鍵谷シナリオブログ

ここから本気で行くぜ

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
健太郎(けんたろう)
稔(みのる)
店長
アニメの主人公
アニメのライバル

■台本

アニメの画面。

主人公「くっ!」

ライバル「ふっ! 貴様の力はそんなもんか?」

主人公「……」

ズルっと重りを外す音。

そして、ズンと重りが地面にめり込む。

ライバル「なっ! 貴様、今までそんな重りを付けて戦っていたというのか?」

主人公「勝負はこれからだ。ここから本気で行くぜ」

アニメの画面終わり。

そのアニメを見ている健太郎。

健太郎「おおー! 超、格好いい」

場面転換。

店内で仕事をしている。

店長「健太郎くん、ポテト、冷蔵庫から出してくれる?」

健太郎「は、はい……。はあ、はあ、はあ」

ガチャリと冷蔵庫を開けて、ポテトを取り出す。

よろよろとした足取りで歩く健太郎。

健太郎「はい、どうぞ、店長」

店長「……健太郎くん、今日、何か変だよ。大丈夫?」

健太郎「え?」

店長「いつもより動きが遅いし、もう、息が上がってるじゃない。……もしかして」

健太郎「いやいやいや! 違います! 体調が悪いというわけじゃないんです。なんていうか、筋肉痛というか……」

店長「あ、そう。キツかったら、上がっても大丈夫だからね」

健太郎「え、でも……」

店長「……大丈夫だよ。お客さんいないしさ」

健太郎「……そういえば、もう一人のバイトの人って、お休みですか?」

店長「……辞めてもらったよ。元々、業務態度悪かったし。……このご時世で、うちも余裕ないからさ」

健太郎「そうですか……」

場面転換。

ヨロヨロと歩く健太郎。

健太郎「はあ、はあ、はあ……。今日はいつもの10倍疲れたな。早く帰って寝よう」

場面転換。

店のドアが開く音。

健太郎「ありがとうございましたー」

店長「健太郎くん、最近、元気になってきたね」

健太郎「はい。大分、慣れてきたんで」

店長「慣れてきた? 仕事に?」

健太郎「ああ、いや、そういうことじゃなくて……」

店長「……?」

場面転換。

スタスタと歩く、健太郎。

健太郎「ふふふ。確実に俺は強くなっている。もう、昔の俺だと思うなよ。……なんてね」

ぐう、とお腹が鳴る音。

健太郎「お腹減ったな。なんか、食べてくかな。最近は家にいることが多いから、結構、お金余裕があるんだよね。良い物食べようかな……」

稔「よお、兄ちゃん。俺にも、何か奢ってくれよ」

健太郎「へ?」

稔「俺さー、金ねーんだよ。な? 何か奢ってくれよ」

健太郎「……嫌です」

稔「……無理やり奪い取ってもいいんだぞ。お願いしてるうちに、素直に従っておけよ」

健太郎「何度も言わせないでください。嫌です」

稔「……なるほど。無理やり奪い取られてーみたいだな」

健太郎「やれるもんならやってみろよ」

稔「……後悔すんなよ」

場面転換。

バキっと殴られる音。

健太郎「いてっ!」

稔「ほらな。素直に、驕れって」

健太郎「……なんで、こんなことをする?」

稔「あん? なんだ、急に?」

健太郎「喧嘩っていうのは、お互いを分かり合うものだ。つまり、自分の主張のぶつけ合いなんだ」

稔「……な、何を訳の分からないこと……」

健太郎「言え! なんで、こんなことをする?」

稔「……だから、金がねーんだよ」

健太郎「バイトすればいいだろ!」

稔「してたよ! ……けど、クビになった」

健太郎「え?」

稔「理由は目つきが悪いから、だってよ。2年も働いたところだぞ。……単に、店がピンチだから、切り離したかっただけなんだ」

健太郎「なら、他の所を探せばいいだろ」

稔「探したっての! けど、どこも雇ってくれねー。今は社員を守ることで手一杯なんだろ。バイトのことなんて……こんな目つきの悪い学生のことなんて考えてなんかくれない」

健太郎「だからって、人からお金を取るのはどうかと思う」

稔「仕方ねーだろ! じゃあ、どうするんだ? 今、流行りの受け子でもやるか? ……それなら、まだ、カツアゲの方がマシだろ?」

健太郎「それでも、俺はそのやり方を肯定することはできない」

稔「けっ! 元から、理解してもらおうとは思ってねーよ」

健太郎「結局、やり合うしかないのか」

稔「当たりめーだろ」

健太郎「うおおお!」

稔「おらあああ!」

場面転換。

ブンブンと拳が空を切る音。

健太郎「はあ、はあ、はあ……」

稔「遅い! 遅い! そんなんじゃ当たらねーぞっ、と!」

ボコっと健太郎を殴る稔。

健太郎「ぐあっ!」

稔「もう諦めたらどうだ?」

健太郎「……」

ズルっと重りを外す音。

そして、ズンと重りが地面にめり込む。

稔「なっ! お前、今までそんな重りを付けてたのか?」

主人公「勝負はこれからだ。ここから本気で行くぜ」

稔「くっ!」

シュシュという拳が空気を切る音。

健太郎「すげー! めっちゃ、腕が軽く感じる」

稔「……」

健太郎「けど、もう、体力の限界……。バイト終わったばっかりだし、喧嘩なんて初めてだし……」

稔「……なんだよ。見掛け倒しかよ」

健太郎「ちょちょちょ、ちょっと待って……」

ゴンと殴られる音。

場面転換。

健太郎(N)「格闘漫画で重りを付けて修行するっていうのがある。もちろん、重りを付けることに効果は凄くあると思う。……だけど、外すタイミングは大切だって話。……それはそうと、あの後、喧嘩相手の人とは、何回か喧嘩するうちに仲良くなった。……あっちも、格闘漫画が好きだったみたいだ。その付き合いは社会人になった今でも続いている。……喧嘩で分かり合えるっていうのも、意外と本当なのかもしれない」

終わり。

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