■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
ルーク
ノア
オリビア
ヘンリー
■台本
ルーク達が8歳の頃。
ルーク「……」
ヘンリー「おい、ルーク、早く開けろよ!」
ルーク「ちょっと待てって。久々の宝箱だぞ。中身が何か、ドキドキするのも、宝箱の醍醐味だろ」
ヘンリー「全然、使えない物かもしれないぞ」
ルーク「それはそれで、宝箱の醍醐味ってね」
ガチャリと宝箱を開ける。
ヘンリー「なんだった?」
ルーク「……おお! やった! 当たりだ! 神聖なるナイフだぞ!」
ヘンリー「おお! すげー!」
ルーク「やったなっ!」
ルーク23歳。
ルーク(N)「小さい頃は宝箱の中身に一喜一憂していた。例え、中身が薬草だったとしても、宝箱を見つけただけで、それだけで嬉しかった。その嬉しさが忘れられなくて、俺は冒険者になった。世界中の全ての宝箱を開ける、それが俺の夢だ」
ノア「おい、ルーク。どうしたんだ? ボーっとして」
ルーク「あ、いや、すまん。ちょっと寝不足でボーっとしちまった」
オリビア「ちょっと、しっかりしてよ。明日はついに、海底城の探索なんだから」
ノア「オリビアはいつになく気合が入ってるな」
オリビア「当たり前でしょ! 今まで誰も足を踏み入れたことがないところよ! 財宝が眠っていること、間違いなしだわ」
ノア「欲にまみれてるなぁ……」
オリビア「なによ、ノア。あんただって、伝説級の武器が眠ってるかも、って興奮してたじゃない」
ノア「当たり前だろ! 伝説の武具を見つければ、また一歩、魔王討伐へ近づくんだ」
オリビア「魔王の城にはどんなお宝が溜め込まれてるのかしらね? 考えただけでも興奮するわ」
ノア「正義の勇者の御一考の台詞とは思えないな」
オリビア「別に魔王を倒せば、なんだっていいでしょ。ね? ルーク」
ルーク「ああ。宝箱は冒険者のロマンだ」
ノア「……欲まみれ過ぎる……」
場面転換。
ルーク「はあああああ!」
ザシュっと斬る音と魔物の断末魔。
ルーク「ふう。なかなか手ごわい相手だったな」
ノア「僕の魔法の援護があったことも忘れないでね」
ルーク「わかってるって」
オリビア「ルーク! ノア! ちょっと来て! あったわ! でっかい、宝箱!」
ノア「はあ……。まったく。仲間の心配よりも財宝の方を優先してるのか。……あれでシスターっていうんだから、世も末だよ」
ルーク「でも、ま、宝箱を見つけたってんだから、行ってみようぜ」
ノア「……はいはい」
ルークとノアが歩いて行く。
オリビア「ほらほら! 早く! もう開けちゃうわよ!」
ルーク「え? お、おい! 待てって! 開ける前のドキドキを俺から奪うな!」
オリビア「はい、残念。時間切れ!」
ガチャリと宝箱を開ける音。
オリビア「……」
ルーク「中身はなんだったんだ?」
ノア「いい武器とか防具だといいんだけど」
オリビア「……はあ。残念、外れ。賢者のメイスよ」
ノア「え? なんで、そんな古いものがこんなところにあるの? しかも、わざわざ宝箱なんかに入ってるなんてさ」
オリビア「私に言われても……」
ルーク「そっか。この城が沈むくらいの時代には、伝説級のものだったんじゃないか? 今はレプリカや、それ以上の道具が生み出されているだけで」
オリビア「あーあ。そんなオチか……」
ノア「がっかりだね」
ルーク「ま、こういうこともあるさ。がっかりだけど」
オリビア「どうする、これ? 売っても二束三文だけど」
ルーク「その辺に捨てておけよ」
ノア「そうだね。あーあ。それにしても、収穫なしか……」
ルーク「ま、次に行こうぜ、次に」
場面転換。
オリビア「……ついに来たわね。魔王城」
ノア「なに? ビビってるの?」
オリビア「興奮を抑えてるのよ。どんなお宝が眠ってるのか……。あー、考えるだけで胸が高まるわ!」
ルーク「もう魔王城くらいしか、宝箱が残ってるところはないしな」
ノア「まあ、めぼしいダンジョンはあらかた回ったからね」
オリビア「魔王なんだもん。きっと、見たことのないくらいの財宝を溜め込んでるわよ」
ノア「……これから、最大の敵と戦おうっていうのに、それ?」
ルーク「ははは。いいんじゃないか? ビビッて動けなくなるより、ずっといいさ」
ノア「英雄って意外と、正義の使者じゃなくて、欲まみれの人間なのかもね」
オリビア「人間は欲があるから、強くなるのよ!」
ノア「はいはい……」
場面転換。
ノア「はああああ!」
爆音が鳴り響く。
オリビア「ルーク! 防御結界を張ったからそのまま突っ込んでいいわよ!」
ルーク「はああああああ!」
ザシュっと斬る音と魔王の断末魔。
オリビア「……やったの?」
ノア「……みたいだね」
ルーク「やった……。やったぞ!」
オリビア「きゃー! やったわ! ついにやったわよ!」
ノア「ああ! ついにやり遂げた!」
オリビア「じゃあ、さっそく、宝物庫に行くわよ!」
ノア「……いや、もっと余韻に浸りたいんだけど」
オリビア「じゃあ、ノアだけ浸ってればいいじゃない! 私は行くわよ!」
場面転換。
キラキラという効果音。
オリビア「やったー! 見て! やっぱりすごい! お宝の山!」
ノア「はいはい。すごいすごい。……ルーク? なにしてるの?」
ルーク「いや、なんか、端に宝箱があってさ」
オリビア「なになに? さらにすっごいお宝が眠ってるとか?」
ルーク「よし、開いてみるぞ」
ガチャリと宝箱を開く音。
オリビア「……」
ルーク「……」
ノア「……神聖なるナイフ? なに? このゴミ?」
オリビア「はは。ある意味骨とう品としての価値はあるかもねー。あー、つまんない」
ルーク「……神聖なるナイフ」
ノア「どうしたの、ルーク?」
ルーク「そうだよな。嬉しかったんだよな」
ノア「何の話?」
オリビア「ねえ、二人とも! 早くお宝山分けしましょ! これで、一生遊んで暮らせるわ!」
場面転換。
ノア「ねえ、本当に行くの?」
ルーク「ああ。俺たちが回ってきた道をもう一回、一人で旅するよ」
ノア「……世界は平和になったんだよ。なんで、そんなことするの?」
ルーク「んー。次の平和のため、かな」
ノア「なにそれ?」
ルーク「また、俺みたいな奴が現れるように、各地の宝箱に、色々と入れて回るんだ」
ノア「まあ、ルークがやりたいなら、止めないけどさ」
ルーク「じゃあ、行って来る!」
ルーク(N)「昔は宝箱を見つけるだけで嬉しかった。その気持ちを、あとの子供たちにも味わってほしい。それが、俺の新しい夢だ」
終わり。