【声劇台本】不思議な館のアリス 思い込みの力

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■概要
人数:1人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」

アリス「どうしました? 顔色が悪いですよ?」

アリス「え? 自覚がないのですか?」

アリス「手鏡がありますので、見てみてください」

アリス「どうですか? 顔色悪いですよね?」

アリス「疲れているんですよ。体が重く感じませんか?」

アリス「それはいけません。最近、仕事なので無理してますよね」

アリス「……やはり。残業が多かったのですか」

アリス「ああ、そうだ。いい、薬があるのですが、飲んでみますか?」

アリス「薬、というより漢方に近いのですが、とても不思議で、効果はかなり出ていると噂されているんですよ」

アリス「どうぞ。これです」

アリス「……どうですか? かなり即効性があるんです。体が温かくなってきませんか?」

アリス「……よかったです。体が温かくなってきたら、安心ですよ」

アリス「顔色も大分、よくなりましたよ。ほら、さっきの鏡で見てみてください」

アリス「さっきと比べてどうですか? 顔色、よくなったと思いませんか?」

アリス「……そうですか。あなたもそう思ってもらえて嬉しいです」

アリス「……ただ、全部、嘘なのですが」

アリス「……はい。そうです。顔色が悪いというところからが嘘だったんですよ」

アリス「申し訳ありません。そこまで起こらないでください。

アリス「ですが、どうですか? 同じ顔色だったのに、顔色が悪いと言われて見る顔と、薬と言われたものを飲んだ後で見る顔は違うように見えませんでしたか?」

アリス「人は思い込みによって、同じものを見ても、見え方が違ったり、体の調子さえも変わるんですよ」

アリス「有名な話ではプラシーボ効果というらしいですね」

アリス「ただの小麦粉を薬だと思い込んで飲んだ場合、薬を飲んだかのような効果が表れるというものです」

アリス「それでは今日は、そんな思い込みにまつわる話をしましょうか」

アリス「それは、ある、温泉宿の店主のお話です」

アリス「その温泉宿は代々、受け継がれてきた老舗の宿でした」

アリス「天然温泉が売りで、リピーターのお客さんも多く、結構、繁盛しいていたようです」

アリス「そんなある日のことです。今まで透明だった温泉の色が白く濁ってしまったんです」

アリス「専門家によると、成分が変わったとのことで、源泉に違う源泉が混ざったのではないか、とのことでした」

アリス「専門家の調査で、その温泉は今までよりも体への効用が高まったことがわかったんです」

アリス「それにより、お客さんはさらに増えました」

アリス「訪れるお客さんは、新しい温泉に浸かったことで、体が良くなったと言い、それが噂となり、さらに多くのお客さんを呼びました」

アリス「さらに効能に関しても、様々な病気に効いたと報告があり、難病の人も訪れるようになったんです」

アリス「噂が噂を呼び、その温泉は奇跡の温泉と呼ばれるようになりました」

アリス「ですが、その温泉宿を妬んだ人がいたのでしょうか。ある日、その温泉には温泉の素を入れているという噂が広がりました」

アリス「元々の温泉から、増えた成分が、ある温泉の素と全く一緒だという噂が流れたんです」

アリス「これにはメディアも飛びつき、奇跡の温泉が不正をしていたと騒ぎ立てました」

アリス「すると今度は、温泉に入ったお客さんから気分が悪くなった、病気が進行した、中には温泉に入った後に事故に遭ったなど、関連性のないことさえも、言われるようになりました」

アリス「温泉宿には人が来なくなり、長年続いていた温泉宿も閉店することになったんです」

アリス「……ええ。もちろん、温泉の素は入れていません」

アリス「ですが、驚いたことに、温泉に入ったお客さんの体調が悪くなった、病気が悪化した、というのもデーターとして本当に起こったらしいのです」

アリス「恐ろしいことです。全く、変わらない効能の温泉に入って、天然温泉か、温泉の素が入った偽物の温泉かという意識の違いで、体に起こる効能が全く正反対になってしまったということです」

アリス「人の思い込みの力というのは、良くも悪くも影響が強いということですね」

アリス「そして、思い込みにより、影響を受けるのは自分だけではなく、それにより不幸になる人もいます」

アリス「思い込みにより、人を攻撃してしまう前に、一旦、落ち着いて考えてみてください。本当にそれは思い込みによるものではないか、と」

アリス「ふふ。あなたなら、心配ないとは思いますけど」

アリス「それでは今日のお話はこれで終わりです」

アリス「またのお越しをお待ちしております」

終わり。