異世界に行く方法

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
慎吾(しんご)子供
慎吾(しんご)大人
正樹(まさき)子供
正樹(まさき)大人
子供・男

■台本

慎吾「……ホントに行くの?」

正樹「慎吾が言いだしたんだろ。肝試し」

慎吾「そうだけどさあ。まさか、ここまでヤバい雰囲気だと思わなくてさ」

正樹「でも、ここで帰ったら意味ないじゃん。心霊写真撮って、クラスでヒーローになるんだろ?」

慎吾「……」

正樹「それに、せっかくカメラ買ったんだからさ」

慎吾「……わかったよ。行って来る。けど、写真、2、3枚撮ったらすぐに戻ってくるからな」

正樹「うん。それでいいよ」

慎吾「……和美ちゃんには、ちゃんと俺が一人で行ったって言ってくれよ」

正樹「わかってるわかってる。きっと、お前の凄さに、和美ちゃんも興味津々になってくれるはずさ」

慎吾「……よし! じゃあ、行って来る」

歩き出す慎吾。

場面転換。

建物の中を歩く慎吾。

慎吾「うう……。こ、怖い。とりあえず、この辺で……」

カシャカシャとカメラのシャッター音。

慎吾「よし、あと一枚撮ったら帰ろう」

そのとき、足音が聞こえてくる。

謎の声「……のか?」

慎吾「だ、誰!?」

ピピっという音が聞こえる。

慎吾「ひいっ!」

謎の声「……だろ? ……こい……」

慎吾「あわわわ……(歯がカチカチと鳴る)」

ピピっと音が鳴る。

慎吾「うわあ! ひ、光った? うわああああああ!」

パシャパシャパシャとシャッターを押す慎吾。

謎の声「……やっと見つけたぞ」

慎吾「うわあああああああああ!」

慎吾が走り出す。

場面転換。

教室内。休み時間。

男の子「嘘だー」

慎吾「ホントだって! 声が聞こえたし、何か光ったんだよ!」

男の子「お前は何か見たのか?」

正樹「いや、慎吾が一人で行ったから」

男の子「じゃあ、なんか証拠あるのかよ?」

慎吾「いや、その……。カメラ、落としちゃったし」

男の子「じゃあ、そのカメラ取って来いよ」

慎吾「……朝に行ったら、無くなってたんだ」

男の子「やっぱり嘘だろ。幽霊見たなんて」

慎吾「ホントだって! 絶対、あれは幽霊だった!」

男の子「お前、そんなこと言って、和美ちゃんに良い所見せようとしただけだろ。和美ちゃん、嘘付く奴は嫌いって言ってたぞ」

慎吾「だから、ホントだってば!」

場面転換。

それから15年後。

慎吾(N)「あの年は心霊ブームで、各所で不可思議な現象や幽霊が出るという噂が絶えなかった。だから、俺はほんの出来心で、ブームに乗って心霊写真を撮ろうとしたのだ。そして、あの日、俺はクラスの全員から嘘つき扱いされた。当時、好きだった和美ちゃんも、俺と話してくれなくなった。それだけならまだしも、その一件から、俺は何かと嘘つきとからかわれるようになる。……そう。俺の人生はあそこから狂ったと言ってもいい。……あれから20年。未だに俺はあの時のことを引きずっていた」

場面転換。

カチャカチャと機械を弄っている音。

正樹「なあ、慎吾。お前の人生だから、あんまりこういうこと言いたくないんだけど、もう諦めたらどうだ?」

慎吾「……」

正樹「過去に戻って、確かめたところで何か変わるわけでもないだろ」

慎吾「これは俺のケジメだよ。あのとき、あそこで何が起こったのか。それを確かめるまで、俺は死んでも死にきれない」

正樹「幽霊がいたってことでいいじゃないか。俺は信じてるぜ」

慎吾「……証拠が欲しい。どうしても確かめたいんだ」

正樹「だからって、タイムマシンなんて、絶対無理だって。個人で作れるもんじゃねーだろ」

慎吾「……もう少しだと思うんだ」

正樹「ったく、その情熱を違うところへ向ければ、もしかしたら、今は、大金持ちになってたかもしれないのにな」

慎吾「うるさいな……」

正樹「そういえばさ、最近、異世界に行く方法っていうのが流行ってるんだけど、知ってるか?」

慎吾「……異世界には興味ない」

正樹「いや、異世界に行けるならさ、過去にも戻る手掛かりとかあるんじゃないか?」

慎吾「……そんな非科学的な」

正樹「今のお前の科学力じゃどうにもならないんだから、こういうオカルト的なものも取り入れてみてもいいんじゃないか?」

慎吾「……なるほどな。確かに。試すだけ試してもいいか」

場面転換。

正樹「じゃあ、頑張れよ」

慎吾「……あまり期待できないけど、行って来るよ」

エレベーターの扉が閉まる音。

慎吾「えーっと、このあと、5階で女性が乗って来ると……」

ガタンとエレベーターが止まる音。

そして、ドアが開く。

慎吾「……っ!」

人がエレベーターに入って来る音。

慎吾「こ、ここで1階のボタンを押す……」

ドアが閉まり、エレベーターが動く音。

慎吾「……上がっていく」

ガタンとエレベーターが停まり、ドアが開く。

慎吾「……なんだ、ここは?」

外に出る音。

慎吾「……なんか変だ。これじゃ、異世界っていうより……過去だ」

場面転換。

慎吾が走る音。

慎吾(N)「あの後、色々と調べたら、俺は過去の世界に戻っていたことがわかる。……20年前。今まで試した奴は、あまりにも違う世界だから、異世界と勘違いしたのだろう。けど、今はそんなことはどうでもいい。俺は確かめなくてはならない。……そう。20年前。俺が見た、幽霊の姿を」

場面転換。

慎吾「……よく子供一人で、こんなところに行けたよな、実際……」

そのとき、足音が聞こえてくる。

慎吾「来たか。……来るぞ」

足音が遠ざかっていく。

慎吾「おいおい。帰るなよ。くそ、どうなってるんだ……? よ、よし。仕方ない。気を引くか」

息を大きく吸う。

慎吾「帰るのか?」

ピタリと足音が止まる。

慎吾「よしよし。戻って来い……」

もう一度息を吸う。

慎吾「お前、慎吾だろ? 早くこっち来いよ」

足音が近づいて来る。

慎吾「よし。ここで幽霊が現れるはずだ」

ガサガサとスマホを出す音。

慎吾「……スマホに写るといいんだが……」

ピピっというスマホのシャッター音。

慎吾「……フラッシュはたかない方がいいか?」

カシャという音。

慎吾「怪奇音……光った! 幽霊の光りか?」

カシャっという音。

慎吾「やっとだ……やっと見つけたぞ」

慎吾・子供「うわあああああああああ!」

慎吾・子供が走って行く。

慎吾「……子供の幽霊か? まあいい。しっかりとスマホにも写したし。……ん?」

慎吾がカメラを拾い上げる。

慎吾「うわー。懐かしいな。インスタントカメラだ。……記念に持って帰ろう」

場面転換。

エレベーターが開く音。

正樹「どうだった?」

慎吾「ふふふ。収穫アリだ」

正樹「異世界に行けたのか?」

慎吾「過去に行って、あのとき、俺に何があったのか……。確かめてきたぜ」

終わり。

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