■概要
人数:5人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、シリアス
■キャスト
グレース ※年齢はト書き内の()内に明記
テオドア ※年齢はト書き内の()内に明記
ノーラン ※年齢はト書き内の()内に明記
子供1~2 5歳
■台本
村の外れでグレース(5)が村の子供たちにイジメられている。
グレース「うう……」
子供1「やーい、やーい! 化け物グレース!」
子供2「お前、実はモンスターの子供なんじゃないのか?」
グレース「違う、違うよ!」
子供1「あはははは! モンスターが怒ったー」
子供2「怖い、怖いー! ぎゃはははは」
グレース(N)「私の顔は生まれつき、醜かった。お父さんもお母さんも普通の顔なのに。私はこの顔がずっと嫌いだった。醜い、この顔が」
場面転換。
岩に顔を打ち付けているグレース。
グレース「うっ! うっ!」
母親が走ってくる。
母親「グレース、何やってるの! 止めなさい!」
グレース「うう……。もう嫌だよ、こんな顔、いらない。だから、石で潰すの」
母親「グレース。お願い、止めて」
母親がグレースを抱きしめる。
グレース「うう……。うわーん!」
場面転換。
グレース(16)の旅立ち。
グレース「それじゃ、お母さん、行って来ます」
母親「グレース。なにも冒険者なんて危ないことしなくても……」
グレース「いいの。村にいたらお母さんに迷惑がかかっちゃうし。それに、案外、モンスターと上手くやれるかもしれないよ、私」
母親「グレース……」
グレース(N)「私は小さい頃から冒険者になろうと決めていた。……というより、村を出るためには冒険者になるしかなかった。人知れず、どこかで野垂れ死ぬ。そうすれば、誰にも迷惑は掛からないから」
場面転換。
グレースが森の中を歩いている。
突如、上から木の枝を折りながら、テオドア(20)が落ちてくる。
グレース「え?」
テオドア「うわああああああ!」
ドサッと地面に落ちるテオドア。
テオドア「うぐっあっ!」
グレース「……だ、大丈夫ですか?」
テオドア「……ダメみたいだ」
場面転換。
洞穴の中。焚火の音。
テオドア「いやあ、助かった助かった。ありがとな。えーと……」
グレース「……グレースです」
テオドア「グレースか。それにしても、あんた凄いな」
グレース「え?」
テオドア「この回復魔法の技術。どこで覚えたんだ? 魔法を使っても、回復には3日はかかると思ってたんだけど」
グレース「どこでって言われても……独学です」
テオドア「独学!? マジか!」
グレース「村には魔法が得意な人がいなかったので……」
テオドア「へー。天才ってやつか。すげーな」
グレース「いえ、そんな! ……それより、その……驚かないんですね」
テオドア「え? 十分驚いてるけど?」
グレース「いえ、そうじゃなくて。その……私の顔……」
テオドア「顔? ……ああ、まあ、モテる顔じゃないよな。お互いさ」
グレース「……」
テオドア「それより、グレースは見たところ、一人だけど、仲間は? まさか、全滅した……とか?」
グレース「いえ! 元々……一人です」
テオドア「あ、そうなんだ。意外だな」
グレース「意外……ですか?」
テオドア「ここまで魔法の技術が高けりゃ、引く手あまただろ」
グレース「ははは……。こんな顔の女と一緒に旅したい人なんていませんよ」
テオドア「いやいや。そんなことないって」
グレース「そんなことありますよ。絶対にいません」
テオドラ「いやいや。いるって」
グレース「いません」
テオドラ「じゃあ、いたらパーティー組むか?」
グレース「いれば、組みますよ」
テオドア「よーし! じゃあ、決まりだな」
グレース「え?」
テオドア「俺はテオドア。これから、よろしくな、グレース」
グレース「……」
場面転換。
林の中。
巨大なモンスターに追いかけられている、テオドア(25)、グレース(21)、ノーラン(25)。
ノーラン「うおおお! テオドア、なんとかしろ!」
テオドア「無理に決まってんだろ、あんな巨大なの、どうすりゃいいんだよ」
ノーラン「特攻しろ! それしかない!」
テオドア「お前がやれ!」
グレース「はあ、はあ、はあ……。もう、ダメ」
グレースが倒れる。
テオドア・ノーラン「グレース!」
グレース「……二人とも、逃げてください。私が食べられているうちに、逃げ切れるはずです」
テオドア「くそ、ノーラン、やるしかねーぞ」
ノーラン「わかってるよ!」
テオドアとノーランが立ち止まる。
グレース「え? どうして……」
ノーラン「お前が死んだら、誰が俺の傷を治してくれんだよ!」
テオドア「同感!」
ノーラン「いくぞ、テオドア」
テオドア「うおおおお!」
ノーランとテオドアがモンスターに向って行く。
場面転換。
森の中。焚火の音。
ノーラン「……死ぬかと思った」
テオドア「意外とやれるもんだな」
グレース「二人とも、無茶し過ぎです!」
ノーラン「信じてたからさ」
グレース「え?」
テオドア「お前が治してくれるって」
グレース「テオドア、ノーラン……」
場面転換。
洞穴の中を歩く3人。
ノーラン「テオドア。ホントにこんなところにお宝があるのか?」
テオドア「この地図にはちゃんと書いてあるぞ。物凄いお宝があるって」
ノーラン「物凄いお宝かー。えへへへ。何買おうかな」
テオドア「そろそろ、装備一式、買い直したいよな」
ノーラン「あー、やだやだ。テオドアは真面目さんだな」
テオドア「どういうことだよ?」
ノーラン「こういうときはパーっと遊ぼうってなるだろ、普通」
テオドア「そうか?」
ノーラン「グレースは何か欲しい物はあるのか?」
グレース「え? 私は特に……」
ノーラン「なんだよ、秘密か?」
グレース「いえ、そんなんじゃ……」
ノーラン「ま、お宝はいつも通り、三当分だから、好きな物買えばいいさ」
グレース「……」
テオドア「そうだなぁ。グレースはもうちょっと、我がまま言っていいんだぞ。仲間なんだからさ」
グレース「……仲間」
ノーラン「ん? おい、見ろ! あれ、宝箱じゃねーか!?」
3人が走り寄る。
テオドア「間違いない。地図に載ってる宝箱だ。……さっそく、開けるぞ」
ノーラン「お、おう!」
ガチャリと宝箱を開ける。
ノーラン「……え?」
テオドア「……なにか紙が入ってるぞ」
ノーラン「えーと、横を見ろ。だって」
グレース「……」
テオドア「横? 壁に何かるか?」
ノーラン「ん? んー。いや、なんもねえな」
テオドア「なんだ、ガセか」
ノーラン「そんなこったろーと思ったぜ。ほら、帰るぞ」
テオドア「そうだな……」
2人が歩き出す。
グレース「……」
テオドア「グレース、どうした?」
グレース「いえ、何でもありません」
グレース(N)「確かに宝箱には、かけがえのない凄い宝物が入っていた。……ううん。既に宝物を手に入れていたことに気づかせてくれた。隣にいる仲間。それが私にとっての、世界で一番大切な宝物なのだ」
終わり。