【フリー台本】町の風景

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■概要
人数:2人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
徹也(てつや)
亮(りょう)

■台本

ドンとサッカーボールを蹴る音。

そして、ゴールにボールが突き刺さり、審判の笛が鳴り響く。

歓声が巻き起こる。

徹也「ゴーーーール!」

亮「やったな、徹也! 全国だ! 全国だぞ!」

徹也「バカ、亮! 全国行けるくらいで喜ぶな! 全国制覇が俺達の夢だろ?」

亮「あ、ああ。そうだったな」

徹也「見てろよ! 俺達の名前を全国に轟かせてやる!」

場面転換。

高台。

徹也「……」

そこに亮がやってくる。

亮「よお、徹也」

徹也「……亮。久しぶりだな」

亮「おいおい。帰ってきてるなら、連絡くらいよこせよ。それとも何か? プロになっちまったら、高校のチームメンバーなんか眼中にない、ってか?」

徹也「……からかうなよ。そんなんじゃないって」

亮「……思ったより、凹んでやがるな」

徹也「……」

亮「お前は、俺たちの代表みたいなもんなんだ。しっかりしてくれよ」

徹也「なあ、亮。覚えてるか? 昔はここから町を見下ろして夢を語ったよな」

亮「ああ。お前は全国制覇、ばっかり言ってたよな」

徹也「……こうやってさ、町を見下ろしてると、町で一番になった気がしたんだ」

亮「実際、一番だったんじゃないか? この町の人間でプロに行ったのはお前だけだしさ」

徹也「……俺さ、全国大会進出を決めた時、ここに来て、こうやって町を見下ろしたんだよ。いつか、全国も、こうやって見下ろしてやるって。俺が一番になるって……」

亮「……」

徹也「それが、一回戦で、6対1のボロ負けだ」

亮「相手は優勝候補だったんだ。しょうがないさ」

徹也「……なんで、お前じゃなくて、俺だったんだろうな?」

亮「俺は、スカウトの目は確かだったと思うぜ」

徹也「……小さい男だよ、俺は。この町を見下ろしながら、町で一番になったって調子づいていたんだ」

亮「……」

徹也「当たり前だよな。この町しか見てなかった……見えてなかったんだ。小さな町で一番なだけ。この町の風景は俺そのものだよ」

亮「なら、引き上げてくれよ」

徹也「え?」

亮「お前が、日本で一番になればこの町が……この町の風景は日本一ってことになる」

徹也「……」

亮「諦めんな。代表落ちがなんだ。次があるだろ」

徹也「……亮」

亮「俺は……俺たちはこの町が好きだ。この町の代表がお前だからこそ、俺はプロを諦めることができた。お前は、この町の誇りだ」

徹也「……」

亮「大丈夫だ。お前ならやれる。お前なら、この風景を……この町を日本一の風景にできる。俺はそう信じてる」

徹也「……はあ。勝手だな。勝手に期待して、勝手に押し付けんじゃねえよ……」

亮「この町で一番になったお前が悪い」

徹也「ぷっ! なんだよ、それ」

亮「お前はこうやって、町を見下ろしてるくらいがいいんだよ。見上げるな。そのまま進め」

徹也「ったく。……しゃーねーな。俺がこの町を日本一にしてやるよ」

亮「ああ。そうすれば、この町で二番目の俺は、日本二位ってことになるからな」

徹也「いやいや、お前、もうこの町で二番目じゃねーだろ」

亮「はあ? なめんなよ。あれからも練習続けてるんだぞ」

徹也「だとしても、二番目はないだろ」

亮「お前な―、そういうところはいつまでたっても変わらねーな……」

徹也「あははははは」

終わり。

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