【声劇台本】おじいちゃんの予言書

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■概要
人数:2人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
和樹(かずき)
祖父

■台本

和樹(N)「おじいちゃんはスゴイ人だった。何もないところから、食品会社を興し、一代で一流の企業まで育てた」

祖父「いいかい、和樹。おじいちゃんは未来が見えるんだ。だから、先のことがわかるんだよ」

和樹(N)「子供の頃に聞いた、おじいちゃんの話はとても面白かった。何度も会社のピンチを乗り切ったときの話や、大きな損卒を出した話、そして、おばあちゃんと出会ったときの話などをしてくれた」

祖父「和樹、おじいちゃんはね、未来が見えると言っても、ずっと先の未来しか見えないんだ。だから、大きな選択を迫られた時は、必死に一番いい方法を考えたものだよ。正解だったときもあれば、間違いだったこともあった。だが、おじいちゃんはずっと未来のことがわかっていたからね。未来は成功しているとわかっていたから、常に前を向いていられたんだ」

和樹(N)「確かに未来がわかっていれば、その前の小さいな選択を間違ったとしても前向きに考えられるだろう」

祖父「和樹。見てごらん。これがおじいちゃんの予言書だ」

和樹(N)「おじいちゃんが見せてくれたのは一冊のノートだった。そのノートには大体、5年ごとに予言のようなものが書かれていた」

祖父「15歳で食品会社で下積みをする。そこで、経営について学ぶ。20歳で会社を設立。25歳では、会社は5倍の規模になっている。……こっちが、会社の売り上げの表だよ。どうだい? 合っているだろう?」

和樹(N)「見比べてみると、少しの誤差はあったが、書かれていたことと内容は合っていた。……今、考えてみれば、いくらでも細工はできたと思う。数年前に書けば、いくらでも予言書のようなノートは作れる。だけど、おじいちゃんがそんなことをする理由もないし、そんな小細工をするような人じゃない。だから、これは本物だと信じることができた」

祖父「和樹も、自分の未来が知りたいかい? そうだなぁ……。よし! 頑張って、予言してみよう。ただ、おじいちゃんのものよりは当たらないかもしれないけどな」

和樹(N)「おじいちゃんに書いてもらった予言書。それは3年から5年ごとに書かれたものだった。おじいちゃんの予言書は変わっていて、僕のことを随分と質問された。学校の成績のこと、好きな事、将来やりたいこと。色々なことを聞いた上で、おじいちゃんは書いてくれたのだ」

祖父「未来というのは、無限に広がっている。だから、通るだろう道の近くを見るんだ。和樹のことを聞かせてもらったのは、和樹がどの道を通るかを探しやすくするためなんだ。まあ、あまり深く考えなくていい。……和樹。おじいちゃんはこの予言書が当たることは確実だと思っている。頑張りなさい」

和樹(N)「そう言って、予言書のノートを貰った僕は何度も何度も読み返した。未来の自分を想像して」

祖父「和樹。お前はきっと、すごい人物になる。この予言書よりも、ずっとすごい人間になるかもな」

和樹(N)「正直にいって、プレッシャーだった。おじいちゃんが言うような人間になれるとは到底思えなかった。でも、おじいちゃんが予言してくれた通りになれるように、努力をした。おじいちゃんがそう予言してくれたのだから、そうなれると信じて」

祖父「……ふふ。和樹。どうだい? おじいちゃんがした予言は当たったかい?」

和樹(N)「祖父が病気になり、病院に入院して、数年が経った頃。定期的にお見舞いに行った時のことだった。今まではあまり触れられてなかった予言のことを聞いてきた。……多少は予言よりも成果はすくなかったが、おおむね当たっていた」

祖父「そうか。いや、いいんだ。途中経過は多少外れていても構わない。大丈夫。最後は必ず当たるさ。大丈夫。しっかりやりなさい」

和樹(N)「それがおじいちゃんと言葉を交わした最後の日だった。そして、おじいちゃんは最後に一冊のノートを僕に残してくれた。そのノートには、こう書かれていた」

祖父「すまんな、和樹。おじいちゃんは未来を見ることなんて出来ない。でもね、未来を信じることはできたんだ。あの予言書は、叶ったのではなく、無理やり自分で叶えたというわけだ。和樹。お前はあの予言書のような人には慣れそうにないと言っていたが、私の予言書通りに努力しているお前ならきっとなれると信じているよ。そう。私には見えたんだ。未来のお前の立派な姿がな」

和樹(N)「おじいちゃんの予言書は、予定書、計画書だったというわけだ。でも、僕はおじいちゃんを信じてる。そして、僕はこれからも前を見て進んで行く。おじいちゃんがくれたこの予言書を、予言書として完成させるために」

終わり。

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