■概要
人数:5人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
小野田 健司(おのだ けんじ)
青年
警察
男
女子学生
■台本
会社内。
上司「小野田くん。ここ、ミスしてるよ」
健司「あ、すみません。すぐ、修正します」
上司「小野田くん、これ、何回目? いい加減、仕事覚えてよ」
健司「いや、今回のミスは初めてですけど」
上司「……あのさ、そうやって言い訳するところもダメだと思うぞ。素直に、すいませんって謝れないのか?」
健司「……(小声で)謝ったんですけど」
健司(N)「俺の顔は、なんていうか軽いというか、チャラく見えるらしい。髪も赤みがかかっていて、学生の頃はよく、染めるなと怒られたものだ。そんな外見のせいか、俺は周りから不真面目だと思われている。何かミスをすると、またかと言われ、何か問題があると、俺のせいじゃないかと疑われる。……ホント、見た目で判断するなんて、最低だ」
場面転換。
駅構内。
人は少なく、閑散としている。
健司「はあ……。疲れたな。今日は早く寝よっと」
駅に電車がやってきて、ドアが開く。
同時に、遠くから声が聞こえる。
女子学生「す、すいませんでした……」
中年男「どこ見て歩いてんだ!」
女子学生「ホント、すいません」
中年男「ちっ! ったく、学生が、こんな遅くまでウロウロしてるんじゃねえ」
女子学生「……はい。すみませんでした」
女子学生が足早に去って行く。
健司(N)「うわあ。嫌な奴。相手が謝ってるのに、あそこまで言うことないだろ……」
電車のドアが閉まる音。
健司「あっ!」
健司(N)「後ろの言い争いに気を取られて、つい、電車に乗り損ねてしまった。……はあ、今日は、ホント、ついてないな」
男「あー、財布がない!」
その声と同時に、後ろでガヤガヤと騒がしくなる。
健司「ん? なんだ?」
場面転換。
警察「すみませんね、お時間をいただいて」
健司「いえ、別に……」
警察「最近、置き引きが多くてですね、手口が似ていることから、同一犯じゃないかって思ってるんですよ」
健司「はあ……。そうですか」
警察「ですが、なかなか、尻尾を見せなくて、困ってるんです。何か、不審な人物とか、見ませんでしたか?」
健司「……そうですね。特には……あ、いや、そういえば、ガラの悪そうな男の人がいました」
警察「どんな男でした?」
健司「えーっと……」
青年「あ、それ、僕も見ました。ぶつかった人が、謝っているのに、文句を言ってた人ですよね?」
健司「そうです、そうです!」
警察「あなたは、その男を見たんですか?」
青年「ええ。でも、チラッとしか見てなかったから……」
健司「大体、50歳くらいで、グレーのスーツを着て、オールバックだったんですけど、少してっぺんが薄い感じだったと思います」
警察「……そうなんですか?」
青年「はい。確か、そんな気が……」
健司「ちょっと小太りで、のっしのっしと偉そうに歩く人でしたね」
警察「そうなんですか?」
青年「え、ええ……。そうだったと思います」
警察「……じゃあ、その人が置き引き氾ですかね?」
健司「……おそらくそうだと思います。目つきが悪かったですし、どこか、急いでいた気もします」
青年「あ、それは僕も思いました」
警察「ありがとうございました。では、その男を中心に調べてみます」
健司「頑張ってください」
場面転換。
駅。電車を待ちながら、スマホを操作している健司。
健司(N)「あ、置き引き氾、捕まったんだ。やっぱり、常習犯だったのか。……そうだよなぁ。あんなガラの悪そうで、嫌な奴だったし。でも、捕まってよかった」
スマホを操作する健司。
健司(N)「えーと、犯人は……え? 女子学生? ……まさか、あの、ぶつかっていた方の女の子だったってことか? ……じゃあ、あの男は……?」
健司「……」
健司(N)「人を見た目で判断しちゃダメだよな。……気を付けよう」
終わり。