ、今度は路地裏で女の子が男に絡まれている。ふふ。いいじゃない。萌えるポイントよ。やっぱり不良でも、そういう場面を見れば助けるわよね。……ああ、不良ならではのシチュエーション。さあ、今度こそ、ギャップ萌えを堪能させてもらうわよ」
女の人「きゃーー!」
圭子「……助けるんじゃなくて、男の方に混じったわね……」
圭子がガサガサとポケットから携帯を取り出す。
そして、電話を掛ける。
コール音が鳴り響く。
ピッと通話になる音。
副会長「はい、なんでしょうか、会長」
圭子「郷田雅人。更生教室送り、確定よ。すぐに確保して」
副会長「はい、承知しました」
ピッという通話が切れる音。
圭子「はあ……。恋がしたい」
終わり。