■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
義純(よしずみ)
木下(きのした)
田岡(たおか)
山下(やました)
本村(もとむら)
佐藤(さとう)
女性
■台本
義純(N)「人には必ず隠しているものがある。些細な事や絶対にバレなくないことなど、人に寄って様々だ。もちろん、俺にだって秘密にしていることはある。だが、俺は人の秘密を知るということに、執着してしまう。人の秘密を知るということに、何事にも代えがたい快感を覚えてしまうのだ」
場面転換。
木下「課長、報告書の確認、お願いします」
義純「ああ。どれどれ……」
書類をめくる音。
木下「……どうでしょう?」
義純「なあ、木下。あまりこういうことに口を出すのはどうかと思うが……ああいうのは感心しないな」
木下「え!? な、なんのことでしょうか?」
義純「……昨日のことだよ」
木下「み、見てたんですか!?」
義純「まあ、偶然な……」
木下「いや、違うんですよ。あの人はただの同級生で、この前偶然会って、それで今度飯でも食おうってことになって、だからその……」
義純「他言はするつもりはないが、会社に迷惑になるようなことにはするなよ」
木下「は、はい……」
義純(N)「ふふふ。まんまと引っかかったな。昨日は珍しく、強引に早く帰っていたから何かあると思ったが……。これは十中八九、不倫だな。あとは木下が不審な行動を取る日に後をつければ、証拠の写真を撮れるだろう。まあ、それを使って何かするつもりはない。あくまで秘密を暴いたという証拠があれば、俺は満足なんだ」
場面転換。
女性1「あの、課長……。部署内の経費の金額が合わなくて……」
義純「またか……。これは誰か、盗んでるってことで間違いないな。で、どのくらいだ?」
女性1「今月は5000円ほどです」
義純「徐々に金額が上がって来てるな。早めに手を打っておかないと、エスカレートするぞ。……わかった。何とかしておく」
女性1「よろしくお願いします」
場面転換。
義純「やあ、田岡君。そのストラップ可愛いね」
田岡「そうなんですよ。つい、衝動買いしちゃいました」
義純「へー。それより、誰かが部署内の経費を使い込んでるみたいなんだよ」
田岡「ええ? そうなんですか?」
義純「……心当たりないか?」
田岡「いえ、特には」
義純「そうか」
場面転換。
義純「おお、山下。今日のお昼は豪勢だな」
山下「いやー、なんかスゲー腹減っちゃって」
義純「それはそうと、誰かが経費を使い込んでるみたいなんだ」
山下「ええー。まさか、俺を疑ってます? 経費で昼飯買ったって思ったとかですか?」
義純「いやいや。誰か心当たりないかなって」
山下「んー。経費は誰でも使えますからね―」
義純「そうか。ありがとう」
場面転換。
義純「あ、本村さん。カバン新しくしたんだね」
本村「はい。これ、春の新作なんですよ」
義純「へー。それよりさ、部署内に経費を使い込んでる人間がいるんだけどさ」
本村「っ! 私が使い込んでるっていうんですか!? 失礼だと思います!」
義純「……」
本村「証拠があるんですか!?」
義純「なあ、本村さん。証拠もなく、私がこんなことを言うと思うかい?」
本村「え?」
義純「今はまだ少額だから、そこまで問題を大きくしようとは思っていない」
本村「……」
義純「だが、泥棒は泥棒だ。それに一回だけじゃない。本人に反省の色が無ければ、上に報告するしかない。……そうなれば」
本村「クビ……ですか?」
義純「今なら、まだ私の中で収められる。反省さえしてくれればな」
本村「……申し訳、ありませんでした」
義純(N)「人の秘密を探るなんて、本当に簡単だ。みんな分かりやす過ぎる。これほど簡単だと、張り合いがない。みんな、秘密のことはもっと、ちゃんと隠して欲しい物だ。私なんて、入社以来、ずっと秘密にしていることがあるが、バレたことなんて一度もない。誰か、隠し事が上手い奴はいないのだろうか……」
場面転換。
佐藤「今日から入社となります、佐藤です! よろしくお願いいたします!」
義純「ああ。よろしく頼むぞ」
佐藤「はい! 頑張ります!」
義純(N)「裏表の無さそうな新人だ。これなら、隠し事がある場合はすぐにわかりそうだな。これでは探る気も起きない……」
佐藤が小声で、山下に話しかける。
佐藤「あの……山下先輩」
山下「ん?」
佐藤「課長って、カツラ……ですよね?」
山下「バカ! 言うなよ! みんな知ってて気づかないフリしてんだから!」
佐藤「ええっ! そうなんですか!? ……すみません」
義純「……」
終わり。