【声劇台本】踏み外した一歩

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■概要
人数:4人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■台本
大悟(だいご)
大悟(だいご)小学生
刑事
母親

■台本

大悟「……」

刑事「万引き、カツアゲ、暴行、無銭飲……。犯罪のオンパレードだな、大悟」

大悟「……」

刑事「少年院に行くか?」

大悟「勝手にしろよ」

刑事「はあ……。ったく、なんなんだ、お前は。万引きも悪質な噂がある店からだけだし、カツアゲも、カツアゲしている奴らを狙っているし、暴行もチンピラ相手だけだ」

大悟「……」

刑事「まあ、無銭飲食だけは見境がないみたいだが」

大悟「金がねえんだから、仕方ねえだろ」

刑事「あのなあ。金がないなら、バイトでもなんでもして稼げばいいだろ。高校生なんだから、バイトくらいできるだろ」

大悟「こんな俺を雇う奴なんていねえよ」

刑事「……お前んちが貧乏なのは知ってる。だが、お前の母さんは女手一つで立派に育ててくれたじゃないか。そんな母さんに申し訳がないと思わないのか?」

大悟「思わねえよ」

刑事「母さん、泣いてるぞ」

大悟「俺がこんなんになったのは、あいつのせいだ。これはあいつへの復讐なんだ」

刑事「……一体、何があったんだ?」

大悟「……あれは俺が小学生のときだった」

場面転換。

回想。

大悟「ただいまー」

母親「おかえりなさい。……それじゃ、通信簿見せて。貰って来てるでしょ?」

大悟「うっ! うん……」

カバンから通信簿を出して渡す。

母親「はあ……。ねえ、大悟。こんなんじゃ、あなたの将来は真っ暗よ。しっかり勉強しなさいって、いつも言ってるでしょ。将来も貧乏のままでいいの?」

大悟「だって……。勉強嫌いなんだもん」

母親「はあ……。しょうがないわね。じゃあ、こうしよっか。もし、次の通信簿で平均4以上だったら、大悟の誕生日の晩御飯はステーキにしてあげる」

大悟「ホント!?」

母親「うん、約束」

大悟「ホントのホント!? 絶対だよ!」

母親「うん。お母さん、嘘言わないよ」

大悟「よーし! 僕、頑張る!」

場面転換。

勢いよくドアが開く。

大悟「お母さん。テストで100点取ったよ!」

母親「わあ、すごいじゃない! この調子で頑張って!」

大悟「うん! ステーキのために、僕、頑張るからね!」

場面転換。

大悟「お母さん。僕、体育も頑張ってるんだ。この調子なら、通信簿、期待できるぞって、先生が言ってたよ」

母親「あら、すごいじゃない! この調子で頑張ってね!」

大悟「うん! ステーキの為に、僕、頑張るからね!」

場面転換。

勢いよく、ドアが開く。

大悟「お母さん! 見て! 見て! 5がいっぱい! それに他も4より上だよ!」

母親「あら、すごいじゃない!」

大悟「えへへへ。これで明日の僕の誕生日はステーキだね」

母親「うん。晩御飯はステーキよ」

大悟「やったぁ!」

場面転換。

大悟「ねえ、お母さん。……これ、なに?」

母親「納豆と、お味噌汁と生卵ね」

大悟「……ステーキじゃないんだけど」

母親「そうね」

大悟「なんで!? 晩御飯はステーキって約束してくれたよね? 約束破ったの?」

母親「お母さんが約束破るわけないでしょ。晩御飯はステーキよ」

大悟「でも! ステーキじゃないよ!」

母親「そうよ。だって、これ、夕御飯だもの」

大悟「……」

場面転換。

回想終わり。

大悟「……」

刑事「……あー、その、なんだ。色々、辛かったんだな。帰って良いぞ」

大悟「うっす……」

大悟が部屋から出ていく。

刑事「……まあ、そりゃ、グレるわな」

終わり。

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