■概要
人数:5人以上
時間:15分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
アリーチェ
メリッサ
フィオリーノ
男1~男2
■台本
マフィアの事務所。
男1「なあ、嬢ちゃん。どう落とし前付ける気だ? あの車、2000万以上、するんだわ」
アリーチェ「あ、あの……。わ、私、やってない」
男2「おいおい。じゃあ、誰が、傷を付けたってんだ?」
アリーチェ「わ、わかんないよ……」
男1「じゃあ、お嬢ちゃんが弁償しなきゃなぁ! 3000万だ!」
アリーチェ「そんなお金、ないよ……」
男2「なら、親に出して貰えよ。出せるだろ? お前の親ならよぉ」
アリーチェ「でも、お母さんもお父さんも、今、家にいないし……」
男1「別に家にいなくても、金を振り込むことくらいできるだろ! さっさと連絡しろよ!」
アリーチェ「……で、でも」
男2「なんだよ、痛い目見たいのか?」
アリーチェ「う、うう……」
メリッサ「車は自分で傷を付けたんでしょ? 近くの家の監視カメラに映ってた」
男1「あん? なんだ、てめえは?」
アリーチェ「メリッサ姉さん!」
メリッサ「アリーチェ、大丈夫? 叩かれたりしてない?」
アリーチェ「だ、大丈夫」
男2「ああ、お姉さんかい。なあ、あんたの妹さ、親に電話してくれねーんだよ。あんたが連絡してくれねーか?」
メリッサ「はあ? あんたさ、私の話聞いてた? あんたらが勝手につけた傷を、なんで弁償しなきゃならないのよ」
男1「うっせーな! いいから、金払えってんだよ!」
メリッサ「はあ……。あのねえ、脅迫、軟禁、未成年者略取。慰謝料も含めて、お金を払うのはそっちの方だと思うけど?」
男1「知らねーよ。それとも、ねーちゃんが体で払うか?」
メリッサ「……ホンッと救えない」
男2「へへへ。そんなこと言わないで、救ってくれよー」
男2がメリッサの方へ歩いて行く。
アリーチェ「メリッサ姉さん、逃げて!」
メリッサ「大丈夫よ、アリーチェ。逃げた方がいいのは、こいつらよ」
男2「あん?」
メリッサ「あー、でも、手遅れかも」
いきなり、ガシャンと窓ガラスを破って、フィオリーノが入って来る。
フィオリーノ「よお、二人とも、無事か?」
アリーチェ「フィオ兄さん!」
メリッサ「遅いわよ、フィオリーノ」
フィオリーノ「まあまあ。ささっと片付けるから、それで勘弁してくれ」
男1「なんだ、てめえ!」
フィオリーノ「てめえら。よくも、俺の家族に手を出したな。死ぬ準備はできてるんだろうな?」
男2「死ぬのはてめえだ! おらあ」
フィオリーノ「……ふっ!」
男2「ぐえっ!」
フィオリーノに殴られて、男2が吹っ飛ぶ。
男1「てめえ!」
フィオリーノ「遅い」
男1「う、お……」
男1がフィオリーノに腹を殴られて倒れる。
フィオリーノ「よし、終わった」
アリーチェ「……」
メリッサ「あ、帰りに買い物いかないと。晩御飯の」
フィオリーノ「俺、肉がいいな、肉。……ほら、アリーチェ。なに、ボーっとしてるんだ? 帰るぞ、家に」
アリーチェ「うん!」
アリーチェ(N)「メリッサ姉さんとフィオ兄さん、二人は私の大切な兄姉(きょうだい)。でも、二人とは血が繋がっていない。というより、三人全員、血が繋がっていないのだ。私はお母さんの、前のお父さんの子供。つまり、お母さんから見たら、私は連れ子。メリッサ姉さんは、お母さんと2つ前のお父さんとの子供。で、フィオ兄さんは、今のお父さんの、前の奥さんとの子供。つまり、お母さんから見たら、連れ子になる。私は、こんな複雑な家庭の子供なんだけど、一度も嫌だと思ったことはない。だって、こんなに素敵な人たちと家族になれたんだから」
場面転換。
ガチャリとドアを開けて、アリーチェが家に入って来る。
アリーチェ「ただいまー! メリッサ姉さん、フィオ兄さん、お土産買ってきたよー」
赤ちゃん(ネリーナ)の泣き声がしている。
フィオリーノ「おいおいおい、メリッサ。めっちゃ、うんこしてる、うんこ」
メリッサ「そりゃするでしょ。……あら、アリーチェ、お帰りなさい。修学旅行、楽しかった?」
アリーチェ「う、うん……。ねえ、その赤ちゃん(ネリーナ)、なに?」
メリッサ「ああ、この子? ネリーナ。新しく家族になるから、あなたも面倒見るのよ」アリーチェ「……え?」
フィオリーノ「いきなりビビるよな。アリーチェが旅行に行ってる間に、母さんがふらっと帰って来て、置いてったんだ」
メリッサ「ったく、いくら忙しいからって、赤ちゃん(ネリーナ)の面倒を子供に押し付けるかな、普通」
フィオリーノ「まあ、色々、裁判があるらしいから、しょーがねーって」
メリッサ「……子供を育てるときくらい、仕事休みなさいよね。全く」
フィオリーノ「いや、親父こそ、武者修行なんて止めて、帰って来いよなー」
メリッサ「お父さんはそもそも連絡つかないんだから、しょうがないんじゃない?」
フィオリーノ「そんなんだから、前の母さんに捨てられるんだよ」
メリッサ「まあ、母さんも似たり寄ったりよね」
アリーチェ「……」
赤ちゃん(ネリーナ)の泣き声が響く。
フィオリーノ「あれ? オシメ換えたのにな」
メリッサ「お腹減ったんじゃない?」
フィオリーノ「アリーチェ。キッチンに粉ミルクあるから、用意してくれ」
アリーチェ「う、うん……」
アリーチェ(N)「ネリーナ。お母さんとお父さんの子供……。メリッサ姉さんとフィオ兄さんと血が繋がってるってことだ。……これで、この家で、全然、血が繋がっていないのは、私だけになってしまった……」
場面転換。
ガチャリとドアを開いて、アリーチェが家に入って来る。
アリーチェ「……ただいま」
そのとき、メリッサとフィオリーノが走ってくる。
メリッサ「あ、アリーチェ。あんたは危ないから、家で留守番してて」
アリーチェ「……なんかあったの?」
フィオリーノ「ああ、あのチンピラが逆恨みして、ネリーナを誘拐しやがった」
アリーチェ「……助けに行くの?」
フィオリーノ「当たり前だろ」
アリーチェ「……危ないよ」
メリッサ「大丈夫だって。フィオリーノいれば」
フィオリーノ「そうそう。あんな奴ら、どうってことないって」
アリーチェ「もし、大勢、仲間がいたらどうするの? 銃だって持ってるかもしれないよ」
フィオリーノ「……それでも、行かないと」
アリーチェ「私は嫌。メリッサ姉さんやフィオ兄さんに何かあったら、私……」
メリッサ「アリーチェ。私たちはね、あなたが誘拐されたとしても、絶対に助けに行くわ。だって、家族だから」
アリーチェ「……」
フィオリーノ「大丈夫、すぐ戻る」
二人が出ていく。
アリーチェ「……」
アリーチェ(N)「私は正直、ネリーナが戻って来なければいいって思った。そうすれば、今まで通り、私はこの家でも家族でいられる」
場面転換。
時計の秒針の音。
アリーチェ「……二人とも、遅いな。大丈夫かな」
アリーチェ(N)「こんな状況でも、やっぱり、ネリーナが帰って来ない方がいいって思ってる。……私、最低だ」
アリーチェ「フィオ兄さん、メリッサ姉さん」
回想。
メリッサ「アリーチェ。私たちはね、あなたが誘拐されたとしても、絶対に助けに行くわ。だって、家族だから」
回想終わり。
アリーチェ(N)「……そう。ネリーナも家族だ。……ネリーナに何かあったら、きっと、フィオ兄さんもメリッサ姉さんも悲しむだろうな」
アリーチェ「行こう! ネリーナを助けて、戻ってきたら、私が家を出ればいいんだ」
立ち上がって、走り出すアリーチェ。
場面転換。
マフィアの事務所。
赤ちゃん(ネリーナ)の泣き声が響く。
男1「へっへっへ。動くと、赤ん坊に傷が付くぜ」
フィオリーノ「くそ……」
メリッサ「卑怯よ」
男2「なんとでも言え!」
そのとき、ガシャンと窓が割れる音。
男1「な、なんだ?」
事務所にアリーチェが飛び込んでくる。
アリーチェ「うわーーー!」
男2「うお、あぶね! バットを振り回すな!」
ブンブンとバットを振り回すアリーチェ。
フィオリーノ「チャンス!」
フィオリーノが走り出し、男2を殴り飛ばす。
フィオリーノ「うおおおお!」
男2「ぐえっ!」
フィオリーノ「メリッサ!」
メリッサ「わかってる! ……キャッチ!」
赤ちゃん(ネリーナ)をキャッチする、メリッサ。
男1「あ、くそ……」
フィオリーノ「お前ら……。覚悟はできてるんだろうな?」
バキバキと指を鳴らすフィオリーノ。
男1「ぎゃあああああ!」
場面転換。
帰り道を歩く3人。
フィオリーノ「今回は助かったよ、アリーチェ」
メリッサ「でも、危険だから、もうやっちゃダメよ」
アリーチェ「う、うん……」
赤ちゃん(ネリーナ)がキャッキャと笑い出す。
アリーチェ「私ね、寮に入ろうかなって思う」
フィオリーノ「へ? なんでだ?」
アリーチェ「だって……。私、邪魔だし」
メリッサ「邪魔? なんで?」
アリーチェ「私だけ、血が繋がってないでしょ? 私、ギクシャクするの嫌だから。だから、このままでお別れしたい」
フィオリーノ「……」
メリッサ「……」
アリーチェ「だから、私……」
フィオリーノ「お前、勘違いしてねーか?」
アリーチェ「え?」
メリッサ「ネリーナは養子よ」
アリーチェ「……へ?」
フィオリーノ「母さんの同僚が事故死したんだってさ。だから、母さんが養子として引き取ったんだってよ」
メリッサ「だから、血の繋がりはぜーぜんないわね」
アリーチェ「……」
場面転換。
リビング。
赤ちゃん(ネリーナ)の泣き声が響く。
フィオリーノ「アリーチェ、ミルクの準備してくれ!」
アリーチェが歩いて来る。
アリーチェ「もう作ってあるわよ。はい」
フィオリーノ「お、相変わらず、仕事が早いな」
アリーチェ「フィオ兄さん、抱き方変」
フィオリーノ「へ? そうか?」
アリーチェ「貸して」
アリーチェが抱くと、赤ちゃん(ネリーナ)が泣き止む。
フィオリーノ「お、すごい。泣き止んだ」
メリッサ「やるじゃない、アリーチェ」
キャッキャと笑う赤ちゃん(ネリーナ)。
アリーチェ「へへへ。可愛い」
アリーチェ(N)「私達、兄姉(きょうだい)は全員、血が繋がっていない。でも、私たちは本当の家族だ」
終わり。