■ジャンル
アニメ用シナリオ、ファンタジー、
〇 雪の平原
しんしんと降る雪。
アンナ(10)が雪をかき分けながら泣いている。
アンナ「うう……どうしよう」
そこに雪の精霊が現れる。
雪の精「どうしたの?」
アンナ「……」
美しい雪の精に見惚れるアンナ。
雪の精「ふふ。泣き止んでよかった」
アンナ「……お姉さん、だれ?」
雪の精「私? 私は雪の精霊よ」
アンナ「雪の精霊……」
雪の精「どうして、さっきは泣いていたの?」
アンナ「えっとね、お母さんの大事なブローチ、無くしちゃったの」
雪の精「あら……。それは大変。でも、寒い中、探してたら風邪ひいちゃうわよ」
アンナ「別に風邪くらいいいの」
雪の精「ダメよ。お母さん、悲しんじゃうわよ」
アンナ「大丈夫。……お母さん、もう死んじゃったから」
雪の精「……」
アンナ「お母さんが大事にしてたブローチ。ちょっと借りただけなのに……」
雪の精「そっか。でも、こんな雪の中じゃ見つかりっこないわ」
アンナ「それでも、探すの!」
雪の精「あのね、アンナ。そんなことしてもお母さんは喜ばないわ。何かあったら大変だもの」
アンナ「……でも」
雪の精「今日はもう帰りなさい。明日、また探すのを手伝ってあげるから」
アンナ「本当?」
雪の精「ええ」
アンナ「じゃあ、また明日来るね」
アンナが駆け出していく。
〇 同
晴れて、晴天。
アンナが走ってくる。
きょろきょろと周りを見渡すアンナ。
アンナ「雪の精霊さん、来たよ」
雪の精霊が現れる。
雪の精「ふふ。来たのね。じゃあ、探そうか」
アンナ「うん」
アンナが雪を掘り返している。
雪の精「ねえ、アンナ。雪だるま、作らない?」
アンナ「え? でも……」
雪の精「ふふ。少しくらい遊んでもいいんじゃないの?」
アンナ「うーん。じゃあ、ちょっとだけ」
暗転。
大きな雪だるま。
アンナ「えへへ。できた」
雪の精「あらあら、アンナは相変わらず雪だるま作るのがうまいわね」
アンナ「うん。だって、たくさん作ってたから」
雪の精「そう」
アンナ「私ね、冬が大好き」
雪の精「あら、どうして? 冬は寒くて嫌いって人が多いのよ」
アンナ「私は好き! だって、雪が降るから」
雪の精「……」
アンナ「雪はね。きらきら光るの。ほら、あそこ、きらきらってね」
雪の精「ああ、あれは太陽の光が反射してるのよ」
アンナ「あとね、雪だるま作るのも好きなの」
雪の精「たくさん、作ってるものね」
アンナ「うん! 冬は雪だるまの友達がいっぱい作れるからうれしいんだ。ひとりぼっちじゃないの」
雪の精「……ねえ、アンナ。人間のお友達は?」
アンナ「いないよ」
雪の精「あら、どうして?」
アンナ「だって、一人で遊んだほうが楽しいから」
雪の精「そんなことないわ。お友達と一緒に遊ぶの、きっと楽しいわよ」
アンナ「でも……」
雪の精「何か、心配なことがあるの?」
アンナ「あのね、アンナね、引っ越してきたの」
雪の精「……」
アンナ「だからね、お友達が一人もいなくて」
雪の精「あら、なら作ればいいんじゃないの?」
アンナ「ううん。怖いの」
雪の精「怖い?」
アンナ「なにをお話ししたらいいかわからないし」
雪の精「そんなのなんでもいいんじゃない?」
アンナ「それに、意地悪されても嫌だから」
雪の精「大丈夫。そんなことする子はいないわ」
アンナ「嫌なの! アンナは一人がいいの」
雪の精「なら、私といるのも嫌?」
アンナ「ううん。雪の精霊さんは好き」
雪の精「ねえ、アンナ。滑り台作ろうか。雪の滑り台」
アンナ「なにそれ! 面白そう!」
雪の精「ふふ。それじゃ、一緒に作りましょう」
暗転。
雪を積み重ねていくアンナ。
アンナ「えへへ。なんかね、お母さんと一緒にいるみたい」
雪の精「そう。それは嬉しいわ。でも、お母さんはこんな風に遊んでくれなかったでしょ?」
アンナ「うん。お母さんは病気だったから……。でも本はたくさん読んでくれたよ?」
雪の精「お母さんはアンナが友達いないって知ってたの?」
アンナ「ううん。お友達、いっぱいいるって嘘ついてたから」
雪の精「……どうして、嘘ついたの?」
アンナ「だって、お母さん、心配するから」
雪の精「でも、嘘ついたほうが、お母さん、悲しむと思うわ」
アンナ「……」
雪の精「ごめんなさい。攻めるつもりはないの。でもね、やっぱり、お友達作ったほうがいいと思うな」
アンナ「……」
雪の精「あら、今日はもう遅いわ。帰ったほうがいいわね」
アンナ「ねえ、明日も一緒に遊んでくれる?」
雪の精「ええ。もちろん!」
〇 同
曇り。
アンナが雪を積み重ねて滑り台を作っている。
雪の精「アンナは頑張り屋さんね」
アンナ「えへへ」
雪の精「こんなに頑張り屋さんなアンナなら、きっと素敵なお友達ができるわ」
アンナ「……」
雪の精「そういえば、アンナはどうしてブローチを借りたの?」
アンナ「実はね、クラスの子の誕生日会の呼ばれてたの。それで……」
雪の精「あらあら、そうなの。そこでお友達できなかったの?」
アンナ「……誰とも話せなかったの」
雪の精「そう……」
アンナ「きっと、みんな、アンナのこと嫌いなんだよ」
雪の精「そんなことないわ」
アンナ「……」
〇 同
少し雪が降っている。
そんな中、アンナが雪の滑り台を作る。
アンナ「できた!」
雪の精「すごいわ!」
アンナ「滑ってみる」
アンナが雪の滑り台を滑る。
それを微笑んで見ている雪の精。
〇 同
晴天。
アンナが走ってくる。
アンナ「!」
立ち止まるアンナ。
目線の先には、数人の子供が雪の滑り台で遊んでいる。
背を向けて帰ろうとするアンナ。
雪の精「一緒に遊ばないの?」
アンナ「……でも、断られたら」
雪の精「大丈夫。一緒に遊ぼうって言ってみて」
アンナ「……」
雪の精「頑張って」
アンナ「うん」
アンナが子供たちのところへ行く。
アンナ「一緒に遊ぼう」
子供「うん、いいよ!」
アンナと子供たちが遊んでいる姿を微笑んで見ている雪の精。
カットバック
アンナと子供たちが遊んでいる。
× × ×
アンナと遊んでいる子供たちがどんどんと増えていく。
そして、雪も解けていく。
× × ×
雪だるまが解けて、代わりにその場所には子供が立って笑っている。
それを愛おしそうに見ている雪の精。
〇 同
春。蝶々が飛んでいる。
アンナが大勢の子供たちと遊んでいる。
草の上にキラリと光るもの。
それはブローチ。
雪の精がブローチを拾い上げ、身に着ける。
すると人間の姿になる。
雪の精「よかったわね、アンナ。これで、お母さんがいなくても、大丈夫ね。……最後に一緒に遊べて、楽しかったわ」
雪の精が淡く光り、そして消える。
アンナ「……」
雪の精がいたところを振り返るアンナ。
子供「アンナちゃん、どうしたの?」
アンナ「ううん、なんでもない!」
再び、友達と遊び始めるアンナ。
アンナと友達が光を浴びて、光り輝いている。
終わり