不思議な館のアリス 予言

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■概要
人数:1人
時間:3分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
アリス

■台本

アリス「こんばんは。アリスの不思議な館にお越しいただき、ありがとうございます」

アリス「この前は妹が失礼したようで。本当に申し訳ありません」

アリス「ただ、妹も悪気があったわけではなく、あなたに会えなかったことが寂しかった、というのはどうかわかってあげてください」

アリス「ふふ。もちろん、私も、ですがね」

アリス「あなたと話すのを楽しみにしていた分、会えない時間が長いと、どうしてもネガティブに考えてしまうものです」

アリス「なにか、怒らせてしまったのではないか、と……」

アリス「たとえ、次に会うまでが随分と先だったとしても、いつ来るのかがわかっていれば、それほど、不安に思うことはないのですがね」

アリス「……いえいえ。あなたに、次、いつくるのかをあらかじめ言っておいて欲しいというわけではありません」

アリス「それは、正直、あなた自身もわからないことではないですか?」

アリス「来る予定があったとしても、何かの用事ができてしまい、来れない、なんてこともあるでしょうから」

アリス「それこそ、予言でもできない限りは……」

アリス「ふふ。そういえば、あなたは予言などは信じたりしますか?」

アリス「以前は、ノストラダムスの予言が世間で流行ったこともありましたね」

アリス「あのブームが終わってからも、毎年、なにかしらの予言が出てくるのは、人間は未来を知ることに羨望を抱いているからかもしれません。

アリス「まあ、単に面白がっているだけの人もいるとは思いますが」

アリス「あなたはどうですか?」

アリス「予言などは信じるタイプですか?」

アリス「……ふふ。実に、あなたらしい」

アリス「いいことは信じて、悪いことは信じない、ですか」

アリス「とてもいい考えだと思います。予言に振り回されてしまっては、未来の予知ができたとしても、意味を成しませんから」

アリス「では、今日は予言にまつわるお話をしましょうか」

アリス「……その男は昔から、妙な夢を見ることが多かったようです」

アリス「その夢は実にリアルで、匂いや感触さえも感じるほどだったみたいですね」

アリス「そして、その夢が現実となることで、男はその夢が予知夢だと気づきました」

アリス「ですが、男にとって、ただの夢と予知夢との違いがわからなかったようです」

アリス「割合的には9対1だと言っていました」

アリス「いえ。ただの夢の方が9ですよ。それでも1割が未来予知だなんて、凄いと思いませんか?」

アリス「ですが、周りはそうは思わなかったようです」

アリス「適当なことを10個言い、その中の1個が当たっただけだと言って、最初は男を持て囃していたものたちも、次第に男の元を去っていったようです」

アリス「それでも、男は夢を見れば、毎回、周りに警告していたそうです」

アリス「そして、男が50歳を越えるころには、変人というレッテルを張られ、誰も男のいうことは信じなかったようです」

アリス「そんなある日のことです。男は衝撃的な夢を見ました」

アリス「それは世界が崩壊する夢です」

アリス「男はそれが、予知夢だと確信しました。そのくらい、インパクトのある夢だったようですね」

アリス「今回だけは信じて欲しい。男はそういって、周りに対策するように呼びかけました」

アリス「もちろん、男を信じるものは一人もいませんでした。男だけが、世界の崩壊に対しての準備をしていたのです」

アリス「そして、その日は来ました」

アリス「本当に、男が見た夢は予知夢だったのです」

アリス「男が見たままの通り、世界は終わりを告げました。その中で、準備をしていた男だけが生き残ることができたのです」

アリス「……ふふ。どうですか? 悪い予言も信じたくなりましたか?」

アリス「……男が、その後、どうなったか、ですか?」

アリス「それはもちろん……死にましたよ。生き残ってすぐに」

アリス「なぜだかわかりませんか?」

アリス「あなたは、世界にたった一人となってしまった場合、その世界で孤独に生き続けようとしますか?」

アリス「もちろん、中にはそういう強い人もいるでしょう。ですが、その男は強くはなかったようです」

アリス「なので、1年も経たずに自ら命を絶ったようですね。……自らの予知夢を呪いながら」

アリス「どうせなら、何も知らず、みんなと共に運面を共にしたかったのだそうですよ」

アリス「いかがでしたか?」

アリス「たとえ、未来の予知が正しいものだったとしても、それに振り回されては意味がないという教訓でした」

アリス「あなたも是非、気を付けてください」アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」

終わり。

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