■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
ディーノ
ザイン
ルナ
その他
■台本
ディーノ「止めろ! こんなことしたって、何にもならないじゃないか!」
男1「黙れ! なら、俺の……この俺の怒りはどうなる!? 息子の魂は浮かばれない!」
ディーノ「全部、俺が受け止める!」
男1「ふざけるなー!」
場面転換。
ディーノ「うう……」
ザイン「よお、ディーノ。こりゃまた、こっぴどくやられたな」
ディーノ「店主さんは?」
ザイン「お前の希望通り、山奥に避難させておいた。さすがに見つけられんだろ」
ディーノ「ありがとう、ザイン」
ザイン「けどよぉ。こんなことしてなんの意味があるんだ?」
ディーノ「……」
ザイン「あの男の気持ちはわかる。騙されて息子が死ぬことになったんだ。それに、あの店主は誰がどう見たって、悪人だ。そんな奴を助けたからってどうなる? あの男に復讐させてやったほうがよかったんじゃないか?」
ディーノ「店主さんは今回のことで反省して、心を入れ替えると言ってくれた。復習なんかで死ぬべきじゃないよ。それに、あの人だって、復讐で店主さんを殺したところで、一時的には気が済むかもしれないけど……やっぱり、心のどこかに罪の気持ちを持ち続けることになる。だから、復讐なんてするべきじゃないんだ」
ザイン「偽善だな」
ディーノ「偽善でも……それでも、俺は止めたかったんだ」
ザイン「はいはい。お前の頑固なところはわかってるよ。しょうがないから、最後まで付き合ってやる」
ディーノ「ありがとう、ザイン」
場面転換。
兵士たちの怒号が鳴り響いている。
ルナ「ディーノ。どうするの? 始まっちゃったよ、戦争……」
ディーノ「……それでも、俺は諦めたくない。ルナは戦線から離脱してくれ」
ルナ「いやよ、そんなの! 私だって、最後まで一緒に!」
ザイン「はいはい、ルナちゃんは大人しくお留守番ね。さすがに二つの軍が戦ってる中で、ルナちゃんを守り切れる自信はないからさ」
ルナ「でも! ……死ぬときは一緒です」
ザイン「だいじょーぶ。ディーノは死なせないって。俺が保証する」
ルナ「ザインさん」
ザイン「よし、それじゃ行こうか。……けど、いいのか、ディーノ。今回の戦いは、仮に止めることができたとしても、俺たちの仲間も相当の数が犠牲になる。それでも、止めたいんだな?」
ディーノ「俺は……戦いの無い世界を作りたい。途方の無い夢だっていうのはわかってる。叶うはずがないってことも……。それでも、諦めたくないんだ」
ザイン「ったく、お前はブレないな。ま、そんなお前だからこそ、あれだけの奴らがついてきたんだろうけど」
ディーノ「……すまない」
ザイン「俺達はお前の夢にかけたんだ。死んで文句をいう奴はいないさ」
ディーノ「ありがとう。じゃあ、行こう!」
ルナ「絶対、戻って来てね」
ディーノ「ああ……。待っててくれ」
場面転換。
戦場。
周りは激戦を繰り返している。
ディーノ「止めてくれ! こんな戦いは意味がない! 剣を収めてくれ」
男2「うおおおお!」
ディーノ「くっ!」
男2「うっ!」
ドンと、剣の腹で殴ることで、男2を気絶させる。
ディーノ「はあ、はあ、はあ……」
ザイン「ディーノ。こんなところで立ち止まるな。長引けば長引くほど、どちらも痕に引けなくなる」
ディーノ「ああ……」
ザイン「いいか、みんな。絶対に殺すなよ! 剣を向けられても、だ」
男3「おう!」
場面転換。
戦場。戦いが激化する。
ディーノ「この戦いは、なんのメリットもない! この飢饉は相手だって同じだ! 相手だって、ギリギリの中、戦ってるんだ。例え、勝ったところで得るものなんかない!」
男5「黙れ! もう、引けないんだ! ……戦いはもう始まってしまった。……兵士たちはもう、一心不乱状態になっている。もう、命令も耳に届かない……」
ザイン「くそ。それでも、止めるように言えよ! ダメ元でもよ」
男5「……もうやっている」
ディーノ「え?」
男5「お前らの話は耳に届いている。国王も、この戦いには疑問を持っていた。だが、もう……止まらないんだ」
ディーノ「くそっ!」
ディーノが走り出す。
ザイン「おい、ディーノ、待て!」
場面転換。
激化する戦場。
ディーノ「止めてくれ! もういいんだ! 戦わなくたっていいんだ!」
戦場は変わらない。
ディーノ「頼む! やめてくれー!」
ザイン「……ディーノ」
ディーノ「頼む!」
そのとき、ポツリと雨が落ちてくる。
ザイン「……雨?」
ザーッと雨が降って来る。
それと同時に戦いが収まっていく。
ディーノ「両軍、聞いてくれ! もう、戦いは終わりなんだ!」
戦場が収まっていく。
場面転換。
ザイン「ふう、まさか、本当に戦争を止めちまうとはな」
ルナ「さすが、ディーノね」
ザイン「まあ、偶然だったけどな」
ルナ「違うわ、ザイン。奇跡、よ」
ザイン「……そうだな。あいつなら、これからも奇跡を起こし続けるだろうな」
ルナ「ありがとね、ザイン。ディーノを守ってくれて」
ザイン「あいつは死んじゃいけないんだよ」
ルナ「……」
ザイン「確かに、この世から争いをなくすなんて夢は、叶うことはない。叶わない理想だ。……雨上がりの空に架かる虹のように、実態がない夢そのものだ。けど、人は虹を見て綺麗だと思う。七色に光る橋に見惚れる。俺は、あいつの夢に見惚れてるんだ。どこまでいけるか見てみたい」
ルナ「うん……」
ザイン「これからも、信じていこう。俺たちの虹に」
終わり。