パーフェクトエージェンツ

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ギル
クランツ
リューク
セシリー
上司
運転手

■台本

部屋内。

クランツ「……なるほど。ここぞという重要なところで、必ず不幸が訪れる……と?」

ギル「はい。幼少期から、ずっと、そうでした。本当に、ここぞというところで必ずなんです」

クランツ「それは、気のせい……というわけではないのですね?」

ギル「それなら、ここに来てません」

クランツ「……確かに。では、正式に依頼する、ということでよいですね?」

ギル「はい。お金は必ず払います。ですから、絶対に成功させたいんです!」

クランツ「……わかりました。ご安心ください。うちに所属するエージェントに任せてくれれば、どんな依頼も成功させて見せます。それこそが、パーフェクトエージェントです」

ギル「期待してます」

クランツ「まずは、情報収集させていただきます。あなたが言う、不幸というものが、どのようなものかを、検証します。その上で対策を練らせていただきます」

ギル「よろしくお願いいたします」

クランツ「では、しばらくの間、あなたの様子を見守らせていただきます」

場面転換。

会社内。

上司「ギル。わかっているな? 今日の商談は我が社の命運がかかっていると言っても過言ではない」

ギル「はい。資料は完璧にそろえてあります。先ほども、確認しています」

上司「ふむ。実際のプレゼンは私がやる。……君はその……まあ、あれだからな」

ギル「わかっています。重要な部分はお任せします」

上司「……君も、その不幸体質がなければ、私の立場……いや、もっと上にいただろうな」

ギル「いえ……」

上司「では、かなり早いが向かおう」

ギル「はい。ただ、その……」

上司「わかっている。別々の車にしよう」

場面転換。

タクシーの車内。

ギル「急がなくていいので、安全運転でお願いします」

運転手「はいよ」

ギル「……プレゼンに直接かかわらなければ大丈夫だろう。あくまで、補佐に徹すれば……って、あ、しまった。資料も持って行ってもらえばよかったな」

バンとパンクの音がし、ガタガタと車内が揺れる。

ギル「うわ、なんだ?」

運転手「わっちゃー。こりゃ、パンクだな。お客さん、どうします? すぐにスペアタイヤと交換しますが?」

ギル「……ここでいいです。違うタクシーを捕まえますので」

運転手「悪いね」

ドアが開き、ギルが車から出る。

その時、後ろの方からバイクが迫ってくる音がする。

ギル「さてと。すぐにタクシーを拾えればいいんだが……」

すぐ後ろまでバイクがやってきて、ギルのカバンをひったくる。

ギル「あっ! ひったくりだ! くそ! 待て! そのカバンには金は入っていない! 返してくれ!」

バイクが走り去っていく。

ギル「くそっ! やっぱり、資料は持っていってもらえばよかった。って、そんなことより、どうにか取り返さなくては……」

そのとき、遠くで事故が起きる音がする。

ギル「ん? 何の音だ?」

さらに遠くからバイクが走って来る。

そして、ギルの目の前で止まる。

リューク「乗って」

ギル「え?」

リューク「プレゼンに間に合わなくなるよ」

ギル「えっと……」

リューク「……君の上司に頼まれてたんだ。なにかあったら、フォローしてくれと」

ギル「そうだったんですか……。って、そのカバン」

リューク「取り返しておいた。さあ、早く乗って」

ギル「はい、お願いします」

バイクの走る音が遠くなっていく。

場面転換。

社内を走る足音。

ギル「はあ、はあ、はあ……。す、すいません。ちょっとトラブルがあって……」

上司「必死に辿り着いてもらって、悪いが、今日の商談は中止だ」

ギル「え? なぜです? 商談の開始時間にはまだ時間があるはずです」

上司「君のせいじゃない。先方の会社の常務が倒れたみたいでね。商談はリスケしてくれとのことだ」

ギル「……わかりました」

場面転換。

部屋内。

クランツ「で、どうだ? 依頼人がいう、不幸というものは?」

リューク「確かに、気のせいで片付けるには、不可解としか言えませんね」

クランツ「お前がそう言うなら、余程なのだな」

リューク「ええ。1ヶ月間、様子を見せてもらいましたが、重要なときに起こる不幸は異常です。本来なら、あり得ません」

クランツ「……依頼は、何とかなりそうか?」

リューク「何とかしろ、じゃないですか?」

クランツ「まあな。パーフェクトエージェントと呼ばれるからには、何とかしてもらわないとならん」

リューク「ですが、私一人では難しいです。3人ほど回してください」

クランツ「3人も……か。まさか、そこまでとは」

リューク「ええ。そこまでしないと、この依頼は成功させることはできません。逆に、3人回してもらえれば、どんなトラブルが起きても、完璧に対処し、依頼を成功させてみせます」

場面転換。

駅前。

セシリーが駆け寄ってくる。

セシリー「ギル、ごめん。待った?」

ギル「いや、俺が早く来過ぎただけだから、気にしないで」

セシリー「で、話ってなに?」

ギル「あー、いや、まずは夕飯にしよう。レストランを予約してるんだ」

場面転換。

レストラン内。

セシリー「……随分と高そうなところだけど、今日って、なんかの記念日だっけ?」

ギル「あー、いや、たまにはいいだろ? ここに来てみたかったって言ってたし」

セシリー「うん。ちょっと嬉しいかも」

ギル「……」

セシリー「どうしたの? さっきから、キョロキョロして」

ギル「いや、なんでもない。トラブルが起きないか、注意してただけだよ」

セシリー「ふふ。なにそれ?」

ギル「ごめん、何でもない。食事を楽しもう」

場面転換。

屋上にあるテラス。

セシリー「うわー、夜景が綺麗―!」

ギル「結構、人気なんだ、ここ。屋上で夜景が見れる、珍しいカフェなんだよ」

セシリー「素敵……。さっきのバーもそうだけど、今日は随分と気合が入ったデートだね」

ギル「ま、まあ……」

セシリー「ふふ。この後も、期待していいのかな?」

ギル「あ、あのさ。俺と……」

そのとき、リュークが走ってきて、ギルを連れ去る。

セシリー「え?」

ギル「うわっ! な、なんだ?」

リュークがギルを抱えて走る。

ギル「ちょ、ちょっと! なにする……」

リューク「静かに。俺はエージェントだ。彼女の方は、仲間がついてるから、心配するな」

ギル「……やっぱり、何か起こったんですか? トラブルが?」

リューク「……」

ギル「でも、どんなトラブルが起きても、完全に対応すると……」

リューク「すまない。想定外のことが起きたんだ」

ギル「想定外のこと……ですか?」

リューク「ああ。全く、トラブルが起きない……。こんなことは想定外だ」

ギル「……」

終わり。

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