■概要
人数:1人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
アリス
■台本
アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」
アリス「ふふ。こうしてお話するのも久しぶりのような気がしますね」
アリス「最近は、妹と話す機会の方が多かったようですが、どうでしたか? 妹からは、あなたを満足させられるような話を聞けましたか?」
アリス「ふふ。そうですか。満足いただけていたようで安心しました」
アリス「では、私も妹に負けないような話をしなくてはいけませんね」
アリス「とは言っても、私も結構、色々と不思議な話はしてしまいましたからね。あなたを満足させられるとなると……」
アリス「ああ、そうだ。お話の前に一つ、面白いことをしましょう」
アリス「実は、私、今日、あなたが来るのを予知していたんですよ」
アリス「つまり、あなたが今日来ることを知っていた、ということです」
アリス「ふふ。いきなり、こんなことを言われても、困りますよね」
アリス「そんなに私を胡散臭そうに見ないでください」
アリス「では、本日、あなたが来ると言うことを予知していた証拠をお見せしましょう」
アリス「この封筒を見てください。糊付けしてあって、開けた形跡はないですよね?」
アリス「この中に、あなたが来る日にちを書いて、封筒に入れたのです」
アリス「よく、将棋の対局で、日をまたいだ場合、次の一手を書いて、封筒に入れる封じ手と同じと考えて貰ってよいです」
アリス「では、開けてみてください」
アリス「……どうですか? 今日の日付が書いてありますよね?」
アリス「ふふふ。そう驚いていただけて、私も嬉しいです」
アリス「これで、私が予言ができると信じて貰えましたか?」
アリス「ありがとうございます。では、今日はその予言についてのお話をしましょう」
アリス「その女性は、裏の世界で予言者としてとても有名でした。この女性の予言はほぼ100パーセント当たるということで、絶大な人気を誇っていました」
アリス「ただ、人気の為、誰でも予言してもらえるというわけではなく、また、その女性が気に入った人間にしか予言を行わないそうです」
アリス「もちろん、予言を貰うには高額なお金が必要とのことです」
アリス「ほぼ確実に当たる予言……。どうですか? あなたも予言してもらいたいと思いましたか?」
アリス「その女性の予言の仕方というのは特殊で、こういう形で行われていました」
アリス「まず、名前と写真、そして、予言に出せる金額を記入して予約します」
アリス「数か月すると、予言してもらえる人のところに、日時が書いた手紙が届きます。その日時にその女性のところへ行くと、予言がもられるというわけですね」
アリス「予言してもらった方の話では、数ヶ月というのは早い方で、下手をすると1年以上待たされることもあるそうです。まあ、人気なので仕方ないですよね」
アリス「そして、予言をしてもらいます。その予言というのは、結構、具体的で、しかも3ヶ月以内の出来事を予言してくれるそうです」
アリス「実に珍しいですね。占いの場合はどうとでも取れるような言葉で、どんなことにも当てはまるようなことを言うことで、相手に当たったと信じさせるような技術がありますが、それとはまた違っていますね」
アリス「そして、予言では、いいこと、悪いことのどちらか起こることを必ず言われるそうです」
アリス「つまり、3ヶ月以内に何も起こらない、と言われることは無いということです」
アリス「それはそうですよね。高額な金額を出した上に、何も起こりませんでは、お金を返してくれと言われてもおかしくありません」
アリス「予言者の女性がいうには、写真を見て、何かが起こる人にしか予言をしないということです」
アリス「女性の方で、あらかじめ何かが起こる人間を選定して予言をするということですね」
アリス「ああ、一つ言い忘れてたのですが、予言してくれるのはあくまで、本人についてのことしかできないそうです。なので、競馬などのギャンブルに関して予言することはできないそうです」
アリス「まあ、それができれば予言者なんかしませんよね。自分で予言して大金持ちになれるんですから。まあ、お金の為にやっているわけではないと、その女性は言っているそうですが」
アリス「そして、この女性が人気なのは、一回目の予言をされた後、その予言で言われたことで、もう一度相談ができるということです」
アリス「つまり、何か悪いことが起こると予言され、それが実際に起こった際は、それを解決する方法を予言で教えてくれるそうです」
アリス「万が一、悪いことが起こっても回避できるというのが、人気の秘訣、というわけですね」
アリス「実際、不幸を回避できるということで、依頼は途切れず、依頼料は数千万を超えていたらしいです」
アリス「どうですか? もし、数万で予言を貰えるとしたら、あなたは依頼しますか?」
アリス「ふふ。そうですね。ほとんどの人はこの話を聞いた後は、依頼したくなるでしょうね」
アリス「この女性の予言は口コミで一気に広がったらしいですよ」
アリス「依頼者が満足して他の人に話すのですから、信頼度も高まっていったらしいです」
アリス「……では、この話の種明かしをしましょうか」
アリス「え? 本当の予言者の話だと思いましたか?」
アリス「もちろん、これには裏があります」
アリス「まず、依頼の申し込みの資料からターゲットの身辺を徹底的に洗い出します。そして、弱みがありそうな人間を絞っていくのです」
アリス「そして、次に仕込みを行います。例えば、子供がいたとしたら、女性を雇って近づきます。いわゆるハニートラップですね。あとは子供ではなく、本人に行く場合もありますね」
アリス「あとは、独身の娘さんがいればそれとなく合いそうな男性を探しておき、良さそうな人が出てくれば、予言で娘さんに運命の人が現れると言えばいいわけです」
アリス「ハニートラップの方は予言を行ってから、トラブルとして表に出します。ここでポイントなのが、このトラブルを避ける予言が貰えるところです」
アリス「自分で仕込んだのですから、解決も簡単にできるというわけです」
アリス「あと、手っ取り早くできるのが、事故ですね」
アリス「予言で、何日後に事故に遭うから、来月の出張に行くのは止めなさいと言います。本人は信じて、行くのを止めた後、その予言の場所と時間で事故を起こします。そうすれば、そのニュースを見た依頼者はそのまま出張に言っていれば巻き込まれていたと思うでしょうね」
アリス「どうですか? これが予言者の仕組みです」
アリス「え? そんな遠回しで大規模なことをするのは現実的ではない、ですか?」
アリス「ふふ。普通であればそうですね。ですが、思い出してください。依頼者から数千万単位の依頼料が来るんです。裏工作をしても十分、元を取れるというわけです」
アリス「……え? 先ほどの私の予言ですか?」
アリス「ええ。もちろん、あれにもタネがあります」
アリス「まず、先ほどの封筒と紙を一か月分用意します」
アリス「ふふ。さすがですね。そうです。つまり、一か月分の日数を書いたものを用意しておいたんです。そして、あなたが来た日の封筒を出した、というわけですね」
アリス「占いや予言など未来の情報はみんなが知りたいものです。もちろん、中には本当に未来のことがわかる方もいると思います。ですが、このように偽物もいるということは忘れないでくださいね」
アリス「不思議、というよりは教訓みたいになってしまいましたが、これで今回のお話は終わりです」
アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」
終わり。