■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
啓二(けいじ)
翼(つばさ)
男性(2人)
女性(2人)
■台本
啓二(N)「俺は観察眼に自信がある。推理ゲームでも、一発で解くことができるし、恋愛ゲームでも一発で狙った女を落とすことができる。俺の目にかかれば、どんな秘密だって一瞬で暴くことができるんだ」
先生「はい、それじゃ、転校生を紹介します。じゃあ、真島くん、自己紹介して」
翼「はい。真島翼です。これから、よろしくお願いします」
女子「うわー、綺麗な顔」
男子「こんな男、ホントにいるんだな。芸能人みたいだな」
啓二「……」
啓二(N)「俺は、このとき、一発で見破った。……翼には大きな秘密がある、と」
場面転換。
啓二「やあ、翼くん。俺、啓二っていうんだ、よろしく」
翼「うん、よろしく、啓二くん」
啓二「あのさ、翼くんって、前は男子校だったんだよね?」
翼「うん、そうだよ」
啓二「……なんで、男子校を選んだの?」
翼「え? 近かったから……かな。それがどかした?」
啓二「……いや、なんでもないよ。いきなり質問攻めにしてごめん。代わりにってわけじゃないけど、もし、なにかわからないことがあったら、気軽に聞いてよ」
翼「うん、ありがとう、啓二くん」
啓二「……」
場面転換。
男子2「なあ、翼、せっかくの昼休みなんだからサッカーでもやろうぜ」
翼「あー、いや、えっと……」
啓二「翼くんは身体が弱いから、あんまり運動はできないんだよ」
男子2「え? そうなのか、ごめんな」
翼「う、ううん。気にしないで」
男子2が言ってしまう。
翼「……啓二くん、ありがとう。僕、運動は苦手でさ……」
啓二「……やっぱり」
翼「え?」
啓二「あ、いや、なんでもない。やりたくないものはやらなくていいさ」
翼「啓二くんが断ってくれて、よかったよ」
啓二「それにしても……翼くんのタブレットを入れる箱、随分と……なんていうか、可愛い感じなんだね」
翼「あっ! いや、これはその……なんていうか……僕、その、可愛らしいものが好きでさ」
啓二「……」
翼「変、かな。やっぱり」
啓二「……いや、そんなことないさ。人の好きなものなんて、それぞれなんだから。変に恥ずかしがったりしないで、堂々としてればいい」
翼「……」
啓二「どうした?」
翼「そんなこと言われたの、初めてだよ。ありがとう、嬉しい」
啓二「お、おう……」
翼「あ、あとさ、僕のことは翼くんじゃなくて、翼でいいよ」
啓二「じゃあ、俺のことは啓二でいいよ」
啓二(N)「それからというもの、俺は翼と一緒にいることが多くなった。そのことで、俺の疑惑は確信へと変わった。翼は……女だ。アニメやゲームでよくあるだろう。女が男を装うという奴だ。理由は前の学校で男子校に入るためだ。そのときに男として入学したから、それを貫くしかなかったんだろう」
場面転換。
翼と啓二が歩いている。
翼「ふふふ。啓二って面白いね」
啓二「そうか?」
翼「うん、なんか、普通の人と違うって言うか」
啓二「お前に言われたくないな」
翼「えー、ひどい」
啓二「ははは。それで、翼の方はどうなんだ? どんなタイプが好きなんだ?」
翼「そうだなぁ……。啓二みたいなタイプがいいかな」
啓二「え?」
翼「あ、いや、変な風にとらえないでよ! なんていうかさ、僕って優柔不断で気が弱いでしょ? 啓二みたいに引っ張ってくれる人が良いなって、思ってさ」
啓二「ふーん。まあ、俺も、翼みたいな奴の方が一緒にいて楽しいな」
翼「あはは……。啓二は変わってるよ、ホントに」
啓二(N)「……もしかすると、俺は翼のことを好きになっているのかもしれない。……翼が女でよかった。それにしても、いち早く見破ってよかったな。おかげで、他の男を出し抜いて翼と仲良くなれた」
そのとき、ぽつぽつと雨が降って来る。
啓二「やべ、降ってきた!」
翼「どうしよう? 傘持ってないや」
啓二「一旦、俺の家に来いよ。近くだからさ」
翼「うん」
二人が雨の中、走って行く。
場面転換。
啓二「ほら、バスタオル」
翼「ありがと」
啓二「くそ、天気予報じゃ雨なんて言ってなかったのにな」
翼「……そういえば、啓二のお母さんは?」
啓二「ああ、うちは共働きなんだよ。だから、夜まで家には誰も……」
翼「……ん? なに?」
啓二「いや、な、な、なんでもねえ」
啓二(N)「ヤバいヤバいヤバい! 今、家の中には俺と翼の二人だけだ。……くそ、意識しちまう……。落ち着け、今まで気づき上げた信頼を不意にするつもりか!」
翼「ねえ、啓二」
啓二「ん? なんだ?」
翼「シャワー、借りていい?」
啓二「ぶっ!」
翼「え? なに、どうしたの?」
啓二「な、なんで、急に……」
翼「ほら、結構、雨に濡れたじゃない? 僕、体弱いから、風邪ひいちゃうなって」
啓二「……」
翼「あ、ごめん。啓二が嫌なら我慢するけど」
啓二「いやいやいや。お前がいいなら、お、俺はかまわないけど」
翼「そう? じゃあ、借りるね。ありがとう」
啓二「……」
場面転換。
シャワーの音。
啓二「ヤバい! 嘘だろ。さすがに理性が持たないぞ! どうする? 寝たふりとかするのも不自然だよな……。出かけるのも変だし……」
翼「ねえ、啓二」
啓二「どきっ!」
翼「Tシャツかなにか、貸してくれない? 服が渇くまででいいから」
啓二「べ、別にいいけど……って、あれ?」
翼「ん?」
啓二「……お前、男だったのか?」
翼「何言ってんの?」
終わり。