【声劇台本】おむすびころりん

【声劇台本】おむすびころりん

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■概要
主要人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、童話、コメディ

■キャスト
青年
母親
ねずみ1
ねずみ2
ナレーション

■台本

ナレーション「昔々、あるところに一人の青年がおりました。青年はいい年をして親のスネをかじって暮らしています。そんなある日、ついに母親が怒り狂ってしまいました」

母親「というわけで、働きなさい」

青年「無理です!」

母親「なら、ご飯は出さないからね」

青年「え? じゃあ、俺、どうしたらいいの?」

母親「働きなさいよ」

青年「それは無理だよ。だって、俺、働きたくないんだもん」

母親「お母さんね、もうあんたにご飯出したくないのよ」

青年「……お母さん、親だよね。子供を育てるのが義務なんじゃないの?」

母親「お母さんはね、あんたに養って悠々自適な生活を送りたいから、あんたを生んだの」

青年「そこに愛情はないの?」

母親「最近のあんたを見てると、殺意しか湧かない」

青年「ひどいよ! 子供は親が選べないのに!」

母親「親も、子供を選べないのよね……」

青年「俺、どうしたらいいんだよ」

母親「働けよ」

青年「いや、無理だって! だって、三十年間、一度も働いたことないんだよ? 今更無理だって!」

母親「お母さん、これ以上、あんたを養うのは無理。だって、三十年間、ずっと無駄飯食らいだったのよ?」

青年「じゃあ、今日のところはハローワーク行くから許して」

母親「あんたの手口はわかってる。どうせ行くだけで、希望にそった求人が出てないとか言って帰ってくるんでしょ?」

青年「……」

母親「ってわけで、こっちで指定するわ。はい、これ」

青年「……斧?」

母親「木を切って、薪にして売るのよ」

青年「ええー、面倒くさい」

母親「そっか。じゃあ、お母さん、手伝ってあげる。これであんたの頭、カチ割るの」

青年「……職業、変わってるよ?」

  場面転換。

  森の中を歩く青年。

青年「とはいってもなー。木を切るっていっても、どの木を切ればいいんだろ?」

  ドサッと、座り込む青年。

青年「ふう、疲れた。斧もって歩くだけでも、重労働だよ。お腹減ったから、もうお弁当食べようっと」

  ガサガサとお弁当を広げる青年。

青年「なんだよ、おにぎりかよ! しかも、おかずもねえし! うう……。肉食べないと力出ねーっての!」

  そのとき、ツルっと手が滑って、おにぎりを落とす。

青年「しまった!」

  ころころと転がっていくおにぎり。

青年「待ってくれ! 待てって!」

  コロコロコロ転がり続けるおにぎり。

青年「はあはあはあ。もう無理、走れない」

  おにぎりがストンと穴に入っていく。

青年「あー! ダメダメダメ!」

  ヒューっと穴を落ちていく。

青年「あー……穴に落ちちゃった」

  ため息をつく青年。

青年「仕方ない。諦めるか。まあ、どっちにしても土だらけのおにぎりは、食べる気しないし」

  そのとき、穴の中から歌声が聞こえる。

ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん。おむすびころりん、すっとんとん」

青年「なんだ、穴から歌声が聞こえるぞ?」

ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん。おむすびころりん、すっとんとん」

青年「……まあ、いいや。さっさと残りのおにぎり食べようっと」

  そのとき、さらに歌声が大きくなる。

ねずみ「おむすびころりん、すっとんとん! おむすびころりん、すっとんとん!」

青年「……うるさいなぁ。他のところで食べるか」

ねずみ1「おかしいな。こうやって歌えば、またおにぎりが降ってくるって聞いたんだけど」

ねずみ2「やっぱ、デマだったんじゃん? かなり古い言い伝えだったし」

青年「はあ、下手な歌を歌ったら飯がもらえるなんて、そんな美味い話があるかよ」

ねずみ1「ん! 人間の声だ! 追加がもらえるかもだぞ! おむすびころりん! すっとんとん! おむすびころりん! すっとんとん!」

青年「いやいやいや。やらねーって」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。おにぎりくれるといいことあるよ」

青年「……マジか?」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。僕たちが集めた金銀財宝。おむすびくれたら、もらえるかも?」

青年「よし! わかった。財宝のためなら、おにぎりくらい諦めるぜ。ほら、おむすびだ!」

  青年がおにぎりを穴の中に放り込む。

青年「……」

ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」

青年「いや、歌はいいから、財宝よこせ」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。これだけじゃたりないよ」

青年「ちっ! 足元見やがって。……仕方ない。もうおにぎりはないからな。また明日来るか」

  場面転換。

青年「よお、今日は昨日より多めにおにぎり作ってもらったぞ」

ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」

青年「いや、もう歌はいいよ。……ほら」

  青年が穴におにぎりを放り込む。

青年「……」

ねずみ1「おむすびころりん、すっとんとん」

青年「ほら、早く、財宝よこせって」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

青年「くそ、ほら、今日の分、全部だ!」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

青年「ふざけんな! 二日分のおにぎりを投資したんだぞ!」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。金銀財宝と二日分のおにぎりじゃ、釣り合わないよ」

青年「まあ、そりゃそうか……」

  場面転換。

青年「ほら、おにぎりだ」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

  場面転換。

青年「ほら、おにぎりだ」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

  場面転換。

青年「ほら、おにぎりだ」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

  場面転換。

青年「ほら、おにぎりだ」

ねずみ2「おむすびころりん、すっとんとん。まだまだ足りないよ」

  場面転換。

猫「にゃー!」

ねずみ2「!」

青年「いい加減にしろよ、ねず公ども。最後の忠告だ。財宝をよこせ。さもないと、おにぎりじゃなくて、猫を放り込むぞ」

ねずみ2「……お、おむすびころりん、すっとんとん。わかりました。財宝を差し上げます」

青年「うむ。最初からこうすればよかったな」

ねずみ1「……どうぞ」

青年「……なんだ、このガラクタ」

ねずみ2「僕たちが一生懸命、集めた財宝です」

青年「……鉄屑や、金メッキばっかりじゃねーか」

ねずみ2「そう言われましても。これで、全部ですので」

青年「……くそー! 納得いかねー!」

ナレーション「こうして、青年は世の中、美味い話はないと知り、その後はなんとなく、ちゃんと働くようになりましたとさ。めでたしめでたし」

終わり

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