マーメイドプリンセス
- 2024.06.10
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:5人以上
時間:20分
■ジャンル
ボイスドラマ、童話、ラブコメ
■キャスト
オリビア
ネイサン
ケイリー
キアラ
魔女
男
船員
町人1~2
■台本
海の中。泡が登っていく音。
オリビア「……(登っていく泡を見上げる)」
ケイリー「どうしたの、オリビア。ボーっと上を見上げちゃって」
オリビア「ねえ、お姉ちゃんは上に上がったことってあるの?」
ケイリー「上って……海上ってこと?」
オリビア「そう。陸地」
ケイリー「(ため息)あのねぇ。上がれるわけないでしょ。陸なんかに上がったら、半日で干からびるわよ」
オリビア「そうなんだけどさ。行ってみたいな。綺麗なところなんでしょ?」
ケイリー「人間は陸地、人魚は海って昔から決まってるの。人間が海の中じゃ溺れて死んじゃうように、人魚は陸地じゃ干からびちゃうのよ」
オリビア「……わかってるけどさぁ」
ケイリー「隣の海は青く見えるものよ。それよりも、あんたはもうすぐ成人の儀があるんだから、歌の一つでも歌えるようにしておきなさいよ」
オリビア「はーい……」
また泡がボコボコと地上へと登っていく。
場面転換。
オリビアが泳ぎながら歌っている。
オリビア「ららら~♪」
そのとき上からバシャバシャと音がして、色々なものが海中に沈んでくる。
オリビア「わわわ! なになに? なんでいろんなものが海中に振ってくるわけ?」
バシャバシャと音がし続ける。
オリビア「……そっか。今日は嵐が来るんだっけ? もしかして、人間が船でも出してたのかな? ……ちょっとだけ、見てこよっと」
海上へと上がっていくオリビア。
場面転換。
嵐で海面が大荒れ。
船が軋みを立てて、沈んでいく。
船員「王子! こっちです!」
ネイサン「僕に構うなっ! 先に脱出しろ!」
船員「いけません、王子!」
船が大きな音を立てて割れ、ネイサンが海に落ちる。
ネイサン「うわああっ!」
船員「王子! 王子ー!」
様子を見ていたオリビア。
オリビア「あらら。大変」
潜って泳いでいく。
ネイサン「……」
オリビア「大丈夫? って、気絶してるのか」
ネイサン「……」
オリビア「あっ! 人間って海の中じゃ息できないんだっけ?」
オリビアがネイサンを抱えて海面へと向かっていく。
場面転換。
岩礁。
オリビア「よいしょっと」
ネイサンを岩の上に寝かせる。
オリビア「もしもーし、生きてますかー?」
ネイサン「う、うう……」
オリビア「よしよし。生きてるみたいね。……それにしても、綺麗な人」
オリビアがジッとネイサンを見る。
キアラ「いました! こっちですわ!」
遠くから声がする。
オリビア「やばっ!」
オリビアが海に潜り、少しだけ顔を海面から出す。
男「キアラ様、よく見つけましたな」
キアラ「岩場から、泳いでるのが見えましたの」
男とキアラがネイサンに駆け寄る。
キアラ「いけませんわ。酷い傷」
男「すぐに運びましょう」
ネイサンを抱えて行ってしまう。
オリビア「……よかった。これで大丈夫だね」
オリビアが海に潜っていく。
場面転換。
岩場。ネイサンが海を見ている。
ネイサン「……」
それを海面から少しだけ顔を出して見ているオリビア。
オリビア「……」
そこにキアラがやってくる。
キアラ「ネイサン。またここにいたんですのね」
ネイサン「なあ、キアラ。君が僕を助けてくれたんだよな?」
オリビア(N)「違うわよ! 私! 私よ!」
キアラ「ええ。ここに打ち上げられていたのを見つけましたわ」
ネイサン「そうか……」
キアラ「さ、身体が冷えますわ。行きましょ」
ネイサン「ああ……」
キアラとネイサンが行ってしまう。
オリビア「……」
場面転換。
海の中。
ケイリー「はあ? 陸に上がりたい!?」
オリビア「お願い。なんかいい方法ない? 数日で良いんだ。伝えたいことがあるの」
ケイリー「……すぐ戻るって約束できる?」
オリビア「うん」
ケイリー「……おばさんに相談してみなさい」
オリビア「魔女の?」
ケイリー「そう。きっと相談に乗ってくれるわ」
場面転換。
魔女「ダメダメダメダメ!」
オリビア「お願い! パパっと行って、一言言うだけだから」
魔女「それ、絶対恋じゃない! 会って話なんてしたら、もう終わりよ。恋の荒波に飲み込まれるわ」
オリビア「……恋? 恋なの?」
魔女「ああー。やっぱり気づいてなかったか」
オリビア「お願い、おばさん。ちゃんと伝えたいの。私が助けたんだよって」
魔女「あのね。人魚と人間は結婚できないの!」
オリビア「別に結婚したいなんて言ってない!」
魔女「言い出すに決まってるわ! しかも、そんなこと伝えて、相手があんたのこと好きになっちゃったらどうするの!?」
オリビア「それは……それで……いいかも」
魔女「良くない!」
オリビア「じゃあ、会うだけ! 助けたことは言わないから! ね?」
魔女「……三日だけ。しかも余計なこと言わないように、声も出せなくする。それでもいい?」
オリビア「うん!」
魔女「この魔法は危険だから、しっかり聞いて。もし、三日しても海に戻らなかったら、あんたは泡になって消えちゃう。だから、絶対の絶対に、海に戻ってきなさい。いいわね?」
オリビア「わかった」
場面転換。
岩場に倒れているオリビア。
そこにネイサンがやってくる。
ネイサン「なっ! お、おい、大丈夫か?」
オリビア「……っ」
オリビア(N)「声が出ない。……あ、そっか魔法か」
ネイサン「遭難か? とにかく、医者に診てもらおう。一緒に来てくれ」
ネイサンがオリビアを抱える。
オリビア(N)「きゃー! 抱えられちゃった。わーわー! すごーい! 夢みたいー!」
場面転換。
医者「事故のショックでしょうね。声が出せなくなってます」
ネイサン「そうか。まあ、回復するまで城でゆっくりして行くといい」
オリビア(N)「……ネイサン、優しい」
場面転換。
夜の街を一緒に歩くオリビアとネイサン。
ネイサン「夜なのに賑わいのある町だろ?」
オリビア「っ」
ネイサン「お、ホットドックだ。食べようか」
オリビア「っ」
ネイサン「食べたことないのか? じゃあ、初体験だな。美味しいから、きっと気に入るはずだ」
場面転換。
ネイサンとオリビアがホットドックを食べる。
ネイサン「な? 美味しいだろ?」
オリビア「っ(頷く)」
場面転換。
岩場を歩くネイサンとオリビア。
ネイサン「すまない。散歩に付き合わせてしまって」
オリビア「っ(首を横に振る)」
ネイサン「……君は恋をしたこと、あるかい?」
オリビア「……」
ネイサン「僕はここで恋というものを知ったんだ」
オリビア「っ!?」
ネイサン「僕を助けてくれた人に……」
オリビア(N)「それ、私! 私よ! 私がネイサンを助けたのよ!」
そこにキアラがやってくる。
キアラ「やっぱり、ここでしたわね」
ネイサン「キアラ」
オリビア(N)「もう、もう! せっかく、二人きりだったのに!」
キアラ「今日は打ち合わせがあるって言いましたわよね?」
ネイサン「ああ、そうだったね」
キアラ「しっかりしてほしいですわ。式は明日ですのよ!」
ネイサン「ごめんごめん」
オリビア(N)「……式?」
場面転換。
町の中を一人歩くオリビア。
オリビア「……」
周りから噂話が聞こえてくる。
町人1「明日はキアラ様の結婚式だ。盛り上げないとな」
町人2「キアラ様のお相手、見た? 素敵な男の人なの。お似合いだわ」
オリビア(N)「なによ。ネイサンを助けたのは私なのに。あの、キアラって人が助けたと勘違いしてる。……本当は、私が……私が……結婚相手だったかもしれないのに……」
場面転換。
崖の上に立つオリビア。
オリビア(N)「なんで、こんなに悲しいんだろ。なんで、こんなに涙が出てくるんだろう。一目、会うだけで、それだけでよかったのに」
舌では波の音が響く。
オリビア(N)「今日がおばさんとの約束の日」
波の音が響く。
オリビア(N)「そして、ネイサンの結婚式の日」
波の音が響く。
オリビア(N)「ふふ……。このまま泡になるのもいいかもね。ネイサンへの想いと一緒に」
そこにネイサンがやってくる。
ネイサン「はあ、はあ、はあ。どうして崖なんかにいるんだ? さ、城に帰ろう」
オリビア「っ(首を横に振る)」
ネイサン「え? どうして?」
オリビア(N)「……ネイサンには泡になるところは見られたくない。ここから飛び降りれば見られないで消えることができる。……さよなら、ネイサン」
オリビアが崖から飛び降りる。
ネイサン「なっ!」
ネイサンがオリビアを追って、飛び降りる。
オリビア(N)「え? どうして?」
ネイサン「くっ」
空中でネイサンがオリビアを抱える。
そして、海へと落ちる。
海中の音。
ゴボゴボと空気の泡の音。
オリビア「ネイサンっ!」
オリビアがネイサンを抱えて、海上へと向かう。
ネイサン「ぷはっ! ごほ、ごほ、ごほ」
オリビア「ネイサン、大丈夫?」
ネイサン「……声が」
オリビア「あっ! 元に戻ったから声も出るようになったのかな?」
ネイサン「人魚だったのか……」
オリビア「あ、う、うん……。その……」
ネイサン「やっぱり、君だったんだな。あのとき、僕を助けてくれたのは」
オリビア「え? 気づいてたの?」
ネイサン「意識が朦朧としてたけど、君のその赤い髪を覚えてたからね」
オリビア「でも、それなら、どうしてキアラと結婚を?」
ネイサン「キアラと結婚? 何を言ってるんだ?」
オリビア「でも、今日、結婚式だって」
ネイサン「ああ。キアラと隣町の地主の息子との結婚式だな」
オリビア「……ネイサンとキアラの結婚式じゃないの?」
ネイサン「はははは。キアラは従妹だよ」
オリビア「そう……だったんだ」
ネイサン「……やっと会えた。……あのとき、助けてくれて、ありがとう」
オリビア「……うん」
場面転換。
海上では小舟に乗ったネイサンと、海面に顔を出したオリビアが話している。
ネイサン「結婚式、遅刻したの、スゲー怒られたよ」
オリビア「あははは。今度、一緒に謝ってあげるよ」
ネイサン「いや、オリビア、陸に上がるとき、声出せないだろ」
オリビア「今度は声を出せるようにおばさんに頼んでみる」
ネイサン「あー、ならさ、おばさんに俺が人魚になれる魔法がないか聞いてみてくれないか?」
オリビア「あー、いいね、それ。聞いてみるよ」
場面転換。
海の中。
魔女「……あーあ。やっぱり、こうなるんじゃないかって思ったのよ」
ケイリー「いいんじゃない? 幸せそうだよ。二人とも」
魔女「……もう、おじさんになんて言えばいいのよ。人間と恋に落ちたなんて」
ケイリー「父さんには私も、一緒に話すよ」
魔女「……いっそ、陸に逃げようかしら」
ケイリー「あははは。いいかも。さすがの父さんも陸までは追わないと思うし」
魔女「……もう。最悪……」
ケイリー「あ、ねえ、おばさん。今度、私も陸に上がってみたい」
魔女「ダメダメダメダメ! 絶対ダメ!」
場面転換。
岩場でネイサンとオリビアが楽しそうに笑っている。
ネイサン「はははははは」
オリビア「あははははは」
終わり。
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