■概要
主要人数:4人
時間:15分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、恋愛
■キャスト
ミア
トーマ
ミロ
セシル
沙耶 ※兼ね役可
亜美 ※兼ね役可
冬弥 ※兼ね役可
母 ※兼ね役可
祖母 ※兼ね役可
■台本
ミア(N)「恋。それは甘酸っぱくて、ドキドキで、とっても幸せになれる、素晴らしいもの。そんな恋のお手伝いをするのが、私たち、キューピットのお仕事。私はキューピットであることを誇りに思って仕事を頑張っている」
学校の懸想。
ミアがフワフワと飛んでいる。
ミア(N)「放課後の学校は恋がたくさん。こうして飛んでいれば……」
沙耶「ほら、亜美。今、先輩一人だよ。チャンスチャンス!」
亜美「で、でも沙耶ちゃん。私、お付き合いしたいとか、そんなんじゃ……」
ミア(N)「ほーら、さっそく恋をしている女の子発見!」
沙耶「何言ってんのよ。好きなんでしょ、先輩のこと」
亜美「う、うん……」
沙耶「だったら、思いを伝えなきゃ。そのためにわざわざラブレター書いたんだからさ」
亜美「でも……私、今の先輩との関係を壊したくない……」
沙耶「うっ……。確かに、振られたら、気まずくてあの部にはいられなくなるもんね」
亜美「うん……」
ミア(N)「あららら。どうやら、告白する勇気がでないようね。んーっと、あの子が見ている先に男の子はっと……。おおー、イケメンじゃない! 亜美ちゃんも可愛いし、これはもうくっ付けちゃうしかない!」
カチャカチャと弓を準備するミア。
ミア「よーし、まずは男の子を狙ってー。えい!」
ピューッと矢が飛び、冬弥に刺さる。
ミア「よし、当たった。次に亜美ちゃんに矢を……」
ピーッと矢が飛び、亜美に刺さる。
亜美「うっ!」
沙耶「どうしたの、亜美?」
亜美「沙耶ちゃん! 私、行ってくる!」
沙耶「え? 行ってくるって……」
亜美が冬弥のところへズンズンと進む。
亜美「冬弥先輩! 好きです! 付き合ってください!」
冬弥「……亜美ちゃん? 急にどうしたの? あ、わかった。罰ゲームかなにかでしょ? 悪いけど、こういう悪戯する子とは付き合えないよ」
亜美「え……?」
冬弥「それじゃね」
冬弥が行ってしまう。
亜美「そんな……」
ミア「あれれ……。また失敗かぁ」
そのとき、トーマが飛んでくる。
トーマ「よお、デスラバー。今日もさっそく一つの恋をぶっ壊したようだな」
ミア「あ、トーマくん……。ふん、放っておいてよ!」
トーマ「的中率0パーセント。逆にいうと恋を壊す率100パーセント。まさに恋を殺す、死神だな」
ミア「意地悪言う、トーマくんは嫌い。あっち行って」
トーマ「お前、この仕事向いてないって。諦めて辞めたらどうだ?」
ミア「余計なお世話だよ! べー!」
トーマ「あ、待て! 話は終わって……」
ミアが飛んでいく。
ドアを開けて、ミアが家の中に入ってくる。
ミア「ただいま」
母「あら、お帰りなさい。早かった……」
ズカズカと歩いて部屋の中に入るミア。
ドサッとベッドに倒れ込むミア。
ミア「うっ……うう……」
泣き始めるミア。
ミア「うわーん!」
泣き声が続いていく。
少し落ち着くミア。
ミア「ひっく……ひっく……」
そのとき、ドアをノックする音。
祖母「入るよ」
ミア「おばあちゃん……」
祖母「仕事で辛いことがあったのかい?」
ミア「私ね、またダメだったの……」
祖母「ふふ。誰にだって失敗あるものだよ」
ミア「ううん。私の場合、ぜーんぶ失敗。上手くいったことなんてないんだもん」
祖母「……」
ミア「ねえ、おばあちゃん。やっぱり、私、キューピット向いてないのかな?」
祖母「ミアにはきっと足りないものがあると思うよ。それがわかれば、きっと立派なキューピットになれるはずさ」
ミア「足りないもの……?」
ミア(N)「自分に足りないものがあるなんて、考えもしなかった……。だから、私は的中率95パーセントを誇る、スーパーキューピットのミロさんに相談することにした」
ミロ「なるほど。ミアちゃんは、矢はどういう風に撃ってるのかな?」
ミア「え? 普通にこうやって……」
ミロ「あー、そっか。えっとね、矢は当てればいいってものじゃないんだ。ちゃんと胸のハートの部分に当てれば成功率は上がるよ」
ミア「そうなんですか? 知らなかった」
ミロ「やってみようか。ほら、あそこに的があるだろう? 狙ってみて」
ミアが的に向かって矢を放つが外れる。
ミア「外れちゃった……」
ミロ「結構、難しいでしょ。ベテランでも上手く当てられる人は少ないよ」
ミア「私、頑張って当てられるようにします!」
ミロ「うん。僕も練習見てあげるから、一緒に頑張ろう」
ミア(N)「こうして、ミロさんの元で練習に励むことになった。ミロさんはとっても優しくて、ダメな私を励ましてくれる。だからとっても練習は楽しくて、私の毎日はとっても充実していた……」
トンっと的に矢が刺さる。
ミア「やった! 刺さった!」
ミロ「おめでとう、ミアちゃん!」
ミア「ありがとうございます、これもミロさんのおかげです!」
ミロ「そんなことないよ。全部、ミアちゃんが頑張ったからだ」
そのとき、セシルがやってくる。
セシル「ミロ。そろそろ時間よ。挨拶に行くんでしょ?」
ミロ「ああ、そうだった。ごめんごめん」
ミア「えっと……ミロさん、その人は?」
ミロ「この人は僕の婚約者のセシルだ」
セシル「セシルです。あなたがミアちゃんね。ミロから聞いてるわ」
ミア「……婚約者」
トボトボと歩くミア。
そこにトーマがやってくる。
トーマ「よお、久しぶりだな。最近、お前、仕事サボってなにして……」
ミア「トーマくん……。うわーん!」
トーマ「な、なっ、ななっ! どうしたんだよ!」
トーマの前で号泣するミア。
座っているミアに歩み寄るトーマ。
トーマ「少しは落ち着いたか? ほら、ミルクティーだ」
ミア「うん……ありがとう」
トーマ「ミアはさ、どうして自分が悲しいかわからないって言ってたけど、それって失恋したからだと思う」
ミア「……失恋?」
トーマ「ああ。きっと、ミアはミロさんに恋をしてたんだ」
ミア「恋……。あの気持ちが」
トーマ「恋なんて、そうそう上手くいかないもんだ。だから俺たちキューピットがいるんだからな」
ミア「……」
トーマ「ま、元気出せって。気晴らしにはいつでも付き合うからさ」
ミア「トーマくん……ありがとう」
トーマ「お、おう……」
ミア(N)「私は初めて恋をして、初めて失恋した。私は何も知らないのに、こんなに辛い思いをたくさんの人にさせていたんだ。恋って幸せだけど、逆に失恋するとその分、辛いことだってわかった……」
トーマ「よお、ミア、聞いたぜ! 初めて成功したんだってな! おめでとう」
ミア「うん。ありがとう。ちゃんと応援する気持ちを込めて打つようにしたんだ。まだまだ失敗が多いけどね」
トーマ「な、なあ、ミア。俺……さ、的中率100パーセントのナンバーワンのキューピットになる」
ミア「……」
トーマ「もしさ、なれたら……その……俺と付き合ってくれねーか?」
ミア「え? ……うふふ。それは無理かな」
トーマ「ええ!?」
ミア「だって、ナンバーワンのキューピットは私がなるんだもん」
トーマ「言ったな! じゃあ、どっちが先になれるか勝負だ」
ミア「うん!」
ミア(N)「恋。それは甘酸っぱくて、ドキドキで、とっても幸せになれる、素晴らしいもの。そんな恋のお手伝いをするのが、私たち、キューピットのお仕事。私はキューピットであることを誇りに思って、今もこの仕事を頑張っている」
終わり