平穏な家庭

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
慎吾(しんご)
恭弥(きょうや)
真希(まき)

■台本

朝のリビング。バタバタしている。

恭弥「母さん、俺のジャージは?」

真希「洗濯して、畳んで、部屋に置いてあるわよ」

恭弥「え? マジ?」

バタバタと階段を上っていく音。

慎吾「それじゃ、行ってきます!」

真希「あっ、お父さん! お弁当!」

慎吾「ありがとう! 行って来る!」

真希「行ってらっしゃい、気を付けてね」

慎吾が慌ててドアを開けて出ていく。

同時に恭弥が降りて来る。

恭弥「行ってきまーす!」

真希「恭弥、朝ご飯は?」

恭弥「売店でなんか食うからいい!」

真希「まったく……。お小遣い無くなっても知らないわよ」

恭弥「やべー! 遅刻する!」

真希「行ってらっしゃい、気を付けてね」

恭弥が慌ててドアを開けて出ていく。

急に家の中がシーンと静かになる。

真希「……さてと。パートの時間まで、お掃除しないと」

場面転換。

家の中。食卓を真希、恭弥、慎吾が囲っている。

恭弥「(がっついている)んぐ! んぐ!」

真希「恭弥。いっぱいあるんだから、がっつかないの」

慎吾「……母さんも少しは急がないと、唐揚げ、全部、恭弥に食べられるぞ」

真希「いいのよ。私は別に」

慎吾「あっ、恭弥! おまっ! ホント、食いすぎだって! 父さんのなくなるだろ!」

恭弥「早い者勝ちだって」

真希「ふふっ」

場面転換

リビング。

ソファーに座ってテレビを見ている慎吾。

真希「はい、コーヒー」

慎吾「お、ありがとう」

横に真希が座る。

真希「ねえ、あなた」

慎吾「ん? どうした?」

真希「私ね、今、凄く幸せよ」

慎吾「なんだよ、急に? なんかいいことでもあったのか?」

真希「ううん。何もない。……何もないから幸せだなーって」

慎吾「なんだそりゃ? そんなの刺激がなくてつまらないだろ」

真希「結婚前……。あなた、言ってくれたわよね。僕は平穏な家庭しか築けない。でも、その平穏は絶対に壊さないって」

慎吾「はは……。プロポーズの言葉、まだ覚えてるのか? 恥ずかしいな」

真希「ありがとう、あなた。私にとって、この平穏が何よりの幸せよ」

慎吾「(咳払いして)改めて誓うよ、真希。俺はこれからもこの平穏を守ってみせる」

真希「……うん、約束よ」

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

慎吾が家に入って来る。

慎吾「ただいまー。今日は早く上がれたから、寿司買って来た……って、母さん!

おい! 大丈夫か!」

恭弥が階段から降りてくる音。

恭弥「うるさいなぁ……って、母さん!? 母さん!?」

場面転換。

仏壇の前。

チーンというりんが鳴る音。

慎吾「真希。フルーツ買って来たんだ。……メロンが安くてさ……」

沈黙が続く。

慎吾「う、うう……」

場面転換。

朝のリビング。

恭弥「……行ってきます」

慎吾「あ、恭弥、お弁当」

恭弥「あ、うん。ありがとう」

弁当を受け取る恭弥。

恭弥「父さん、無理しなくていいから」

慎吾「え?」

恭弥「昼は売店で買うからさ」

慎吾「けど……」

恭弥「父さんだって、朝は忙しいだろ? それに……父さんの弁当、あんま美味しくないから」

慎吾「……」

恭弥「じゃあ、行ってきます」

慎吾「……」

場面転換。

ガチャリとドアが開いて慎吾が家に入って来る。

慎吾「おーい、恭弥! 弁当買ってきたぞ」

階段から降りて来る恭弥。

恭弥「食ったからいいよ」

慎吾「え? そうなのか?」

恭弥「もう10時だし」

慎吾「……すまん」

恭弥「それに、そこの弁当、もう飽きた」

慎吾「……この時間に開いてるのあそこしかないんだ」

恭弥「そういえば、トイレットペーパーなくなってる」

慎吾「え? この前、買ったばかりなんだけどな。どこに置いたっけ?」

恭弥「知らないよ」

場面転換。

洗面台。

歯を磨いている慎吾。

口をすすいで、水を吐き出す。

慎吾「ふう。……あれ? なんだ、この黒いの? ……うわ、カビだ。こんなところにカビなんて生えたことなかったのにな」

場面転換。

朝のリビング。

階段から恭弥が降りて来る。

恭弥「父さん。俺のジャージ、汗くせーんだけど」

慎吾「洗濯機に入れておいてくれ。週末に洗うから」

恭弥「……母さんは汗臭くなる前に洗ってくれたんだけど」

慎吾「……っ!? 母さんはもういないんだ! そんなことはわかってるだろ!」

恭弥「……わかってるよ! それくらい!」

慎吾「じゃあ、グダグダとくだらないこと言うなよ!」

恭弥「わかったよ! もう二度と言わねーよ!」

ズカズカと歩いてドアを開けて出ていく恭弥。

バタンと勢いよくドアを閉めていく。

慎吾「……」

部屋の中が静まり返る。

慎吾「……真希」

回想。

真希「結婚前……。あなた、言ってくれたわよね。僕は平穏な家庭しか築けない。でも、その平穏は絶対に壊さないって」

慎吾「はは……。プロポーズの言葉、まだ覚えてるのか? 恥ずかしいな」

真希「ありがとう、あなた。私にとって、この平穏が何よりの幸せよ」

回想終わり。

慎吾「う、うう……。真希。平穏な家庭を守ってくれてたのは、お前だったんだな。毎日が大変だったのに、いつも笑顔で……俺たちに平穏な家庭をくれたんだ……。ごめん、ごめん……真希」

回想。

慎吾「(咳払いして)改めて誓うよ、真希。俺はこれからもこの平穏を守ってみせる」

真希「……うん、約束よ」

回想終わり。

慎吾「そうだ……。約束……したんだっけ」

場面転換。

ガチャリとドアが開き、恭弥が家に入って来る。

部屋の中から掃除機の音がする。

慎吾「恭弥、お帰り」

掃除機を止める慎吾。

恭弥「あれ? 父さん? 何やってんの?」

慎吾「掃除だ。ずっとしてなかったからな」

恭弥「いや、それもだけど仕事は?」

慎吾「上司に頼んで、少し休みを貰った。今までサボってた分、家のことやるためにな」

恭弥「ふーん。……って、晩飯も作ったの?」

慎吾「ネットのレシピ通りに作ったから、変な味にはなってないはずだ」

恭弥「……」

慎吾「ごめんな、恭弥。母さんがいなくなって、俺、ずっとお前と向き合うことから逃げてた。これからはちゃんと向き合う。この家の平穏は俺が守るから」

恭弥「貸して」

慎吾「え?」

恭弥「掃除機」

慎吾「あ、うん」

掃除機のスイッチを入れ、掃除を始める恭弥。

恭弥「ごめん、父さん。俺も家族なのにさ」

慎吾「……」

恭弥「この家の平穏は2人で守っていこうぜ」

慎吾「……ああ。そうだな」

終わり。

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