地震雷火事親父

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
凍夜(とうや)
美也子(みやこ)
親父
母親
不良

■本編

凍夜が親父に向かって、突っ込んでいく。

凍夜「うおおおおお!」

親父「ふんっ!」

凍夜「ぐはっ!」

凍夜が親父に殴られ、吹っ飛ぶ。

凍夜「く、くそ……」

親父「ふん。俺に勝つなんざ、100年早ぇ」

スタスタと親父が去っていく。

そして、入れ替わるように美也子が歩いて来る。

美也子「おーい、凍夜、生きてるー?」

凍夜「紙一重の勝負だった……」

美也子「……そうだね(呆れ)」

場面転換。

凍夜と美也子が歩いている。

美也子「なんで、凍夜はおじさんに挑んでるんだっけ?」

凍夜「決まっている。最強を目指しているからだ」

美也子「……ん? 確かに凍夜のおじさんは強いとは思うけどさー。別におじさんにこだわらなくてもいいんじゃない?」

凍夜「親父に勝てない時点で、最強じゃないだろ」

美也子「まあ、そりゃそうか」

凍夜「それに昔から言うだろ。地震雷火事親父って」

美也子「……すごい古い言葉な上に、よく意味がわからないんだけど」

凍夜「つまり。昔から、地震、雷、火事、親父というのは怖がられていた象徴だ。そこを乗り越えてこそ、本当の意味での最強だろ」

美也子「んー。言いたいことはわかるんだけどさ。親父に勝つっていうのはいいんだけど、地震とか火事とかには、どうやって勝つの?」

凍夜「ふふ。実はその2つには、既に勝利している」

美也子「へ? どうやって?」

凍夜「この前、地震あっただろ?」

美也子「えーっと……。ああ、震度3のね」

凍夜「あれに耐えた。俺の勝ちだ」

美也子「……。火事は?」

凍夜「先週、三宅さん家の庭の火事を消し止めた。勝ちと言っても過言じゃないだろう」

美也子「……それ、火事じゃなくて、たき火だよね?」

凍夜「まあ、大差ないだろ」

美也子「大ありだと思うけどね……」

凍夜「あとは雷だな。この前の台風のとき、山で避雷針持って立ってたんだけど、結局、雷に当たることはなかったんだよな。今度、もう一度試さなければな」

美也子「……マジで死ぬから止めなさいよ」

凍夜「最強のためなら、命を危険さらすことも致し方ないことだ」

美也子「……えーっと。あ、大丈夫だよ。凍夜はもう雷に勝ってるって」

凍夜「む? なぜだ?」

美也子「この前さ、電池舐めたでしょ?」

凍夜「ああ。それが、雷とどう関係があるんだ?」

美也子「ピリッとしたでしょ? あれは電気。つまり、雷だよ」

凍夜「……なっ!? お前、天才か!」

美也子「……(呆れて)」

凍夜「ふむ。となると、やはり残るは親父のみだな。まあ、それが最大の壁なのだが……」

そこに大勢の足音がして、二人の前に立ちふさがる。

不良「よお、凍夜。見つけたぜ」

凍夜「……なんだ、ゾロゾロと大勢で」

不良「この前のお礼をしにきたんだよ」

凍夜「別にいらんと言っただろ。それに、お前らから何か物を貰う意味がわからん」

不良「そういう意味じゃねえ! ……ったく、調子狂うぜ。とにかく、今度こそ、ボコボコにしてやるから、付いてきな」

凍夜「ああ、そういうことか」

美也子「ちょ、ちょっと凍夜、大丈夫なの?」

凍夜「ん? 100人くらいだろ? 余裕だ」

美也子「……(困惑)」

場面転換。

周りからは不良たちのうめき声が聞こえてくる。

不良「ば、バカな……。化物か」

凍夜「……くそ。思ったより、時間かかっちまったな。一時間目は間に合わんか……」

美也子「……凍夜って本当に強かったんだね」

凍夜「何を言ってるんだ。親父との戦いをいつも見てるだろ」

美也子「いや、だって、いつも凍夜って一撃でおじさんにやられるからさ。雑魚なのかなって……」

凍夜「……あれは、一撃に見えて、紙一重の戦いなんだよ」

美也子「面倒くさいから、そういうのいいから」

凍夜「うーむ。それにしても、どうやったら親父に勝てると思う?」

美也子「んー。後ろからバッドで襲うとか、スタンガン使う、……とか?」

凍夜「それはもう試した」

美也子「試したんだ」

凍夜「……はっ!? わかったぞ!」

美也子「なにが?」

凍夜「俺の弱点だ」

美也子「へー。どんな弱点?」

凍夜「必殺技がないところだ!」

美也子「んー。頭が弱いことの方が致命傷だと思うんだけど」

凍夜「特訓だ!」

美也子「特訓?」

凍夜「山ごもりだ!」

美也子「あー。そう。頑張ってー」

凍夜「よし、今から一緒に行くぞ!」

美也子「……え?」

場面転換。

山の中を歩く凍夜と美也子。

凍夜「くそっ! 見当たらん!」

美也子「えっと……何探してんの?」

凍夜「イノシシだ」

美也子「……なんで?」

凍夜「特訓と言えば、イノシシじゃないのか?」

美也子「……(絶句して)。あー、いやー、今どきイノシシはいないんじゃない?」

凍夜「そうか。なら仕方ない」

美也子「ん。じゃあ、帰ろ」

凍夜「滝にするか」

美也子「……え?」

場面転換。

滝にうたれている凍夜。

凍夜「うおおおおおおおお!」

美也子「……楽しい?」

凍夜「わはははははははは!」

美也子「あ、楽しそうだ」

場面転換。

滝から上がる凍夜。

凍夜「はあ、はあ、はあ……」

美也子「お疲れ。で、どうだった?」

凍夜「ふふふふふ。完成したぞ、俺の必殺技」

美也子「え? 滝にうたれただけで?」

凍夜「滝にうたれたことで、俺の防御力は格段に上がった! 名付けて、鉄塊の防御!」

美也子「……それ、必殺技なの?」

場面転換。

凍夜が親父に向かって、突っ込んでいく。

凍夜「うおおおおお!」

親父「ふんっ!」

凍夜「ぐはっ!」

凍夜が親父に殴られ、吹っ飛ぶ。

凍夜「く、くそ……」

親父「ふん。俺に勝つなんざ、100年早ぇ」

スタスタと親父が去っていく。

そして、入れ替わるように美也子が歩いて来る。

美也子「おーい、凍夜、生きてるー?」

凍夜「紙一重の勝負だった……」

美也子「必殺技、効かなかったね」

凍夜「……」

そこにある女性が現れる。

母親「ちょっと、あんた! こんなところで何してんだい!」

美也子「あ、凍夜のおばさんだ……」

親父「げっ! 母ちゃん!」

母親「出稼ぎから帰ってみれば……。あんた、新聞配達はどうしたんだい!?」

親父「いや……。毎朝、早く起きるのが辛くて……」

母親「酒ばっかり飲んでるからでしょ! もう、せっかく、私が話しつけて取ってきた仕事なんだと思ってんだい!」

親父「痛い! 痛いよ、母ちゃん。離して」

親父の耳を引っ張って引きずっていく母親。

凍夜「……地震雷火事親父」

美也子「ん?」

凍夜「親父じゃなくて、お袋だった」

美也子「……そうだね」

終わり。

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