プロポーズの歌

プロポーズの歌

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■概要
人数:4人
時間:5分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ

■キャスト
涼駕(りょうが)
昌平(しょうへい)
三月(みつき)
女生徒

■台本

学校の屋上。

涼駕(りょうが)と女生徒が向かい合っている。

涼駕「うおおお! 好きだ―! 付き合ってくれー!」

女生徒「……え? あ、その……ごめんなさい」

涼駕「なんでだああああああ!」

涼駕の声が空に響いて消えていく。

場面転換。

学校のチャイム。

机に突っ伏す涼駕。

涼駕「……」

昌平「いや、涼駕。なんで、上手くいくと思ったのかが知りたい」

ガバっと起き上がる涼駕。

涼駕「何言ってるんだよ! 男の告白と言えば、真正面から全力でぶつかるのがいいんだろが!」

そこに美月が現れる。

美月「はあ……。なに? あんた、昭和の人間? 今どき、そんな告白でオッケーする女子がいるわけないじゃない」

涼駕「なに!? そうなのか?」

美月「勢いで押し切ろうっていうのがそもそもダメ。もっと相手のことを考えないさよ」

昌平「そうそう。いきなり迫られたら、誰だって引くって」

涼駕「そ、そうなのか……」

昌平「普通でいいんだよ。普通で」

涼駕「なるほど……。じゃあ、土下座して付き合ってくださいって言えばいいんだな」

三月「……あんたの普通って、土下座なの?」

涼駕「違うのか? じゃあ、どうすればいいんだ?」

三月「なんで強引に迫るか、土下座して頼むかの二択なのよ」

昌平「んー。確かに、普通に好きです、付き合ってくださいだとパンチ力に欠けるよな」

三月「そうねぇ。もう少し情緒が欲しいところかしら」

昌平「(笑って)例えば、歌を自作するとか?」

三月「(笑って)いいね、それ! 絶対ウケるー! あはははは!」

涼駕「なるほど! 歌か! よーし! やってやるぜー!」

涼駕が立ち上がり、走り出していく。

昌平「お、おい、涼駕……」

三月「行っちゃったわよ。どうすんの? あいつマジで歌とか作りそうだけど」

昌平「そんなことしたら、ストレートに言うより、引かれるよな……」

三月「ま、いっか。それはそれで面白そうだし」

昌平「おいおい……」

三月「あいつが誰かにまた告白するって時は呼んでね。見に行くから」

昌平「ホント、お前はいい性格してるよ……」

三月「あははは。ありがと!」

場面転換。

放課後の教室。

涼駕「うおおおお! できた! ついにできたぞ! 会心の歌が!」

昌平「あー、いや、涼駕。あのな……」

涼駕「じゃあ、行ってくる!」

走り出す涼駕。

昌平「……」

携帯を取り出し、電話を掛ける。

昌平「あ、もしもし?」

場面転換。

涼駕と女生徒が向かい合っている。

涼駕「……」

女生徒「……」

それを近くの物陰から見ている昌平と三月。

三月「うふふ。あいつ、どんな痛い歌を作ってきたんだろうね。楽しみだわ」

昌平「ホント、お前は悪魔のような女だな」

三月「そういうあんただって、一緒に覗いてるんでしょうが」

昌平「そ、それはそうだけど……」

涼駕が咳ばらいをする。

涼駕「き、聞いてくれ。君のために歌を作ってきたんだ」

女生徒「え?」

涼駕「星降りて、愛の誓い捧げ、手をとりて、共に歩む未来、幸せの花かな」

女生徒「……」

昌平「……」

三月「……」

ヒューと風が吹く音。

三月「……いやいやいや。短歌って」

昌平「斜め上だな、あいつは」

三月「今回もダメそうね」

昌平「そうだな」

女生徒「星降る夜、誓い受けるなり、手をとりて、未来へ歩みゆく、愛の扉かな」

三月「へ?」

昌平「え?」

涼駕「そ、それじゃ……」

女生徒「はい。よろしくお願いしますね」

涼駕「やったぁー!」

それを呆然と見ている三月と昌平。

三月「……今どきの女の子は、何がウケるのかわからないわね」

昌平「……だな」

終わり。