【フリー台本】拳で語り合う
- 2022.05.18
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
郁人(いくと)
由紀(ゆき)
昇平(しょうへい)
その他(男×3人)
■台本
郁人「うおおおおお!」
昇平「おらああああ!」
郁人と昇平が殴り合っている。
郁人「はあっ!」
昇平「ぐあっ!」
郁人のパンチが昇平の顔面に入り、昇平が倒れる。
昇平「く、くそ……」
郁人「はっはっは! 俺の勝ちだな、昇平」
昇平「郁人……。クソがてめえ……」
郁人「またいつでも来いよ。相手になってやる」
昇平「次は……次こそはてめえをボコボコにしてやるよ!」
郁人「ああ。楽しみにしてるぜ」
郁人が歩き出す。
郁人「待たせたな、由紀」
由紀「……はあ。あんたら、毎日、毎日、よく飽きないわね」
郁人と由紀が並んで歩く。
郁人「ばーか。真剣勝負が飽きるわけねーだろ」
由紀「……毎日、よく本気で殴り合えるわね。そんなに仲が悪いなら、会わないように工夫とかすれば?」
郁人「甘いな。別に昇平と仲が悪いわけじゃねーよ。むしろ、逆だ。俺とあいつは、お互いのことを知り尽くしてると言っていい」
由紀「うっそだぁ! あんたら、殴り合ってるとき以外、しゃべったことないじゃない」
郁人「だーかーら! 拳で語ってるんだよ。言葉よりも、ずっと伝わるぜ」
由紀「……ホントにぃ? 嘘くさいなぁ」
郁人「まあ、お前にはわからんさ」
由紀「ふーん。別にわからなくてもいいけどね」
場面転換。
由紀が走って来る。
由紀「郁人、大変!」
郁人「ん? どうした?」
由紀「昇平くんが、不良たちに囲まれてる」
郁人「どこだ? すぐに案内しろ!」
由紀「うん、こっち!」
場面転換。
不良1「おらあ!」
昇平「ぐっ!」
不良2「おらおら、さっきまでの威勢はどーしたよ? あ?」
昇平「くそが……」
不良1「おらあ!」
不良1が昇平を殴る。
そこに郁人が走って来る。
郁人「おらおらおら! てめえら! 大人数で卑怯だぞ!」
不良2「ああ? なんだてめえ?」
昇平「……郁人」
郁人「おらあ!」
不良2「ぐああ!」
乱闘が始まる。
場面転換。
不良1「くそ、覚えてろよ!」
不良たちが逃げていく。
郁人「けっ! おとといきやがれってんだ」
昇平「……郁人」
郁人「よお、昇平、危なかったな……」
ボコっと昇平が郁人を殴る。
郁人「いってぇ。なにすんだよ!」
昇平「舐めた真似しやがって。恩を売ったつもりか?」
郁人「別にそんなんじゃねーよ」
昇平「てめえに助けらるくらいなら、あいつらにぶっ殺された方がマシなんだよ!」
ズカズカと歩いて行ってしまう昇平。
郁人「……」
由紀「なんか、めちゃくちゃ怒ってたけど。助けたの、不味かったんじゃない?」
郁人「……いや、あれは照れ隠しだよ。ほら、そんなに簡単にライバル同士が手を組むなんて出来ないだろ?」
由紀「ホントにぃ? 本気で怒ってたよ、あれ」
郁人「……」
場面転換。
郁人と由紀が歩いている。
由紀「……あれから一週間以上、経つね」
郁人「……」
由紀「……謝りに行ったら?」
郁人「な、なんで、俺が謝らないといけないんだよ! 助けたんだぞ、俺は」
由紀「プライド、傷つけられたんじゃない? あんたには助けられたくなかったって言ってたし」
郁人「……いや、これは気まずいだけさ。ほら、俺が助けた方だろ? それなのに、あっちから喧嘩売るって、ちょっと気まずいと思わないか?」
由紀「んー。まあ、そうかもね……」
郁人「しゃーねー。今回は俺の方から行ってやるか。親友のためだ」
由紀「顔も見たくないって思われてたりして」
郁人「んなわけねーだろ。一週間も力を発散できてねーんだぞ。体がうずうずしてしょうがねーはずだ。俺にはわかる」
由紀「はいはい」
郁人「……ところで、あいつ、どこの学校だっけ?」
由紀「……そんなことも知らないの?」
郁人「……」
場面転換。
学校前。下校の生徒が歩いている。
郁人「……や、やっと見つけた」
由紀「……三週間かぁー。これは、もうストーカーと言ってもいいんじゃない?」
郁人「はあ? なんでだよ!? 別に昇平の後をつけたわけじゃねーぞ、俺は。単に、あいつの学校を調べるのに、色々頑張っただけだ」
由紀「うーん。十分ストーカーだと思うけど」
郁人「うっせー! とにかく、行くぞ!」
由紀「はいはい」
郁人「ふふふ。約一カ月ぶりの喧嘩かぁ。腕がなるぜ。きっと、あいつも同じだと思うぜ」
場面転換。
郁人と由紀が歩く音。
郁人「うーん。あいつ、いねーな。もう帰ったか?」
由紀「そうかも……あ、いた!」
郁人「どこだ!?」
由紀「ほら、あそこ」
場面転換。
昇平「ほんっと、むかつくぜ、郁人のやつはよぉ」
男子生徒「何考えてるんだろうな」
昇平「きっと、俺を助けて優越感に浸ってやがるんだよ。そういうところが、ホント、イラつくぜ」
男子生徒「けどさ、優越感で、わざわざ助けに来るかな? もしかして、昇のこと、友達だと思ってたりして」
昇平「やめろよ! なんで、あんな奴と」
男子生徒「ほら、よくあるじゃん。拳で語り合うってやつ? それで、昇ちゃんのこと、親友とか、思っちゃったんだよ」
昇平「……拳で語るって、全然、俺の気持ち伝わってねーじゃん。心底嫌いなのによぉ」
男子生徒「そういえば、最近、喧嘩売りに行ってないよな?」
昇平「ああ。最初はムカつく奴をぶっ飛ばしたくて喧嘩売ってたけどさ。前の件で、なんか頭冷えた。わざわざ、嫌いな奴の顔を見に行く方が馬鹿々々しいだろ?」
男子生徒「確かにそうだな」
場面転換。
郁人「……」
由紀「あー、えっと……。まあ、こ、こういうこともあるよ。元気出して、ね?」
郁人「お、俺を……慰めるなー!」
郁人が走って行ってしまう。
由紀「まあ、普通は殴り合って、理解できるわけないわよね……」
終わり。
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