■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
衛(まもる)
竜也(たつや)
一郎(いちろう)
武志(たけし)
■台本
武志「それからは、男は真面目に働いて、家族を幸せにしましたとさ。終わり」
一郎「おおー! 良い話だな」
衛「ううー。寒いよー」
竜也「おい、外、雪降ってんぞ。寒いわけだ」
一郎「マジかー。これは命にかかわるな。よし、次、誰だ?」
衛「あ、僕か。って言っても、良い話なんて、そんなに知らないからなぁ」
一郎「いいんだよ。こういうのは数で勝負だ」
衛「……そんなもんかな?」
竜也「早く頼む。本気で凍死しそうだ」
衛「あ、ああ。わかった。えっと……」
一同「ごくり」
衛「昔々あるところに、ラブラブなカップルがいました」
武志「ちょっと待って。昔なら、ラブラブなんて言わないんじゃないか?」
竜也「話の腰を折るなよ。いいんだよ、そんな細かいことは。続きを頼む」
衛「うん。えっと、そのカップルはお互いに大事なものがあったんだ。男は懐中時計で」
武志「ほら、やっぱり! 懐中時計を使ってる時代ならラブラブなんて言わないって」
竜也「いいから、お前はもう、しゃべるな。……うう、ヤバい。寒い。早く続きを頼む」
衛「えっと、女は長くて、綺麗な髪だったんだ。男の懐中時計は父親の形見で大事にしていたし、女の髪は、男が褒めてくれたことが嬉しくて、長く伸ばしていたみたいなんだ」
一郎「ふんふん、それで?」
衛「あるときの、結婚記念日のことだったんだけど」
武志「あれ? カップルって言ってなかった? 結婚しててもカップルって言うのかな?」
竜也「お前、次、何かしゃべったら、つらら鼻にぶっこむからな」
衛「結婚記念日に、相手に内緒でプレゼントを用意しようって考えたんだ」
一郎「男も女も、同じことを考えてたってことか?」
衛「うん、そう。だけど、二人とも、とても貧乏でプレゼントを買うお金がなかったんだ」
一郎「金ないのは辛いよな」
竜也「いや、マジでそうだな。金が全てだよ。世の中、金、金、金、だ! ううー。寒い!」
衛「それでね、二人はそれぞれ、大切な物を売ってお金を手に入れたんだ。そして、そのお金でプレゼントを買ったんだ」
武志「あ、俺、その話知ってるかも。オチは……」
竜也「オチを言ったら、お前を雪だるまにしてやるからな」
一郎「それで、続きは?」
衛「ああ、うん。えっと、男は女へ、髪飾りのプレゼントを用意したんだ。で、女は男の懐中時計につける鎖を買ったんだ」
一郎「ふんふん。それで?」
衛「プレゼントを買う時に売った、大事な物があるって言っただろ? あれは、男は大切な懐中時計で、女は綺麗で長い髪を売ったんだ」
竜也「髪を売るっていうのが想像つかないが、早く続きを頼む」
衛「うん。えっと、お互いにプレゼントを渡した時、そのプレゼントは役に立たない状態だったんだ」
一郎「つけるはずの懐中時計も、髪飾りをつける長い髪もないって、ことだな」
衛「うん。でもね、二人はお互いのプレゼントが本当に嬉しかったんだ」
竜也「なんでだ?」
衛「自分の為に大切なものを売ってくれたこと。役に立たなくなったプレゼントでも喜んでくれたことだよ。それからは、そのカップルはますます仲良くくらしたのでした。終わり」
一郎「うん。いい話だ」
竜也「ああ、いい話だったな」
衛「で、どう?」
竜也「うう……。寒い。ヤバい」
一郎「くそ。これでもダメか。よし、次だ」
衛「ちょ、ちょっと待って」
一郎「なんだ?」
衛「これって、本当に意味あるの?」
一郎「何言ってるんだ。よく、夏の暑い日に怖い話をするだろ?」
衛「うん」
一郎「あれは怖い話でゾクッとするから、涼しく感じるんだよ」
衛「う、うん……」
一郎「だから逆に、寒いときは良い話で心を暖かくすれば、温かく感じるだろ? 良い話は、心が温まるってよく言うし」
衛「ああ、なるほど……」
武志「うう、寒い」
一郎「よし、次だ」
竜也「あー、次は俺だな。えーと、これは姉ちゃんから聞いた話なんだけど……」
終わり。