■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
健太(けんた)
陽介(ようすけ)
真人(まさと)
母親
父親
■台本
健太「……はあ、はあ、はあ」
母親「大丈夫、健太? 風邪?」
健太「そうかも……」
母親「じゃあ、今日は休みって学校に連絡入れておくわね」
健太「うん……」
父親の声「おーい、朝飯は? 会社遅刻するぞー」
母親「はーい。今、できるところだから! 健太は食欲ある?」
健太「ない……」
母親「そう。おかゆ作っておくから、お腹すいたら食べない」
健太「うん」
母親が健太の部屋から出ていく。
母親の声「お父さん、これ壊れちゃったから帰りに買って来てちょうだ」
父親の声「ん? ああ、わかった」
健太「……はあ、はあ、はあ」
場面転換。
健太「(寝息)」
インターフォンが鳴る。
健太「……ん? 誰だろ?」
起き上がる。
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
陽介「よお、健太。学校終わったから、見舞いにきてやったぞ」
健太「おお、陽介」
真人「健ちゃんが風邪って聞いて、ビックリしたよ」
健太「真人は大げさだな。俺だって風邪くらい引くよ」
陽介「で、体調はどうなんだ?」
健太「うん、寝たら大分よくなったよ。入れよ、ジュースくらいは出すからさ」
陽介・真人「お邪魔しまーす」
場面転換。
ごくごくとジュースを飲む音。
陽介「ぷはー! うめえ!」
健太「おっさん臭いぞ」
真人「あれ? 健ちゃん。おばさんは?」
健太「ああ、うち、共働きなんだよ。帰って来るのは夜かな」
陽介「寂しくねーの?」
健太「もう慣れたよ」
真人「でも……健ちゃんのおばさんも、今日くらいはお仕事休めばいいのに」
健太「なんでだよ?」
真人「だって、家に健ちゃん一人って……。なんかあったら、どうするのさ?」
健太「なんもねーって。真人は大げさなんだから」
真人「そんなことないよ! 特に今は何があるかわからないんだよ!」
健太「そんなことないだろ」
真人「僕、前にテレビで見たんだ。病気になって2時間くらいで症状が悪化して、死んじゃった人」
健太「いや、だから、大げさだって。ただの風邪だよ、風邪」
陽介「病院には行ったのか?」
健太「いや」
真人「じゃあ、風邪かどうかなんてわかんないじゃん! 凄い病気かもよ!」
健太「いやいやいや……」
陽介「用心にこしたことはないぞ。それに、お前、さっきから顔赤いぞ」
健太「え?」
真人「ホントだ。赤い赤い! 熱あるんじゃないの? 熱は測った?」
健太「朝、測った……はず」
陽介「何度だったんだ?」
健太「……あれ? 何度だっけ?」
真人「朝のなんてアテにならないよ。今、測った方がいいって。体温計はどこ?」
健太「そこの戸棚。2段目」
真人が戸棚をガサガサする音。
真人「あった。はい、測ってみて」
健太「ったく、大げさなんだから」
暗転。
ピピピと音が鳴る。
陽介「どうだ?」
健太「ああ……えっと……え?」
健太「貸して! ……ええー! 41度だ!」
陽介「はああ? おま、41度って激やばだろ!」
健太「いや、大丈夫だって……」
真人「大丈夫じゃないよ! 早く横になって!」
健太「お、おお……」
場面転換。
陽介「濡れタオルだ」
健太「サンキュー。……ああ、冷たくて気持ちいいな」
真人「ねえ、健ちゃん、病院に連れてった方がいいんじゃない?」
陽介「けど、金もねえし……。健太、保険証は?」
健太「母さんが持ってる」
真人「じゃあ、早くおばさんを呼び戻そうよ!」
健太「だ、大丈夫だって……。もう一回、測ろうぜ。さっきのはなんかの間違いだよ」
場面転換。
ピピピピという音。
真人「……45度」
陽介「ヤバい! ヤバい! ヤバい! これ、絶対ヤバい奴だって!」
健太「はあ……はあ……はあ。なんか、急に熱くなってきた」
真人「健ちゃん! おばさんの携帯の番号は? 戻ってきてもらおうよ!」
健太「はあ、はあ、はあ……。俺の携帯に……入ってる……」
真人「えっと……これだね?」
プッシュ音とコール音が続く。
そして――
アナウンス「現在、電話に出ることができません。ピーっという」
真人「もう! 留守番電話だよ!」
健太「母さん……仕事中は携帯出れないって言ってたな……」
陽介「ヤバい! どうする?」
健太「はあ、はあ、はあ……」
真人「健ちゃん! しっかりして!」
陽介「薬だ! 薬を飲んだ方がいいって!」
真人「でも、なんの薬がいいの?」
陽介「とりあえず、全部飲ませよう。どれかは効くはずだって」
真人「そ、そうだね……」
健太「陽介……」
陽介「なんだ?」
健太「もし、俺が死んだら……香織ちゃんに好きだったって伝えてくれ」
陽介「バカな事言うなよ! そんなの、自分で言えよ!」
真人「そうだよ!」
健太「自分のことだから、わかるんだ。俺、もう長くないって」
陽介「バカ言ってんじゃねーぞ! 死ぬなんて許さねーからな!」
健太「真人……。お前は俺がいないとイジメられるんだから……。俺がいなくなったら、ちゃんと体鍛えろよ」
真人「わかった! わかったから、いなくなるなんて言わないで!」
健太「陽介……。真人を頼んだぞ……」
陽介「健太―!」
真人「健ちゃーん!」
ガチャリとドアが開く。
父親「おお、陽介くんに真人くん、いらっしゃい」
陽介「おじさん! 健太が! 健太が!」
父親「ん?」
真人「さっき測ったら45度で!」
父親「ああ、その体温計、壊れてるんだよ」
陽介「へ?」
父親「健太、新しいの買ってきたぞ。念のため、これで測ってみろ」
場面転換。
ピピピという音。
父親「36度。平熱だな」
健太「……」
陽介「……」
真人「……」
ガバッと起き上がる健太。
健太「ふっかつ!」
陽介「……帰るか」
真人「……そうだね」
終わり。