■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
グレン
ダン
アレン
シーナ
■台本
グレン「エクスプロージョンスレイブ!」
轟音が響き渡る。
グレン「こんなもんかな」
ダン「相変わらずグレンの魔法はスゲーな。邪竜を一発だもんな」
グレン「まだまださ。それより、さっそく神殿に入って、お宝を確かめようぜ」
シーナ「あると良いわね。賢者の書」
グレン「今まで散々、裏切られたんだ。あまり期待はしないさ」
場面転換。
ペラペラとページをめくる音。
グレン「……」
ダン「どうだ?」
グレン「かなり上級な魔術書だな。知らない知識が結構書いてある」
ダン「じゃあ、その本は賢者の書ってことか?」
グレン「いや、違うな。内容はかなり近いものだと思うけど、なにより表紙が違う」
ダン「そうか……」
グレン「なんで、お前がガッカリした顔をするんだよ」
ダン「俺達はほぼ世界中を旅してきた。今回はかなり期待してたんだけどな」
グレン「確かに、これは賢者の書じゃなかった。けど、知らなかったとこが書かれてある時点で、俺にとっては十分お宝さ」
ダン「そうか。それならよかった」
グレン「ったく。賢者の書は旅のついでで良いって言っただろ。お前は魔王を倒すことだけ考えてろよ」
ダン「グレン。あんたには感謝してもしきれないほどの恩がある。あんたがいなければ、俺達はとっくに全滅してる」
グレン「俺を過大評価し過ぎだし、自分を過小評価し過ぎだ。俺がいなくても、十分やっていけるさ」
ダン「……グレンはどうして、そこまで賢者の書が欲しいんだ?」
グレン「ん? んー。どうして? どうしてか……。そうだな。あんまり考えたことなかった」
ダン「そうなのか?」
グレン「まあ、鍛冶屋が最高の剣を作りたいというのや、お前らが魔王を倒したいというような感覚と同じだ。魔導士なら、最高の魔導士……つまり賢者になりたい。そのためには賢者の書が必要なだけさ」
ダン「賢者の書がないと賢者に慣れないのか?」
グレン「どちらかというと、賢者の書を持ってる魔導士が賢者と言われるって感じだな」
ダン「ふーん。よくわからないけど、とにかく、凄い書物なんだな」
グレン「ああ。そう思って貰っていい」
ダン「けど、その賢者ってやつは、あんたよりも凄いってことだろ? なんか、想像つかないな」
グレン「俺なんて、まだまださ。ジジイにも勝てない」
ダン「ジジイ?」
グレン「俺の師匠だよ。アレンっていう名前なんだけど」
ダン「アレン……? アレン!? あの大魔導士のアレンか?」
グレン「そうそう。そのアレン」
ダン「あんたがスゲーわけだ。アレンの弟子だったのか」
グレン「弟子って言っても、あのジジイ、何にも教えてくれなかったぞ。ぼぼ独学みたいなもんだった」
ダン「そうなのか? 意外だな」
グレン「いや、ホント、あのクソジジイは酷い奴だったんだよ」
場面転換。
グレン「ブラスト!」
爆発音が響く。
グレン「よし、今のうち!」
アレス「グラビティ」
グレン「うおっ!」
ズンと過重され、倒れるグレン。
アレス「ほっほっ。まだまだじゃな、グレン」
グレン「くそー!」
アレス「大分、制御できるようになったが、まだまだ使い方がなっとらん」
グレン「……なあ、ジジイ」
アレン「ん? なんじゃ?」
グレン「少しだけでもいいから、賢者の書を見せてくれよ」
アレン「ほっほっ。今のお前が見たところで、チンプンカンプンじゃよ」
グレン「んなこと、わからねーだろ。見せてくれよ」
アレン「いいか、グレン。いつも言っとるじゃろ。読みたければ、ワシを倒せと。資格を持たんものは、触れることすらおこがましいことじゃよ」
グレン「……ジジイを倒せるわけね―じゃん」
アレン「なんじゃ? 諦めるのか? ほっほっほっ。良いぞ。諦めろ諦めろ。お前が賢者になるなんぞ無理じゃ」
グレン「……くそっ! 絶対にぶちのめして、賢者の書を奪い取ってやるからな!」
アレン「ほっほっ。楽しみにしておるぞ」
場面転換。
夜。静かな部屋の中を忍び足をしているグレン。
グレン「けっ! 別にジジイを倒さなくても、寝てる間に盗み見ればいいだけさ。……よし、これだな」
ビリビリと電撃が走る。
グレン「ぎゃあああああああ!」
アレン「ほっほっ。甘い甘い。こんな大事な物に何も仕掛けをしていないと思ったのか? 浅はかじゃのう」
グレン「くそー! 絶対にぶった押してやるからな!」
アレン「ほっほっ。楽しみじゃのう」
場面転換。
グレン「うおおおお! エクスプロージョンブラスト!」
アレン「ロバストガード」
グレン「グラビティエンド!」
アレン「ほっ!?」
グレン「そこだ! デマイズフレア!」
アレン「ほああああ!」
轟音が巻き起こり、アレンが倒れる。
グレン「はあ……はあ……はあ……勝った」
アレン「ほっほっ。負けたわい。成長したのう」
グレン「……じゃあ、賢者の書、見せてもらうぜ」
ペラペラとページをめくる音。
グレン「へ? な、なんだよ、これ……」
アレン「ほっほっ」
グレン「おい! ジジイ! なんだよこりゃ! 白紙じゃねーか」
アレン「グレンよ。世間ではワシをなんと呼んでおる?」
グレン「ん? ……大魔導士アレンだろ」
アレン「ワシが賢者の書を持っておれば、賢者アレンって呼ばれると思わんか?」
グレン「……っ! ジジイ! 騙しやがったな!」
アレン「ほっほっ。ワシを倒せんで、賢者になろうなど片腹痛いわ。グレン。お前はようやくスタートラインに立ったんじゃ。旅に出るがよい。賢者の書を探すんじゃ」
グレン「……本当に賢者の書なんかあるのか? 今度もデマじゃねーだろうな?」
アレン「ほっほっほ。あるぞ。それは間違いない」
グレン「なんでわかるんだよ?」
アレン「ほっほっほ。実は一度、ワシは賢者の書を見つけておる。で、表紙だけ複製したんじゃよ」
グレン「じゃあ、ジジイは賢者の書がある場所を知ってるってことか?」
アレン「ほっほっほ。知っとるよ」
グレン「教えてくれよ」
アレン「はあー。そんな考えでは賢者の書を持つ資格などないわ。自分で探すのじゃ」
グレン「バカ言うなよ。世界のどこにあるか分からない本を探せっていうのかよ? んなの無理に決まってるだろ」
アレン「なんじゃ? 諦めるのか? ほっほっほっ。良いぞ。諦めろ諦めろ。お前が賢者になるなんぞ無理じゃ」
グレン「くそー! ぜってー見つけてやるからな! 見てろよ」
アレン「ほっほ。楽しみにしておるぞ」
場面転換。
グレン「……ってわけさ」
ダン「……変わった人なんだな」
グレン「あのジジイの鼻を明かしてやるためにも、俺は絶対に賢者の書を見つけて見せる」
ダン(N)「この後、俺達は魔王を撃破することに成功した。だが、それでもまだ、グレンは賢者の書を見つけられていない。今でも賢者の書を見つけるために世界中を旅して、新しい魔法を発見しているらしい。そんなグレンのことを、世間ではこう呼んでいる。……賢者グレンと」
終わり。