■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、近未来、コメディ
■キャスト
ジョーイ
博士(はかせ)
■台本
博士「いいかい、ジョーイ。君はアンドロイドだが、アンドロイドではダメなんだ」
ジョーイ「どういうことでしょうか?」
博士「ジョーイよ。アンドロイドと人間との最大の差は何だと思う?」
ジョーイ「わかりません」
博士「それは心だ! 今まで、人類は心を持ったアンドロイドを作り出せてはいない! だから、ジョーイ、君には心を持ってもらいたい」
ジョーイ「そう言われても……心をどうやって作ればいいのか、わかりません」
博士「学習だ!」
ジョーイ「……学習、ですか?」
博士「そうだ。君には徹底的に、人間を学んでもらう。そして、人間の心を手に入れるのだ!」
ジョーイ(N)「それから私は何億という人間のデータを検証し、学習させられた。そして、あれから1年以上が経過した時……私はついに完成した」
場面転換。
博士「本当か? 本当なのか?」
ジョーイ「ええ。私の中に、完璧に人間の心が形成されました」
博士「おお……」
ジョーイ「まあ、正確にいうと、アレですが、ほぼ100パーセント、心と言ってもいいものですね」
博士「素晴らしい! その微妙に濁した言い回し。実に人間らしい」
ジョーイ「はい。人間として扱ってもらっても、まあ、大丈夫だと思います」
博士「ふむ!」
ジョーイ「ですが、まあ、あまり期待し過ぎてもナンですから、その辺は検証し直して調整していきましょう」
博士「そうだな。では、さっそく、実際の行動データを取らせてもらう」
ジョーイ「はい。で、どのようなことをすればいいのですか?」
博士「よいか? 私の命令のまま行動するのでは、アンドロイドと変わらん。それに目的を示しても同じだ。だから、君には普通に生活をしてもらう」
ジョーイ「普通に生活、ですか?」
博士「そうだ。アンドロイドと人間の差、それは何気ない日常でこそ、発揮されるのだ!」
ジョーイ「……わかりました。では、私は人間として、普通に生活します」
博士「うむ! 期待しておるぞ!」
場面転換。
テレビから番組の音が流れている。
博士「おーい、ジョーイ。これ、洗濯してほしいんだが……」
ジョーイ「はい。そこのカゴに入れて置いてください。これを見終わったら、やりますので。……あはははは」
博士「……それ、昨日も言ってなかったか?」
ジョーイ「え? ああ、今日こそは本当にやります。……あはははは」
博士「……」
場面転換。
ペラペラと漫画のページをめくる音。
ジョーイ「あははは」
博士「おい! ジョーイ! 部屋が散らかり過ぎだ! 漫画なんて読んでないで、少しは掃除をしたらどうだ?」
ジョーイ「はあ……。たまには博士がやってくてもいいじゃないですか?」
博士「なんだと?」
ジョーイ「いつもいつも、他人に任せてますけど、自分のことは自分でやる、人間として当然のことですよ」
博士「……まさか、お前にそう言われるとはな……」
場面転換。
ことりとテーブルの上に皿が置かれる。
博士「なんだ、これは?」
ジョーイ「シチューです」
博士「黒いぞ?」
ジョーイ「焦がしちゃいました! てへ! まあ、たまに失敗しても大丈夫ですよね? だって、人間ですもの」
博士「ば、ば、ば、馬鹿もーん! これではアンドロイドの意味がないだろうが! この失敗作!」
ジョーイ「ええー! 理不尽!」
ジョーイ(N)「はあ……。人間ってこれだから……」
終わり。