■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
駿(しゅん)
海凪(みなぎ)
■台本
子供の頃の駿と海凪が走っている。
駿「おい、海凪、おいてくぞ」
海凪「あーん、駿くん、待ってよー」
場面転換。
10年後。
海凪「うう……。駿くん、テストで赤点取ったー。お母さんに怒られるー」
駿「ったく、だから、ちゃんと勉強しとけって言っただろ」
海凪「そんなこと言ったってー」
駿「ほら、泣いてても仕方ないだろ。追試落ちたら、休み中、ずっと補修だぞ」
海凪「そんなのイヤー」
駿(N)「海凪が泣き虫だ。小さい頃からそれは治らず、高校生になった今でも変わらない」
場面転換。
喫茶店。
海凪「ううー。感動したねー」
駿「……そこまでか?」
海凪「えー、駿くん、あれで感動しないなんておかしいよー」
駿「いや、確かに良い映画だったけどさ、泣くほどか?」
海凪「駿くんは、鉄仮面だね」
駿「……なんだそりゃ?」
海凪「感情がなくて表情が動かないってこと」
駿「海凪が感情出しすぎなだけだろ」
場面転換。
駿の家の庭。
海凪「うわーん! タロー!」
駿「……なんで、俺よりお前の方が泣いてるんだよ」
海凪「駿くんが泣かないからだよ。だから、私が代わりに泣いてるの!」
駿「……ホントか?」
海凪「……えーん! やっぱり、私も悲しいよー」
駿「ありがとな、海凪」
海凪「ん?」
駿「泣いてくれて」
海凪「……うん。うえーん!」
場面転換。
試合会場。
駿「……」
海凪「うわーん! 悔しい!」
駿「……だから、なんで海凪が泣くんだよ」
海凪「だって、駿くん、せっかく全国に行けそうだったのに……。これで引退なんだよ」
駿「……だから、なんで、俺よりもお前の方が泣いてるんだよ」
海凪「駿くんが泣かないからだよ」
駿「俺はこの結果に満足してる。後悔なく引退できるよ」
海凪「うわーん!」
駿「だから、俺よりも泣くなよ」
駿(N)「正直、海凪が泣いてくれて助かっている。本来は俺が泣くべきところで、俺は恥ずかしがって泣けない。でも、海凪が代わりに泣いてくれるから、俺はなんだか、心がスッキリするのだ」
場面転換。
空港。
海凪「……あっちでもちゃんとご飯食べるんだよ。駿くん、すぐご飯抜くんだから」
駿「わかってる」
海凪「体調にも気を付けるんだよ。アメリカはこっちと環境、全然違うんだから」
駿「わかってる」
海凪「元気でね」
駿「ああ」
海凪「……」
駿「……今回は泣かないんだな」
海凪「うん。……だって、駿くん、留学は夢だったんでしょ?」
駿「ああ」
海凪「だから、泣かない。嬉しいことだから」
駿「……」
海凪「笑顔でバイバイするって決めてたから。それに3年なんてすぐだよ、すぐ!」
駿「……海凪」
海凪「もう! なんで! 私がせっかく我慢してるのに、なんで駿くんが泣くの!」
駿「ごめん」
海凪「せっかく……せっかく我慢して……たのに……うえーーん!」
駿が海凪を抱きしめる。
駿「待っててくれ。戻ったらすぐに会いに行く」
海凪「うん! ……うん」
駿「じゃあな」
海凪「バイバイ」
駿(N)「あいつは泣き虫だ。……だけど、今回ばかりは、俺も人のことは言えないようだ」
終わり。