■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
海羽(みう)
母親
■台本
海羽「ああ、もう! あいつ、なんで返事してこないのよ!」
母親「忙しいんでしょ、きっと」
海羽「いや、聞いてよ、お母さん。5時間だよ! 5時間も返事なしとかありえないでしょ! し、か、も、既読なんだよ! 既読スルー! 信じらんない!」
母親「だから、確認するだけで手いっぱいで、返信まではできなかったんじゃない?」
海羽「いやいやいや。あり得ないでしょ! スタンプの一つくらい押せるでしょ! 逆に返信できないなら既読しないでほしいんだけど!」
母親「それは、あんたの都合でしょ。あんたの感覚を押し付けちゃダメよ」
海羽「あーあ。やっぱ、遠距離は無理だったのかなー」
母親「無理なら、別れる?」
海羽「……それはない」
母親「なら、黙って待つしかないわね」
海羽「うううー! このもどかしい思い! 気が狂いそう!」
母親「大げさよ」
海羽「……私も、あっち行こうかな」
母親「バカ言うんじゃありません」
海羽「でもぉ……」
母親「行ってもいいけど、仕送りはしないからね」
海羽「ええー。そんなの、即詰みじゃん」
母親「だから、黙って待ってなさい」
海羽「……ねえ、お母さんも遠距離だったんでしょ? お父さんと」
母親「そうね」
海羽「不安じゃなかったの?」
母親「全然」
海羽「うっそだー!」
母親「……まあ、全く不安じゃなかったって言えば、嘘になるかな」
海羽「ほらあ!」
母親「でも、心配するだけ無駄って割り切った感じかしらね」
海羽「そんなの割り切れるもんなの?」
母親「昔は今と違って、スマホとかなかったしね。連絡取るとしたら、手紙か電話くらいよ。そんなの頻繁にはできないでしょ」
海羽「……確かに、手紙とか電話とかだとしんどいかも」
母親「でしょ? だから、心配すること自体止めたのよ」
海羽「……止めれるの? 不安にならない? 私は、毎日すごい不安なんだけど」
母親「信じてたから」
海羽「信じてた?」
母親「……お父さんがね、言ったの。夜空の星だって」
海羽「どういうこと?」
母親「星って、ずっと空で輝いているでしょ?」
海羽「うん」
母親「例え、昼間、太陽が輝いているせいで見えなくても、厚い雲が空にかかっても、雨が降っても、雪が降っても、ずっと星は輝き続けてる。それと同じだって。いつでもどこでも何があっても、僕は君を想って輝いている。だから、見えなくても信じて待っていて欲しいって」
海羽「……」
母親「その言葉を聞いて、安心したっていうか……好きになったって言うか、信じることができたのよ」
海羽「くっさー! そんなのでおちるなんて、お母さんチョロすぎー」
母親「うるさいわね」
そのとき、ピロンと受信音が鳴る。
海羽「あっ! 返信来た! ……単なる寝落ちだってさ」
母親「ほら、そんなものじゃない」
海羽「……考えてみたら、時差であっち深夜だった……」
母親「なにやってるのよ」
海羽「ぶぅ……」
母親「夜ならよく見えるんじゃない? 星」
海羽「うん。信じて待つことにするよ」
終わり。