■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
高坂 陽菜(こうさか あきな)
母親
西田 正志(にしだ まさし)
西田 清(にしだ きよし)
■台本
トントントンとまな板で野菜を切る陽菜。
陽菜「よし、こんな感じかな」
そこに母親がやって来る。
母親「あら、陽菜。大分、料理する姿も板に付いてきたわね」
陽菜「ホント? ふふふ。練習してきた甲斐があったわね」
母親「でも、あんたが、料理を教わりたいだなんてねー。料理なんて、面倒くさいなんて言ったのに」
陽菜「……小学生の頃のこと言われても。さすがに高校生にもなれば、料理くらいするって」
母親「ふーん。まあ、理由なんてどうでもいいけど。料理を覚えておくのはいいことよ」
陽菜「ねえ、お母さん。それより、何かいいレシピ知らない?」
母親「いいレシピ?」
陽菜「えと、男の子が好きそうな料理」
母親「あら、誰か、好きな子でもいるの? あ、正志くん?」
陽菜「ちっ! 違うって! えーと、ほら、あの……そうそう。ほら、お母さん、前に男の人をゲットするには胃をつかむこと、って言ってたでしょ? 将来の為よ、将来の為」
母親「ふーん。将来のためねぇ……」
陽菜「な、なによ、その目は」
母親「あんたの料理は十分美味しいと思うけどね」
陽菜「でも……なんていうか、ワンパターンっていうか、とっておきの料理とかあるといいかなって思ってさ」
母親「とっておき……ねぇ」
陽菜「なんか、いいの知らない?」
母親「ああ。えっとね、我が家に代々、引き継がれている特別な料理っていうのがあるの」
陽菜「特別な料理?」
母親「そう。この料理を食べると、その相手は作った人に惚れてしまうのよ」
陽菜「……なに、その嘘くさい話」
母親「あら、信じてない?」
陽菜「信じるわけないでしょ。そんなの」
母親「ふーん。でも、本当なんだけどなぁ。100パーセント、食べた相手を惚れさせることができるんだけどなぁ……」
陽菜「……い、一応、教えてもらうかな」
母親「ふふふ。えっとね……」
場面転換。
トントントンと陽菜が野菜を切っている。
清「あれ? 陽菜ちゃん。いらっしゃい。どうしたの? うちのキッチン使うなんて、珍しいね。いつも作って持ってきてくれるのに」
正志「なんか、作り立てじゃないとダメなんだってよ」
陽菜「勝手に借りちゃってごめんなさい。終わったらちゃんと片付けるから」
清「いいよいいよ。ごゆっくり」
場面転換。
バンと、テーブルに皿を置く陽菜。
陽菜「できたわ!」
正志「へー。……変わった料理だな」
陽菜「我が家に伝わる秘伝の料理なんだよ」
正志「……ふ、ふーん。あ、そうだ! 清にも声をかけようか。一緒に食べた方が楽しい……」
陽菜「ダメ! あんたが食べて! あんたが試食係なんだから」
正志「お、おう……。にしても、なんか独特というか変な臭いがするな」
陽菜「まあ、その色々入れたからね。それより、食べて! さあ!」
正志「お、おう……」
パクリと食べる正志。
陽菜「ど、どう? 私に惚れた?」
正志「う……」
陽菜「う?」
正志「うげえええ!」
陽菜「ちょっと! 何吐き出してのよ!」
場面転換。
陽菜「ちょっと! お母さん! 嘘付いたわね!」
母親「なにが?」
陽菜「あの料理のことよ!」
母親「嘘じゃないわよ。食べた人は作った人のことを好きになる。……正志くんはちゃんと食べた?」
陽菜「うっ! 吐き出してた」
母親「あーあ。それじゃ、ダメね」
陽菜「ううー。騙されたー」
母親「うーん。正志くんもまだまだねぇ。あれくらいの料理を食べれないなんて。愛が足りないわ」
陽菜「もう! もう! お母さんのせいで、正志に嫌われたら、どうするのよ!」
母親「はいはい。ごめんなさい。それじゃ、昔、正志君が家に来たときに、すごく美味しかったって言っていた料理を教えてあげるわ」
陽菜「え? ホント?」
場面転換。
陽菜「……昨日は、ごめんね、正志」
正志「いや、こっちこそ、吐き出してすまん。あのあと、清と総士にめちゃめちゃ怒られた。女の子に恥をかかせるなって……」
陽菜「それでさ、お詫びっていったらなんだけど、これ、作ってきたんだ」
正志「今度はちゃんと食べれるものだと助かる……」
パカッと蓋を開ける正志。
正志「おおー! 良い匂い! 食っていいんのか?」
陽菜「うん。そのために作ってきたから」
正志「じゃあ、いただきますー」
パクっと食べる正志。
正志「おお! 美味い! すげーうまい!」
陽菜「ホント?」
正志「いやー、すげーな。マジで美味いよ。毎日食べたいくらいだ」
陽菜「ま、毎日?」
正志「ああ。やっぱ、飯が美味しいと、毎日が幸せだよな。あーあ。陽菜が家に住んでたらなー」
バクバク食べる正志。
陽菜「私が……正志の家に……一緒に」
正志「ん? どうかしたか?」
陽菜「ああ、いや、うん。やっぱり、胃を掴むのって大事だなって思って」
正志「美味い! 美味い!」
陽菜「……ありがとう、お母さん」
終わり。