■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
智樹(ともき)
飛鳥(あすか)
その他
■台本
ツバメの鳴き声。
智樹(N)「渡り鳥。定期的に長い距離を移動する鳥のこと。……僕はツバメを見るたびに思い出す……」
智樹「や、やめてよー! 返して!」
高木「やーい、取り返してみろよ、智樹」
智樹「返してってばー!」
高木「あははは!」
飛鳥「おい、やめろよ!」
高木「あん? ……転校生は黙ってろよ。それとも、お前のランドセルと交換するか?」
飛鳥「おらあ!」
飛鳥が高木の腹を蹴る。
高木「うおー!」
高木が倒れる。
飛鳥がランドセルを拾あげ、智樹に渡す。
飛鳥「……ほら、ランドセル」
智樹「え?」
飛鳥「じゃあな。今度は取られるなよ」
飛鳥が歩き出す。
智樹「あっ……」
場面転換。
学校の廊下。
智樹「あ、あの、飛鳥くん」
飛鳥「ん? ……ああ、智樹、だっけか。なに?」
智樹「昨日はありがとう。……お礼、言えなかったから」
飛鳥「はは。律儀だな。別にいいよ。それより、俺に近づかない方が良いぞ」
智樹「え? なんで?」
飛鳥「なんでも。とにかく、もう話しかけてくるなよ」
智樹「……」
飛鳥が歩き去っていく。
場面転換。
教室内がざわざわしている。
高木「くくく。ざまあみろ」
女の子「ひどい。机に落書きするなんて」
飛鳥「……」
智樹「……飛鳥くん」
飛鳥「はあ……。くだらねー。こんなことして面白いのか? てか、おいおい。漢字間違ってるぞ。馬鹿なのは書いた奴だろ」
教室がドッと笑いに包まれる。
高木「くっ……」
場面転換。
高木「おらああ!」
飛鳥「いてっ!」
高木が飛鳥を殴る。
高木「てめえ。許さねえからな」
飛鳥「いや、別にお前の頭が悪いのは、俺のせいじゃないだろ」
高木「ちっ! 生意気なんだよ!」
高木が飛鳥を殴る。
飛鳥「……あのさあ。こんなことして、後でめちゃくちゃ怒られるの、自分だってわかんないわけ?」
高木「お前がチクらなければいいだけだろ? 言わないって言うまで殴ってやるよ」
飛鳥「……」
智樹「や、やめなよ!」
高木「ああ? なんだよ、智樹か。お前は黙ってろよ。それとも一緒に殴ってほしいのか?」
智樹「今、先生呼んできたから、もうすぐ来るよ」
高木「ちっ! ……智樹、お前も後で覚えてけよ」
高木が歩き去っていく。
飛鳥「いてて……」
智樹「大丈夫? 飛鳥くん」
飛鳥「智樹、お前、なかなか頭が回るな」
智樹「え?」
飛鳥「嘘なんだろ? 先生呼んできたって」
智樹「なんでわかったの?」
飛鳥「先生呼んできたなら、先生と一緒に来るはずだろ」
智樹「あっ……」
飛鳥「とにかく、助かった。サンキューな。これで貸し借り無しだ。次からは俺が何かされてても、無視しろよ」
智樹「……どうして?」
飛鳥「……お前のためだ」
智樹「僕の?」
飛鳥「じゃあな」
飛鳥が歩き去っていく。
智樹「……」
場面転換。
教室内。
智樹「飛鳥くん、給食、一緒に食べよ!」
飛鳥「……お前の頭はニワトリなのか?」
智樹「飛鳥くんに話しかけない方がいいのは、僕のためなんでしょ? でも、僕は話しかけたいから、話しかけたんだ」
飛鳥「はあ……。知らないぞ」
智樹「うん!」
場面転換。
飛鳥「すげーな。裏山にこんな場所があるのか」
智樹「えへへ。僕の秘密の場所なんだ。嫌なことがあったら、ここに隠れるの」
飛鳥「いいのか? 秘密の場所を俺になんか教えて」
智樹「うん。飛鳥くんだから教えた」
飛鳥「……サンキューな」
智樹「当然だよ。友達なんだから」
飛鳥「……」
智樹「あーあ、それにしても、来年はクラス替えがなければいいのに」
飛鳥「え? なんでだよ? ワンチャン、あいつと違うクラスになれるかもしれないだろ」
智樹「それより、飛鳥くんと違うクラスになる方が嫌だよ」
飛鳥「……なんでだよ?」
智樹「ほら、来年、修学旅行でしょ? 修学旅行は一緒の班になりたいなって」
飛鳥「……」
智樹「飛鳥くん? どうしたの?」
飛鳥「醜いアヒルの子って絵本あるだろ?」
智樹「え? う、うん」
飛鳥「アヒルの群れに、実は白鳥がいたって話なんだけどさ。あれ、最後の白鳥の群れに帰っていくだろ?」
智樹「……うん」
飛鳥「本当に友達にはなれなかったのかな?」
智樹「え?」
飛鳥「だってさ、同じ鳥なんだぜ? まあ、種類は違うけどさ」
智樹「うーん、どういうこと?」
飛鳥「……なんでもない。なんか俺達に似てるなって思って」
智樹「……飛鳥くんは白鳥ってこと?」
飛鳥「いや、俺は白鳥じゃなくて……渡り鳥だな」
場面転換。
教師「飛鳥くんは、両親の都合で転校していきました」
智樹「……え?」
教師「みんなへの挨拶ができなかったことに……」
智樹(N)「知らなかった……。そんなこと、一言も言ってくれなかった」
場面転換。
秘密基地。
智樹「うわーーーん!」
智樹(N)「きっと、飛鳥くんは全部知っていたんだ。自分はまたすぐに転校するって。だから、そんな自分に近づくなって言ったんだ……。友達になれば辛いからって……」
智樹「うわーーーん!」
智樹(N)「……それはきっと飛鳥くんだって同じだったはず。友達ができても、すぐにお別れになる。それを知っていたから友達を作ろうとしなかったんだ……」
智樹「ぐすっ……」
智樹(N)「……でも、飛鳥くんと友達になったことは後悔してない。友達になれてよかったって思う。だから、いつか絶対に言うんだ。君と友達になってよかったって、ずっと友達だったって。……渡り鳥のように移動する飛鳥くんを見つけて」
終わり。