■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
麻衣(まい)
創吾(そうご)
保科(ほしな)
教師
門倉(かどくら)
■台本
廊下を麻衣と創吾が並んで歩いている。
麻衣「……ううー。フラフラする」
創吾「なんで寝不足なんだよ。徹夜でゲームでもやってたのか?」
麻衣「違うわよ。悩み事があって、それで寝れなかったの」
創吾「悩み事? お前が?」
麻衣「そのせいで、全然寝れないのよ。不眠症よ、不眠症!」
創吾「その分、授業中寝てるから別にいいだろ」
麻衣「うわー。冷たい。少しは何に悩んでるか興味もちなさいよ」
創吾「どうせ、くだらない悩みだろ」
麻衣「恋ってなんなんだろう」
創吾「……は?」
麻衣「ほら、恋は青春っていうでしょ? そして私は今、青春まっさかり。なのに恋をしたことがないの。こんなの理不尽よ! あんた、何とかしなさいよ!」
創吾「……理不尽だな」
麻衣「あ、そうだ。保科先生に聞いてみようかな」
創吾「なんで、保科先生なんだ?」
麻衣「だって、保科先生は保健室の先生だから」
創吾「理由になってないぞ」
麻衣「ほら、恋って不治の病って言うでしょ? 病気のことなら、保健室の先生に聞けばわかるってわけよ」
創吾「いや、保健室の先生は医者じゃないぞ。大体、不治の病っていうのは比喩で……」
麻衣「よーし、そうと決まればさっそく行くわよ!」
創吾「……俺を巻き込むなよ」
場面転換。
保科「なるほどね。それで私のところに」
麻衣「はい! なので、恋って何か、教えてください」
創吾「先生。本気にしなくていいですから」
保科「くすっ。いいじゃない。可愛い悩みで。……そうね。口で説明するよりも、実際に恋してみればいいんじゃないかしら」
麻衣「実際に? どうやって恋するんですか?」
保科「そうねぇ。するというよりは、恋は落ちるものだから」
麻衣「落ちる!? じゃあ、とりあえず2階からダイブすればいいですか?」
創吾「それだと恋じゃなくて、地獄に落ちることになるな」
保科「いい? 恋っていうのは、とっても衝撃的なものなの。それはまるで、電気が走ったような感覚がするのよ」
麻衣「……電気」
場面転換。
学校のチャイム。
門倉「ごめんね。実験道具の準備、手伝って貰っちゃって」
麻衣「いいんですよ、門倉先生。次のテストの赤点を見逃してくれれば」
門倉「あらあら。ちゃっかりしてるわね」
創吾「……なんで、俺まで」
カチャカチャと実験道具を動かす音。
門倉「あ、それ気を付けてね」
麻衣「え?」
バリバリバリと感電する音。
麻衣「あばばばばばば!?」
創吾「お、おい! 大丈夫か!?」
麻衣「凄い……」
創吾「ん?」
麻衣「これが……恋」
創吾「違う」
場面転換。
保科「恋はね。すっごく、ドキドキするものなのよ」
麻衣「……ドキドキ」
場面転換。
教師「じゃあ、この前の期末テストの答案を返すぞー。赤点だったら、夏休みは補習だからな」
麻衣「……」
場面転換。
麻衣「はあ……はあ……はあ……」
創吾「答案用紙裏返して、なにやってんだ、お前?」
麻衣「話しかけないで! もし、このテストが30点以下なら、補習なんだから」
創吾「……なら、さっさと点数を確認しろよ」
麻衣「怖くて見れないのよ!」
創吾「いや、もう結果は出てるんだから、早く見たらどうだ?」
麻衣「うう……。はーーー!」
答案用紙をひっくり返して、バンと机に叩きつける。
麻衣「……31点。よっしゃー! 補習免れたー!」
創吾「……受けた方がお前の為になるんじゃないか?」
麻衣「いやー、すっごくドキドキした……って、あっ!」
創吾「どうした?」
麻衣「まさか……これが恋」
創吾「違う」
場面転換。
保科「恋はね。ずーっと、相手のことを考えてしまうのよ。寝ても覚めても。ううん。寝れなくなるくらいなのよ」
麻衣「……相手のことを考える」
場面転換。
麻衣が全力で走ってる。
麻衣「あー、も、もう! なんなのよ!」
犬「はっはっはっ!」
犬が追いかけてくる。
麻衣が転ぶ。
麻衣「きゃあ!」
犬「ワン! ワン! ワン!」
麻衣「ちょ、ちょっとたんまー!」
ガブと噛む音。
麻衣「ぎゃーーーー!」
場面転換。
とぼとぼ歩いている麻衣。
麻衣「……ったく、なんなのよ、あの駄犬……」
そこに創吾がやってくる。
創吾「よお。どうした? 朝から元気ねーな」
麻衣「昨日、野良犬に足を噛まれたのよ」
創吾「マジか。怖いな」
麻衣「ホント、腹立つ。なんで、私がこんな目に遭うのよ!」
創吾「まあ、日ごろの行いだろうな」
麻衣「あー、もう! 昨日も、そのことでイライラして寝れなかったわよ!」
創吾「ご愁傷様」
麻衣「……あ」
創吾「ん?」
麻衣「これが恋……」
創吾「違う」
場面転換。
麻衣「……あー。空が青い……」
ガチャリとドアが開く。
創吾「あ、いた。……屋上で寝転がって、何やってんだよ」
麻衣「自分の不幸に黄昏れてるの。私の青春は灰色なのよ。灰春(はいしゅん)よ」
創吾「なんだよ、そりゃ」
麻衣「……」
創吾「別に恋だけが青春じゃねーだろ。楽しけりゃいいんじゃねーの?」
麻衣「……楽しいことなんてないもん」
創吾「……はあ。俺が楽しくしてやるよ」
麻衣「え?」
創吾「暇なときはいつでも遊んでやる。いや、暇なんて思えなくしてっやるよ」
麻衣「……」
創吾「高校卒業の時、3年間楽しかったって、絶対に言わせてやる」
麻衣「……あっ!」
創吾「どうした?」
麻衣「あ、いや……立ち眩みかな」
創吾「寝てるのにか?」
麻衣「だよね。……変なの」
創吾「とにかく、変に恋に固執するなよ。な?」
麻衣「う、うん……」
場面転換。
廊下をトボトボと歩く麻衣。
保科「ボーとして、どうしたの?」
麻衣「あ、保科先生」
保科「最近、保健室に来ないけど、恋はできたのかしら?」
麻衣「あー、恋はもういいんです」
保科「あら、そう」
麻衣「今はそれより、他に悩みがあって……」
保科「なにかしら?」
麻衣「あいつの顔が頭から離れないんです。なんか、心臓も痛くなるし。あいつの顔を見ただけで、頭の中が真っ白になるんです」
保科「あらあら」
麻衣「何かの病気なんですかね?」
保科「ええ。不治の病ね」
麻衣「えええー! そんなぁ!」
保科「大丈夫よ。そのうち、治るから」
麻衣「ホントですか!?」
保科「ええ。ホントよ」
麻衣「よかったぁ」
保科「ふふっ。青春ねぇ」
終わり。