【声劇台本】サルとカニの喧嘩

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■概要
人数:2人~4人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、童話、シリアス

■キャスト
はっちゃん カニ
モンタ   サル
ナレーション
長老

その他

■台本

ナレーション「昔々、あるところに仲良しのサルとカニがおりましたとさ。それはそれはとても仲良しで、いつも何をするにも一緒にやっていたそうな……」

  ジョキン、ジョキンとハサミで毛を切る音。

はっちゃん「モンタくん、終わったよ」

モンタ「サンキュー、はっちゃん。いやー、すっきりしたぁ」

はっちゃん「ふふふっ! でも、モンタくんくらいだよ。頭の毛を切って、なんていうお猿さんは」

モンタ「最近のサルは身だしなみもちゃんとしなくっちゃな。それに、そうは言うけどさ、こうしてちゃんと切ってくれるのは、カニの中でもはっちゃんくらいだし」

はっちゃん「お互い、変わってるのかもね」

モンタ「かもな。だから、こうして一緒にいられんのかも。俺、はっちゃん以外のカニなんかはつまんなくてさー」

はっちゃん「はははは。僕も、モンタくん、見てて飽きないよ」

モンタ「さてと、そろそろ、森にでも行って、食いもん、探してこねえとな」

はっちゃん「最近、森で食べるものが少なくなってるって聞いてるけど、大丈夫なの?」

モンタ「今年は雨が少なくって、全然、果物がとれねぇんだ。その日の日の食べるもんも、ままならねえ」

はっちゃん「食べ物探すの手伝おうか?」

モンタ「いや、悪いって。今も、毛を切ってもらったばっかりだしさ」

はっちゃん「僕だって、モンタくんの毛を切るの楽しんでやってるし。それに約束でしょ? 辛いことも楽しいことも半分こっこだって」

モンタ「そうだな。じゃあ、手伝ってもらおうかな」

はっちゃん「うん! 行こう行こう!」

  場面転換。

  森の中を歩く、モンタとはっちゃん。

はっちゃん「うーん。噂に聞いてたけど、酷いね。上が見れなくても、わかるよ。落ちてる葉っぱは枯れてるのばっかりだし、虫もほとんどいない」

モンタ「ほとんど実が成らないから、みんなで取り合いさ。ま、こればっかりは見つけたもん勝ちだからな」

はっちゃん「ごめんね。手伝うって言っておきながら、全然役に立ってないね」

モンタ「んなことねえよ。こうして、話し相手になってくれるだけで、随分と気が紛れるってもんだ。これ、一人だと、絶望的な気分になるぞ」

はっちゃん「あーあ。毎年、たくさん実がなる木でも、近くにあればいいのにね」

モンタ「ははっ! そんな木があれば、サイコーだな」

  そのとき、ギュルルルとモンタの腹が鳴る。

モンタ「あー、腹減った。これ以上、動いたら余計腹減るから、今日は帰ろうぜ」

はっちゃん「うん……」

モンタ「じゃあ、な」

  モンタが行っています。

はっちゃん「……」

  場面転換。

  砂浜を歩く、はっちゃん。

はっちゃん「今日こそは、何かモンタくんが食べられそうなもの、見つけないとなぁ」

男の子「うーん。まいったなぁ」

はっちゃん「どうかしたんですか?」

男の子「えっとね、釣り糸が絡まっちゃって」

はっちゃん「僕が切ってあげましょうか?」

男の子「え? ホント? ありがとう!」

  場面転換。

  走るはっちゃん。

はっちゃん「おーい、モンタくーん」

モンタ「ん? 遅かったな、はっちゃん」

はっちゃん「見て見て! 大きなおにぎりもらっちゃった」

モンタ「おおっ! すげーな。どうしたんだ?」

はっちゃん「人間の男の子のお手伝いしたら、もらったんだ。だから、はい。モンタくんにあげる」

モンタ「は? 何言ってんだよ。はっちゃんがもらったもんだろ? はっちゃんが食べれよ」

はっちゃん「いいんだよ。えっと……僕はもう食べたから」

モンタ「いやいや。2つともはっちゃんが食べろって。はっちゃんだって、このところ、ほとんど食べてないんだろ?」

はっちゃん「いつも言ってるでしょ。辛いことも楽しいことも半分こっこだって」

モンタ「……サンキュー。じゃあ、もらうよ。さっそくいただきまーす」

  モンタががつがつとおにぎりを食べる。

モンタ「ふー。美味しかった。じゃあ、俺からははっちゃんに柿のプレゼントだ」

はっちゃん「ええ! 柿、見つけたの?」

モンタ「昨日、帰るときに偶然な。はっちゃん、柿、好きだったろ?」

はっちゃん「いいよいいよ。せっかくの果物なんだから、モンタくんが食べなよ」

モンタ「おいおい。辛いことも楽しいことも半分こっこじゃねーのかよ?」

はっちゃん「……ありがとう。じゃあ、もらうね」

モンタ「あれ? 今、食わないのか?」

はっちゃん「家で少しずつ、味わって食べたいんだ」

モンタ「そっか。はっちゃんらしいな」

  場面転換。

  フクロウの鳴き声。

  ざくざくと土を掘る音。

はっちゃん「よし! この穴に柿を入れて、埋めるっと。ふふふっ。立派に育ってね」

  場面転換。

  水を流すはっちゃん。

はっちゃん「早く芽を出せ、柿の種。早く出さないと、ハサミでちょん切るぞ!」

  場面転換。

  水を流すはっちゃん。

はっちゃん「ふふふ。早く木になれ、柿の種。早くならないと、ハサミで切っちゃうぞ!」

  場面転換。

はっちゃん「はあ……」

モンタ「最近、疲れてるみたいだけど、どうかしたのか?」

はっちゃん「う、ううん! 何でもない」

  場面転換。

  風がビュービュー吹いている。

はっちゃん「僕が一晩中、君を守ってあげるからね。だから、台風に負けちゃダメだよ、柿の苗」

  場面転換。

  盛大なくしゃみをするはっちゃん。

モンタ「大丈夫か、はっちゃん」

はっちゃん「風邪ひいたみたい。今日は帰ってねるね」

モンタ「……わかった。無理するなよ」

  場面転換。

  ごほごほと咳をするはっちゃん。

はっちゃん「ふふふ。もうすぐだ。もうすぐ、実が成るはずなんだ……」

  バタンと倒れるはっちゃん。

  バンと扉を開くモンタ。

モンタ「はっちゃん! 大丈夫か!」

はっちゃん「ああ、モンタくん。大丈夫だよ。ただの風邪だってさ」

モンタ「ビックリさせるなよ。急に倒れたって聞いたからさー」

はっちゃん「ごめんごめん。でもね、驚くのはこれからだよ」

モンタ「ん? どういうことだ?」

はっちゃん「ちょっとついてきて」

  場面転換。

モンタ「うわー! すげー!」

はっちゃん「ふふふ。驚いた? 柿の木だよ」

モンタ「もしかして、最近、疲れてたのは、これを育ててたからか?」

はっちゃん「えへへへ。そう。でね、そろそろ実がなる頃だと思うんだ。僕、木に登れないからさ、モンタくんに取ってきてもらおうと思って」

モンタ「お安い御用だ。一個でいいか?」

はっちゃん「ううん。二個取ってきて。僕とモンタくんの分」

モンタ「何言ってんだよ、これ、はっちゃんが育てた柿の木だろ?」

はっちゃん「辛いことも楽しいことも、半分こっこだよ」

モンタ「……はっちゃん。わかった、じゃあ、行ってくるぜ」

  モンタが木に登る。

はっちゃん「どう? 柿、成ってる?」

モンタ「おう、たくさん成ってる……」

はっちゃん「どうしたの?」

モンタ「うめえ! この柿最高!」

はっちゃん「ええ! 食べちゃったの!」

モンタ「うめえ! うめえ! こりゃ最高!」

はっちゃん「モンタくん! 一緒に食べようって約束じゃないか!」

モンタ「うっせえ! こんなに美味いんだ! 全部俺が食う!」

はっちゃん「ひどいよ! そんなの、酷いよ!」

モンタ「うっせえ! お前はこの渋柿でも食ってろ!」

  モンタがはっちゃんに柿を投げる。

  その柿がはっちゃんに当たる。

はっちゃん「ああっ! うーん……」

  はっちゃんが倒れる。

  場面転換。

臼「はっちゃん。話は全部聞いたよ。俺たちが、モンタを懲らしめてやる」

はっちゃん「う、うう……。僕、せっかくモンタくんの為に、頑張ったのに……」

栗「大丈夫。はっちゃんの仇はちゃーんと取ってやるからさ」

はっちゃん「ありがとう……」

  場面転換。

  フクロウが鳴いている。

はっちゃん「……」

  そこに長老がやってくる。

長老「八よ。モンタのやつは、臼たちが懲らしめてくれたみたいだぞ。しばらくは、怪我で動けないだろう」

はっちゃん「……そうですか」

長老「嬉しくないのか?」

はっちゃん「長老様、不思議なんです。モンタくんが、どうしてあんなことしたのか」

長老「……」

はっちゃん「モンタくんが僕を裏切るなんて……。うう……僕はただ、モンタくんと一緒に柿が食べたかっただけなのに……」

長老「柿? 八よ、柿はな……」

  場面転換。

  必死に走るはっちゃん。

  ガラッと扉を開けるはっちゃん。

はっちゃん「モンタくん!」

モンタ「はっちゃんか。なんだ? 怪我した俺を笑いに来たのか?」

はっちゃん「ごめん!」

モンタ「ああん? なんだ、急に?」

はっちゃん「僕、知らなかったんだ! モンタくんが僕の為に、あんなことしてくれたって。なのに、僕は……」

モンタ「な、なんのことだよ……」

はっちゃん「あの柿、全部、渋柿だったんでしょ?」

モンタ「……」

はっちゃん「長老様に聞いたんだ。柿の実がちゃんと成るには、時間がかかるって」

モンタ「違う。全部、美味しい柿だった」

はっちゃん「モンタくん……。ごめん。辛いことも半分こっこって言ったのに……。モンタくんに全部、背負わせちゃった」

モンタ「……はっちゃん」

はっちゃん「ごめんね、モンタくん。君を信じれなくて……。友達失格だよね」

モンタ「そうだな」

はっちゃん「……」

モンタ「だから、柿で手を打ってやる」

はっちゃん「え?」

モンタ「来年、ちゃんと柿を分けてくれたら許す。もちろん、食べるのは、二人で、だ」

はっちゃん「モンタくん……」

モンタ「あともう一つ! 今度は俺にも柿の世話を手伝わせろ!」

はっちゃん「で、でも……」

モンタ「いつもお前が言ってるだろ。嬉しいことも辛いことも半分こっこだって」

はっちゃん「う、うん!」

ナレーション「こうして、サルとカニの喧嘩は終わり、その後は仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし」

終わり

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