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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、近未来ファンタジー、コメディ

■キャスト
アラン
母親
教授
男子学生
所長
研究員
キャロル

■台本

家の中。

アラン「お母さん、喉乾いた。飲み物持ってきてー」

母親「自分でやりなさい!」

アラン「ええー。面倒くさい」

母親「なら、喉乾いたのは我慢しなさい」

アラン「……」

母親「それより、アラン。あんた、宿題したの? 明日から学校なんでしょ?」

アラン「面倒くさいからやらないよ」

母親「……先生に怒られても知らないわよ」

アラン「怒られればいいだけなんだから、楽でしょ」

母親「あんたねぇ。そんなんじゃ、将来、困るわよ」

アラン「んー。ずっと家にいるからなんとかなるんじゃない?」

母親「……」

ツカツカと母親が近くにやってくる音。

母親「お父さんとも相談したんだけど、あんた、高校卒業したら家から追い出すからね」

ガバッと起き上がる音。

アラン「ちょ、ちょっと! どういうこと?」

母親「あんたの、その無気力は甘やかすとマズイって話になったのよ」

アラン「無気力じゃなくて、効率的って言ってよ」

母親「とにかく! あんたが甘えられるのは高校までだからね!」

アラン「急にそんなこと言われても……」

母親「残り2年あるんだから、全力で頑張りなさい」

アラン「……」

場面転換。

アランの部屋。

カチカチとパソコンを操作する音。

アラン「……うん。高校卒業後に就職はないな。効率が悪すぎる。……となると」

カチカチとパソコンを操作する音。

アラン「よし。これだな」

場面転換。

母親「なによ。やればできるじゃない。まさか、大学合格だけじゃなくて、奨学金まで貰えるなんてね。発破かけてよかったわ」

アラン「じゃあ、母さん。これからは大学の寮に入るから」

母親「うん。たまには帰ってきなさいよ」

アラン「……面倒くさい」

母親「はあ……。そういうところは変わってないわね」

場面転換。

大学の研究室。

パソコンのキーボードを打つ音。

アラン「……」

教授「おーい、アラン。私はもう帰るぞ」

アラン「教授は先に帰ってください。僕はもう少し残ってやっていきます」

教授「やれやれ。君は本当に熱心だな。ここまで凄いのは私が見てきた中でも、ダントツだ」

アラン「恐縮です」

教授「君のAI理論は最先端と言っていい」

アラン「いえ、僕なんてまだまだです」

教授「大学院には進むんだろ?」

アラン「ええ、そのつもりです」

教授「君には期待しているぞ」

アラン「はい」

場面転換。

大学内の廊下を歩いているアランと男子学生。

男子学生「いやあ、アランさんのAIについてのレポート、学界でも話題だって話ですよ」

アラン「……」

男子生徒「次の研究はどんなアプローチでいくんですか?」

アラン「いや、AIの研究はここまでだ」

男子生徒「え? なんでですか?」

アラン「これ以上は必要ないからだ」

男子生徒「何言ってるんですか!? このまま研究を続ければ、AIの分野の第一人者になれそうなんですよ」

アラン「このまま続けても、効率が悪い」

男子生徒「へ? ……いや、今更、研究分野を変える方が効率悪いですって」

アラン「……」

立ち止まってドアを開ける音。

教授「おお、アラン。ちょうどよかった。君が希望していた会社から内定が出たぞ」

アラン「僕の条件は飲んで貰えましたか?」

教授「ああ。寮は無いが、借家を用意するそうだ。手続等も会社の方でやってくれるそうだ」

アラン「そうですか」

教授「だが、本当にいいのか? 医療ロボの開発なんて、君の専門外だろ。給料だって、大分低いぞ」

男子生徒「ええ! 医療ロボの開発!?」

アラン「いいんです。最低限の生活が出来れば」

男子生徒「アランさん! 絶対、ここに残って研究した方が、いいですって!」

アラン「すまんな。決めたことなんだ」

場面転換。

機械が動く音。

アラン「……」

所長「アランさん、私はもう上がりますが……」

アラン「先に帰ってください。僕はもう少しだけ、テストしていきます」

所長「いやあ、君には参るな。ズブの素人状態でここに来て、3年でここの誰よりもロボット工学について詳しい」

アラン「恐縮です」

所長「君のおかげで、研究の進みは3倍になったよ」

アラン「ありがとうございます」

所長「これから、本格的にアンドロイドの制作に入る。君には期待しているからな」

アラン「はい」

場面転換。

スタスタと滑らかに歩く音。

研究員「おおー! 凄い!」

所長「まさか、ここまで滑らかに動くようになるなんて」

アラン「……まだまだ、これからです」

所長「そ、そうなのか。君の情熱は、本当に凄いな」

場面転換。

パソコンのキーボードを打ち込む音。

アラン「よし、これでシステムの構築は出来た。あとは、色々と教えていくだけだ」

場面転換。

アラン「キャロル。わかるか?」

キャロル「はい。アラン様」

アラン「それじゃ、あそこにある、コップを持ってきてくれないか?」

キャロル「はい。わかりました」

キャロルが滑らかに歩き、コップを取って、戻って来る。

キャロル「どうぞ」

アラン「ありがとう」

ワッと歓声と拍手が沸き起こる。

所長「すごい! 一体、これはどういうことなんだ?」

アラン「キャロルのコントロール基盤の所にAIを埋め込みました。あとは色々と教えていけば、できることも増えていきます」

所長「素晴らしい!」

研究員「凄いです、アランさん!」

アラン「……」

場面転換。

所長「医療用アンドロイドの試作品、完成だ!」

盛大な拍手が巻き起こる。

所長「これから、量産に向けて改良していくぞ。これで一気に、我が社が医療関係のシェアを奪っていく! 忙しくなるぞ!」

盛大な拍手と歓声が巻き起こる。

所長「アラン。これからも頼むぞ」

アラン「いえ、今日で退職します」

所長「は?」

アラン「退職金代わりに試作品、一体、貰っていっていいですか?」

所長「そ、それは構わんが……本当に辞めるのか? ここから我が社は急成長して、給料もグッと上がるはずだぞ」

アラン「いえ、面倒なので……」

所長「……」

場面転換。

アランの家。

アラン「キャロル。喉乾いた。飲み物持ってきてくれ」

キャロル「はい」

キャロルが歩いて来る。

キャロル「どうぞ」

アラン「ありがとう。……ふう。ようやく、これからは面倒なことをしなくて済みそうだ」

終わり。

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