鍵谷シナリオブログ

天才の末路

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
凪(なぎ)
勝(まさる)
岳(たける)
悪魔
女性1~2

■台本

凪と勝、岳が走っている。

凪「うおおおお! 走れ、走れ、走れ!」

勝「うおおおお!」

岳「ちょ、わき腹が……」

3人の後ろから女の子たちが追ってきている。

女性1「待てこらー!」

女性2「今度こそ、警察に突き出してやる!」

凪「いいじゃねーか、減るもんじゃないし!」

女性1「心と体が汚れるのよ!」

凪「見ただけで汚れるか!」

女性2「とにかく、殴らせろー!」

凪「嫌なこっった!」

岳「あっ!」

岳が転ぶ。

凪「岳!」

凪と勝が立ち止まる。

勝「どうする、凪?」

凪「お前の犠牲は無駄にはしない!」

二人が走り出す。

岳「裏切り者―!」

女性1「一人捕まえたわ!」

女性2「警察に突き出す前に、叩き殺してやるわ」

岳「わー! 暴力反対!」

場面転換。

凪「ということで、今回の覗きは成功したわけだが」

岳「俺の、この顔を見て、そのセリフをサラッと言えるのがすげーよ」

勝「あっさりと見捨てたからな」

岳「お前もな」

凪「だが、覗きが出来た時間が、1分25秒と少な過ぎた。これでは効率が悪い」

勝「……だが、どうする? あれ以上の覗きポイントはもうないぞ」

岳「……覗きを諦めるか?」

凪「それはないな」

勝「だな」

岳「だね」

凪「ということは、つまり、物理的にはこれ以上の効果は見込めない」

勝「じゃあ、どうするんだ?」

凪「物理的に無理なら、物理的法則に頼らなければいい」

勝「お前、天才だな」

岳「で、具体的には?」

凪「悪魔に魂を売る」

場面転換。

凪「というわけで、頼む」

悪魔「……お前ら、そんなくだらない理由で私を呼んだのか?」

凪「くだらない? それこそ、くだらない価値観だな。何が重要なのかは、人によって大きく異なるものだ」

悪魔「……まあ、魂をくれるなら、どうでもいいけど」

凪「なら、さっさと、覗き放題の状態にしてくれ」

悪魔「抽象的過ぎる。もっと、具体的な願いを言え」

凪「……」

勝「どうする?」

岳「透明人間にしてもらう……とかは?」

凪「いや、そうなると今度は生活するのが難しくなる」

勝「じゃあ、どうするんだよ」

凪「……そうだな」

岳「……」

勝「……」

凪「女にしてもらうというのはどうだ?」

勝「え?」

岳「どうしてそんな願いにしてもらうんだ?」

凪「愚問だな。女になれば、覗きも何も、着替えのその場に堂々といることができるんだぞ」

勝「お前……天才かよ!」

凪「ということで、俺を女にしてくれ」

悪魔「……わかった」

場面転換。

勝「……」

岳「……」

ガラガラと扉が開き、凪が出てくる。

勝「凪、どうだった?」

凪「……それが困ったことになった」

岳「え? なに?」

凪「全然、楽しくない」

勝「へ?」

凪「私、なんであんなことに躍起になってたんだろ」

岳「ええ……」

凪「てことで、私は覗き研究会から脱退させてもらうから」

勝「ちょ、ちょっと待ってくれ! あ、あのさ……」

凪「ん?」

勝「お前を覗かせてくれよ」

岳「おお! それはナイスアイディア」

凪「はああ!? バカじゃないの!? 最低っ!」

勝「え?」

岳「え?」

凪「心と体が汚れるわ。……あんたら、覗きなんてくだらないこと、辞めた方がいいわよ」

スタスタと凪が歩き去っていく。

勝「……ええー」

岳「……そんなオチ?」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

モバイルバージョンを終了