鍵谷シナリオブログ

子供になりたい

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
光希(こうき)
沙紀(さき)
将司(まさし)
子供1~3

■台本

光希(N)「子供になりたい。……とはいっても、別にピーターパン症候群ってわけじゃない」

幼稚園の裏庭。

洗濯ものを干している光希。

光希「ふう。洗濯終わりっと!」

光希が歩いていく。

光希「沙紀さん、洗濯終わり……」

子供と遊んでいる沙紀。

沙紀「偉いね。そんな将司くんに、ご褒美のちゅーだ」

チュッと将司の頬にキスする沙紀。

将司「へへへ。沙紀先生に、チューしてもらっちゃったー!」

光希「……」

沙紀「あれ? 光希くん、どうしたの?」

光希「あ、いや、その洗濯物終わったから……」

沙紀「そう。ありがと」

光希「ね、ねえ、沙紀さん」

沙紀「ん?」

光希「俺にご褒美ないの?」

沙紀「……光希くんが無償でって言ったんじゃなかったっけ?」

光希「うっ……」

子供1「沙紀せんせー、あっちで蓮くんが泣いてるよ」

沙紀「あらあら。すぐ行くわ。知らせてくれてありがとう」

子供1「えへへ」

沙紀が子供1と歩いて行く。

光希(N)「沙紀さんは俺にだけ冷たい。……っていうより、子供が好きなんだ。子供であれば、無条件で沙紀さんに好きになってもらえる。だから俺は、子供になりたい」

場面転換。

幼稚園の運動場。

子供2「あはははは! 光(こう)兄ちゃん、こっちだよー」

光希「待てー!」

子供3「きゃはははは」

子供たちと追いかけっこをしている光希。

光希がバタリと倒れる。

光希「はあ、はあ、はあ。もうダメ。走れない」

子供2「光にいちゃん、情けないぞー」

子供3「そうだそうだ」

光希「く、くそ……」

そこに沙紀がやってくる。

沙紀「情けないって言われてるわよ?」

光希「うっ! そう言われても、もう走れないよ……」

沙紀「そう」

大きく息を吸う、沙紀。大声で子供たちに言う。

沙紀「みんなー、そろそろお昼ご飯にしよっか。手を洗って、教室に入ってー」

子供たち「はーい!」

ゾロゾロと子供たちが園の中に入っていく。

光希「沙紀さん、俺は?」

沙紀「お弁当持ってきてるの?」

光希「……ないです」

沙紀「じゃあ、食べれないわね」

飴玉を渡して、沙紀が園に入っていく。

光希(N)「大学の講義が急に休講になって、散歩のつもりで歩いていたら、この幼稚園を見つけた。そして、そこで働いている保母の沙紀さんに、俺は一目惚れをした。それで無理を言って、手伝わせてもらっているのだ」

場面転換。

幼稚園内の教室。

沙紀「それじゃ、みんな、いただきます、しようね」

子供たち「いたーだきます!」

みんながお弁当を食べ始める。

そこに光希が入って来る。

沙紀「あら、光希くん。動けるようになったの?」

光希「まだ横っ腹が痛いけど」

沙紀「……大学の講義は?」

光希「休みだよ」

沙紀「……大学はサボらないっていうのが条件だったと思うけど?」

光希「やだなぁ。本当に休みなんですってば」

沙紀「そう」

そのとき、グーっと光希のお腹が鳴る。

光希「あっ!」

沙紀「(ため息をついて)……はい。お弁当」

光希「え? これって……?」

沙紀「いつも……手伝ってくれてるから」

光希「これ、愛妻弁当ってことでいいの?」

沙紀「……やっぱりあげない」

光希「じょ、冗談だって! ありがたく食べさせていただきます」

沙紀「勘違いしないでよ。本当に、手伝ってくれてるお礼だからね」

光希「うう……」

光希(N)「本当に、沙紀さんは俺にだけ冷たい……」

場面転換。

道路を走っている光希。

光希「くそー、教授め。雑用なんか押し付けやがって! 沙紀さんに会える時間が少なくなっちまったじゃねーか」

そのとき、幼稚園の敷地内から声が聞こえる。

男「下がれ! このガキがどうなってもいいのか?」

将司「うえーん! 沙紀せんせー助けてー」

沙紀「お願い、乱暴しないで!」

男「うるせえ! 金だ! 金を持ってこい!」

沙紀「そう言われても……園にはそんなにお金ないわ」

男「ガキどもの親に持ってこさせろ!」

沙紀「……そんな」

男「いいから、早くしろ!」

将司「うわーん!」

沙紀「やめて!」

光希「うおおおおおお!」

光希が走って来る。

男「ん? なんだ、お前……うわあ!」

光希の体当たりで男が倒れる。

光希「沙紀さん、早く警察に!」

沙紀「う、うん!」

男と光希が組み合っている。

男「うおおお! どけっ!」

光希「離すもんかー!」

男「くそー!」

場面転換。

パトカーの音が遠ざかっていく。

光希「ふう。ドキドキしたー」

沙紀「……光希くん、ありがとう」

光希「え? あ、うん。子供たちに怪我がなくてよかったね」

沙紀「……光希くんのおかげだよ」

光希(N)「ん? あれ? これって、いい雰囲気じゃね? 今なら、いけるんじゃないのか?」

光希「さ、沙紀さん! あの、次の日曜なんだけど、デートしてくれない? 助けたお礼ってことで」

沙紀「……ダメ。それとこれとは話は別」

光希「ええー、そんなぁ……」

沙紀「でも、遊びに行くならいいよ」

光希「え?」

沙紀「デートじゃなくて、一緒に遊びにいくなら、行ってあげる」

光希「ホント!? うん、遊びってことでいいよ! よっしゃー!」

沙紀「……勘違いしないでよ。友達、として行くんだからね?」

光希「……は、はい……」

光希(N)「やっぱり、沙紀さんは俺には冷たい。……はあ、子供になりたい」

終わり。

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