■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
統和(とうわ)
貴司(たかし)
弘毅(こうき)
生徒1~3
■台本
統和の部屋。
部屋で漫画を読んでいる統和。
パタンと漫画を閉じる。
統和「格好いいなぁ。傷は男の勲章かー」
そのとき、弘毅がオモチャの剣を持って走ってくる。
弘毅「とりゃー!」
統和「お、弘毅。良いところに来た。ちょっといいか?」
弘毅「なに?」
統和「その剣で俺を斬ってくれ!」
弘毅「いいの?」
統和が両手を広げる。
統和「こい!」
弘毅「やー!」
弘毅が袈裟斬りする。
統和「いってっ! マジ、痛った!」
弘毅「お兄ちゃん、大丈夫?」
統和「ああ。傷は男の勲章だよ」
弘毅「ふーん」
統和が自分の服の下を見る。
統和「うわ、ミミズ腫れしてる。オモチャでも結構な威力が出るんだな……」
場面転換。
放課後の教室。
生徒たちが帰ろうとしている。
貴司「統和―、帰ろうぜー」
統和「ああ……」
統和が神妙な顔をして、ミミズ腫れしたところを服の上から触れる。
貴司「どうした?」
統和「傷が疼く」
貴司「へ?」
統和「なんだろ。嫌な予感がする」
貴司「嫌な予感って?」
統和「わかんないけど……」
貴司「なんだそりゃ?」
すると、外からザーッと雨が降る音が聞こえてくる。
貴司「え? あ、雨だ!」
統和「ホントだ」
貴司「今日、予報でも降るなんて言ってなかったのに」
統和「そうだな」
貴司「俺、傘、持ってきてないよ」
統和「俺も」
貴司「けどさ、もし、あのまま帰ってたら、雨に降られてたんじゃね?」
統和「そうだな」
貴司「……もしかして、これじゃないのか?」
統和「え?」
貴司「お前が言った、嫌な予感がするって」
統和「あー、そうかもな」
場面転換。
夕方。外では雨が降っている。
場面転換。
教室内。
貴司「今日も雨かー。まあ、今日は傘を持ってきてるからな」
ガサガサとカバンを漁り始める貴司。
統和「あ、待った」
貴司「え?」
統和がミミズ腫れしているところを服の上から抑えている。
統和「たぶん、雨、止む」
貴司「えー、まさか……」
すると、嘘のように雨が止む。
貴司「おおおー! ホントに止んだ」
統和「……」
統和も呆然とする。
場面転換。
教室内。
統和が生徒たちに囲まれている。
生徒1「統和って、天気がわかるんだって」
生徒2「凄いねー」
生徒3「なあなあ、明日は? 晴れる?」
統和「え? えーっと……」
統和が目を瞑って、ミミズ腫れしているところを服の上から触る。
統和「……」
その様子をジッと見る生徒たち。
統和「明日は晴れるよ」
生徒たちがおおー、歓声を上げる。
場面転換。
カラッと晴れる空。
場面転換。
教室内。
統和が生徒たちに囲まれている。
生徒1「ホント凄いなー」
生徒3「ビックリしたよ」
生徒2「ねえ、どうやって、わかるの?」
ニヤリと笑う統和。
統和「傷だよ」
生徒3「傷?」
統和「胸のところに傷があるんだけど、それが痛むんだよ。そうすれば、雨が降るって感じ」
生徒1「へー」
統和「傷は男の勲章って言うからね。格好いい……」
生徒2「おじいちゃんみたい」
統和「へ?」
生徒1「あー、聞いたことある。古傷が痛むと、雨降るってやつ」
統和「……」
生徒1「そういえば、おばあちゃんも似たようなこと言ってたよ!」
教室内が笑いに包まれる。
統和「……」
場面転換。
教室内。
ポツリ、一人で椅子に座っている統和。
そこの貴司がやってくる。
統和「……はあ」
貴司「まあ、クラスの人気なんて、そんなもんだよ」
統和「だよなー」
貴司「それに、雨が降るのがわかるとか、地味だし」
統和「うるさいな」
貴司「それに、そろそろ傷も治るころだろ?」
統和「まあ、そうなんだけど……」
貴司「じゃあ、帰ろうぜ」
統和「ああ」
場面転換。
話しながら道を歩く統和と貴司。
貴司「……でさー」
そのとき、ポツリと雨の粒が落ちてくる。
貴司「冷たっ!」
そして、すぐに雨がザーッと降ってくる。
統和「げっ! どしゃぶりだ!」
貴司「走れ!」
走る2人。
軒下に駆け込む。
びしょびしょの2人。
貴司「……統和さー」
統和「ん?」
貴司「もう一回、傷を負ってくれ」
統和「……やだよ!」
終わり。