プロポーズの歌
- 2024.06.27
- ボイスドラマ(10分)
■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、ラブコメ
■キャスト
涼駕(りょうが)
昌平(しょうへい)
三月(みつき)
女生徒
■台本
学校の屋上。
涼駕(りょうが)と女生徒が向かい合っている。
涼駕「うおおお! 好きだ―! 付き合ってくれー!」
女生徒「……え? あ、その……ごめんなさい」
涼駕「なんでだああああああ!」
涼駕の声が空に響いて消えていく。
場面転換。
学校のチャイム。
机に突っ伏す涼駕。
涼駕「……」
昌平「いや、涼駕。なんで、上手くいくと思ったのかが知りたい」
ガバっと起き上がる涼駕。
涼駕「何言ってるんだよ! 男の告白と言えば、真正面から全力でぶつかるのがいいんだろが!」
そこに美月が現れる。
美月「はあ……。なに? あんた、昭和の人間? 今どき、そんな告白でオッケーする女子がいるわけないじゃない」
涼駕「なに!? そうなのか?」
美月「勢いで押し切ろうっていうのがそもそもダメ。もっと相手のことを考えないさよ」
昌平「そうそう。いきなり迫られたら、誰だって引くって」
涼駕「そ、そうなのか……」
昌平「普通でいいんだよ。普通で」
涼駕「なるほど……。じゃあ、土下座して付き合ってくださいって言えばいいんだな」
三月「……あんたの普通って、土下座なの?」
涼駕「違うのか? じゃあ、どうすればいいんだ?」
三月「なんで強引に迫るか、土下座して頼むかの二択なのよ」
昌平「んー。確かに、普通に好きです、付き合ってくださいだとパンチ力に欠けるよな」
三月「そうねぇ。もう少し情緒が欲しいところかしら」
昌平「(笑って)例えば、歌を自作するとか?」
三月「(笑って)いいね、それ! 絶対ウケるー! あはははは!」
涼駕「なるほど! 歌か! よーし! やってやるぜー!」
涼駕が立ち上がり、走り出していく。
昌平「お、おい、涼駕……」
三月「行っちゃったわよ。どうすんの? あいつマジで歌とか作りそうだけど」
昌平「そんなことしたら、ストレートに言うより、引かれるよな……」
三月「ま、いっか。それはそれで面白そうだし」
昌平「おいおい……」
三月「あいつが誰かにまた告白するって時は呼んでね。見に行くから」
昌平「ホント、お前はいい性格してるよ……」
三月「あははは。ありがと!」
場面転換。
放課後の教室。
涼駕「うおおおお! できた! ついにできたぞ! 会心の歌が!」
昌平「あー、いや、涼駕。あのな……」
涼駕「じゃあ、行ってくる!」
走り出す涼駕。
昌平「……」
携帯を取り出し、電話を掛ける。
昌平「あ、もしもし?」
場面転換。
涼駕と女生徒が向かい合っている。
涼駕「……」
女生徒「……」
それを近くの物陰から見ている昌平と三月。
三月「うふふ。あいつ、どんな痛い歌を作ってきたんだろうね。楽しみだわ」
昌平「ホント、お前は悪魔のような女だな」
三月「そういうあんただって、一緒に覗いてるんでしょうが」
昌平「そ、それはそうだけど……」
涼駕が咳ばらいをする。
涼駕「き、聞いてくれ。君のために歌を作ってきたんだ」
女生徒「え?」
涼駕「星降りて、愛の誓い捧げ、手をとりて、共に歩む未来、幸せの花かな」
女生徒「……」
昌平「……」
三月「……」
ヒューと風が吹く音。
三月「……いやいやいや。短歌って」
昌平「斜め上だな、あいつは」
三月「今回もダメそうね」
昌平「そうだな」
女生徒「星降る夜、誓い受けるなり、手をとりて、未来へ歩みゆく、愛の扉かな」
三月「へ?」
昌平「え?」
涼駕「そ、それじゃ……」
女生徒「はい。よろしくお願いしますね」
涼駕「やったぁー!」
それを呆然と見ている三月と昌平。
三月「……今どきの女の子は、何がウケるのかわからないわね」
昌平「……だな」
終わり。